「最期が近い老犬には、どのような症状が出るのだろう」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。愛犬に最期まで寄り添うためにも、お別れの兆候になる症状は把握しておきたいものです。
本記事では、犬の老化のサインや、最期が近い老犬に見られる症状について徹底解説します。いざという時に後悔なく見送れるよう、寿命の近い老犬がどのようなサインを見せるのか予め知っておきましょう。
目次
犬の寿命の目安
はじめに犬の平均寿命についてお伝えします。2022年度の「一般社団法人ペットフード協会」による「全国犬猫飼育実態調査」の結果では、犬の平均寿命は14.76歳でした。(https://petfood.or.jp/data/chart2022/6.pdf)おおよそ14歳~15歳が現代の犬の平均寿命だと言えるでしょう。
平均寿命は犬の体格によっても異なり、一般的には小型犬より大型犬の方がやや寿命が短い傾向になります。
前述の「全国犬猫飼育実態調査」の結果では、超小型犬の平均寿命は15.31歳、小型犬の平均寿命は14.28歳、中・大型犬は13.81歳という結果でした。
人間も健康的な生活を送ると長生きできますね。犬も人間と同様に、日々の健康管理によって寿命が変わります。1日でも長生きできるように、適度な運動やバランスの良い食事に気をつけると良いでしょう。
犬に見られる老化の6つのサイン
犬が老化すると、体の変化に伴い行動にも変化が出てきます。ここでは犬の老化のサインを6つご紹介します。
足腰が衰えてくる
犬が老化すると、足腰の筋肉や関節が衰え、老犬特有の病気になることもあります。例えば、老犬に多い「骨関節炎」は、慢性的な痛みがあり年齢と共に進行する病気です。
筋力不足や病気などで運動不足になることで、より筋力が衰える悪循環に陥ることもあります。老犬では、筋肉の衰えや関節の痛みから段差のある移動が苦手になることも多いです。
食欲の低下・変化
犬が老化すると、消化機能の低下や代謝も衰えます。その結果、食欲の低下が起こることも多いです。
味覚や嗅覚が変化して食の好みが変わったり、老犬に多い内分泌系の病気などによって食欲不振になったりすることもあります。
運動量の減少もあいまってさらに食欲がわかず、健康体重が維持できないこともあります。急激な体重の減少は、体調不調につながるため注意が必要です。
感覚の鈍化が起こりやすくなる
老化により、視覚や聴覚、嗅覚などの感覚器の能力が低下します。そのため、室内でもものにぶつかりやすくなったり、飼い主様の呼ぶ声や物音などに反応しなくなったりすることもあります。
暑さ寒さや喉の渇きなど、環境や自分の感覚に鈍感になることも多いです。
老化に関連した疾患にかかりやすくなる
年齢を重ねると、老犬がかかりやすい病気にかかりやすくなります。例えば犬が長寿になるにつれ増加傾向のある認知症は、性格の変化や夜間の徘徊、夜鳴きなどが起こることがあります。
また、老化により免疫力が低下することによって、健康な犬には病気を引き起こすことのない、周囲の病原体に日和見感染することもあります。
糖尿病などの内分泌系の疾患や、心臓や腎臓などの慢性的な病気になることも多く、症状の悪化や病気のコントロールが難しくなることもあります。
粗相する頻度が増える
老犬は、トイレを失敗し、粗相をする頻度が増えるのも特徴です。理由としては、老化によって膀胱に溜められる尿の量が減少することや、足腰の衰えによる歩行困難が原因してトイレまで行くのが間に合わないことが挙げられます。
粗相の頻度が増え始めたら、飼い主様がトイレに連れて行ってあげる、オムツを履かせるなどの対策をしてください。また、腎臓の異常により尿量が増えている可能性もあるため、不安な場合は動物病院を受診しましょう。
徘徊や夜泣きをする
犬も人間と同様に、老化によって認知障害、いわゆる「認知症」を起こします。認知症の主な症状として現れるのが、徘徊や夜泣きです。
また、認知症以外に、病気の痛みや不安な気持ちを訴えるために夜泣きする老犬もいます。どちらにせよ老化による病気が関わる症状のため、夜泣きや徘徊が見られるようになった場合、早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。
最期が近い老犬に見られる5つの症状
犬に最期が近づくとどのような症状がみられるのでしょうか。ここでは犬の最期が近い時にみられる症状や、最期の瞬間にみられる様子などを解説します。
食事をしなくなる
上でもお伝えした通り、老犬は徐々に食欲が落ちます。特に最期が近づくと、飲み込む力なども衰え、固形物を全く食べられなくなることもあります。食欲があるときは、流動食など犬が食べられるものを与えましょう。
固形物を無理に食べさせると誤嚥につながり危険です。最期が近づくと、流動食も食べなくなることが多いです。老犬が全くなにも食べなくなったら、最期の日が近いというサインだと受け止めましょう。
寝ている時間が長くなる
老犬は徐々に睡眠時間が長くなる傾向になります。日頃から寝てばかりのイメージかもしれませんが、特に最期が近づくと、声をかけても起きずに寝続けることも多いでしょう。犬の中には、眠ったまま静かに最期を迎える子もいます。
嘔吐や下痢が起こる
老化により、消化能力が低下するため、いつもと同じ食事内容でも嘔吐や下痢をおこしやすくなります。繰り返しの嘔吐や下痢は体力を奪うため、食欲がある老犬にはできるだけ消化に良い食事を与えると良いでしょう。
激しい嘔吐や下痢のときは、点滴などが必要な場合も多いです。老化現象だといって諦めず、動物病院を受診することをおすすめします。
呼吸が不規則になる
犬が口を開けて浅い呼吸をしていたり、座った状態で少し上を向いて胸で大きく呼吸をしていたりする時は、呼吸が苦しい状態です。このような呼吸を「努力性呼吸」と呼びます。なんらかの疾患で犬が努力性呼吸をしている時は、動物病院を受診すると、酸素室などに入れてくれるため呼吸が楽になるかもしれません。
犬が最期を迎える直前は、「チェーンストークス呼吸」と呼ばれる無呼吸と呼吸の繰り返しが見られます。チェーンストークス呼吸がみられた場合は、いよいよ最期の瞬間が近いでしょう。犬から片時も離れないことをおすすめします。
痙攣が起こる
脳腫瘍や肝臓、腎臓の疾患や、食事を摂れないことによる低血糖の症状として、痙攣がみられることがあります。このような状況での痙攣は、体全体が小刻みに震えることが多いです。動物病院を受診すると、痙攣を止める薬を処方してもらえることがあります。繰り返しの痙攣は、犬の体力を奪うため、動物病院を受診することをおすすめします。
一方、最期の瞬間にも犬は痙攣することが多いです。この時は手足をばたつかせたり、手足をつっぱらせたりするようにみえることが多いでしょう。
最期を迎えつつある愛犬に飼い主ができること
上で解説したように、最期の日が近い老犬には色々なサインがみられます。飼い主様としては最期まで犬にできることをしてあげたいですね。ここでは、犬の最期に飼い主様ができることについてご紹介します。
介護・看護など体のケアをする
老犬のQOLの維持につながる介護や看護を行いましょう。例えば、上でもお伝えした通り、固形食を食べられない場合には、流動食をスプーンや注射器などで与えると食べやすくなります。流動食はドッグフードに水分を加えてすりつぶしても良いですし、市販の流動食も利用できます。
寝たきりの犬には、床ずれ防止用のクッションを使用したり、定期的に体位変換を行ったりして床ずれを防止しましょう。皮膚病の防止のために、あたためた濡れタオルなどで体を拭くと清潔が保たれます。特に肛門周囲は汚れがつきやすいのでこまめに行うと良いでしょう。
スキンシップや一緒に過ごす時間を十分に取る
犬にとって、飼い主様とのスキンシップは大切です。老犬は視力などが鈍って不安や心細さを感じることがあります。少しでも安心できるように、時間が許す限りそばに寄り添いましょう。優しい言葉をかけ、笑顔で接し、一緒に過ごす最期の貴重な時間を充実させましょう。
老犬の最期の前に決めておくべきこと
老犬とのお別れは、必ず訪れるものです。大切な愛犬だからこそ、いざという時に悔いなく見送れるよう、看取りや葬儀については最期が訪れる前に決めておきましょう。
看取る場を決める
最期が近づいたら、家で看取るか病院で処置を受けながら看取るかを決めておきましょう。家で看取る場合は、愛犬が最期のときを快適に過ごせるよう環境を整えます。愛犬を安置するための棺や保冷剤、ドライアイスなどもあらかじめ用意しておくと良いでしょう。
病院で看取る場合は、犬の状態に応じた適切な対応を受けることができるため、犬が楽に最期を迎えられる可能性があります。ただし、必ずしも飼い主様が最期を看取れない可能性もあるため、最期を看取りたい場合は獣医師と充分に相談することが大切です。
弔う方法
また、看取った後、どのように弔うかどうかも決めておく必要があります。具体的には、葬儀や供養についてです。
ペットを弔う際、火葬をするのか土葬を行うのか、どこにペットの葬儀を依頼するのか、火葬した場合はご遺骨をどのように供養するのかなど、決めなければならないことが多くあります。
いざという時にスムーズに葬儀や供養の手配ができるよう、予めある程度の予算や希望を決めておきましょう。
葬儀や火葬のプラン
ペットの葬儀や火葬は、形式や費用によって種類分けされています。火葬プランの主な種類は、以下の通りです。
- 合同火葬
- 一任個別火葬
- 立会い個別火葬
火葬プランごとに、火葬の方法や飼い主様による立会いの有無、費用が異なります。また、火葬業者によっては、花飾りなどのオプション付きプランが用意されていることもあります。
ペット葬儀にかける予算や希望に応じて、適切なプランを選びましょう。
供養の方法
葬儀や火葬だけでなく、火葬後のペットのご遺骨をどのように供養するかも決めなければなりません。ペット供養の主な方法を以下にご紹介します。
- 自宅での手元供養(仏壇、遺骨アクセサリーなど)
- 庭など敷地内での埋葬
- お墓への埋葬
- 納骨堂への納骨
- 海洋散骨
- 樹木葬
ペットと飼い主様にとって最適な、納得できる供養の方法を、予め検討しておきましょう。
ペットロスを乗り越えるためには
どんなに覚悟をしていても、大切なペットの犬が亡くなった後は、家族を失った喪失感や悲しみから、ペットロスに陥りがちです。気持ちを整理し、ペットロスを乗り越えるためには、どのようなことをすれば良いのでしょうか。
悔いのないよう丁寧に弔う
亡くなったペットの葬儀や供養を丁寧に行うことは、ペットロスの軽減につながります。
大好きなペットが亡くなった直後は、混乱や悲しみから、ペットの死を受け入れにくい状態に陥ります。葬儀や供養は、混乱を落ち着かせ、思い出を振り返りながらペットの死と向き合う、飼い主様の気持ちを整理する場にもなるのです。
後悔の残らない、丁寧な葬儀や供養を行うことで、ペットの死を冷静に受け入れ、気持ちに区切りをつけられます。
家族や友人と悲しみを分かち合う
家族や友人など、気の知れた周りの人と悲しみを分かち合うのも、ペットロスを乗り越える1つの方法です。ペットロスを1人で抱え込んでしまうと、かえって悲しみから抜け出せなくなり、心の病気に発展することもあります。
ペットが亡くなった悲しみや喪失感を、理解のある人と共有することで、ペットがいなくなったことによる孤独感や不安が和らぎ、心が軽くなります。自分の心のためにも、遠慮せず頼れる周りの人に悲しみを打ち明けましょう。
ペットとの思い出を振り返る
ペットとの思い出をゆっくりと振り返る時間を設け、悲しみと向き合うことも、結果的にはペットロスを早く乗り越えることにつながります。
ペットが亡くなった後も、ペットが使っていた首輪やおもちゃ、食器などは家に残っていますが、これらを急いで処分する必要はありません。気持ちの整理がつくまで、思い出の品はそのまま残し、家に飾るなどしてペットとの思い出を振り返りましょう。
ペットとの思い出を大事にすることで、徐々に前を向くことができます。
いざという時に慌てないよう心の準備を
犬との生活の中では、お別れの日が必ずやってきます。悔いのない最期を迎えるためには、飼い主様の心の準備が必要です。
いざという時に慌てないよう、しっかりと計画を立てると良いでしょう。今回ご紹介したように、老犬は最期が近づくと色々なサインを出します。
これらを見落とさず、犬が最期まで快適に過ごせるような介護・看護をすることで、飼い主様自身のペットロスの予防にもなるでしょう。