愛猫が歳を重ね、介護が視野に入ると、一人暮らしの飼い主様のなかには介護生活について心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
一人暮らしの場合、猫の介護を一人で行うのは難しいことも多いでしょう。家族・友人のサポートやペットシッター、老猫ホームなどの利用も検討が必要です。
今回は、一人暮らしで老猫を介護するときのポイントを解説します。猫の寿命や老猫の定義、老化症状などについてもお伝えします。
目次
猫の介護はいつから必要?
猫が介護を必要とするのはいつ頃か、お悩みの方もいらっしゃるでしょう。猫の介護が必要な時期を理解しておくと、心の準備ができ、介護に関する知識も事前に身につけられます。
万が一の場合に備えて、以下では猫の介護が始まる目安について解説します。
猫の介護は13〜14歳頃から必要になる
猫の介護が必要になる年齢は、通常13〜14歳頃です。
猫は11歳あたりでシニア期に入り、老化が始まる兆候が見られるでしょう。衰えが進行し、13〜14歳頃になると、一人で動くことが難しくなる可能性があります。
しかし、猫により介護が必要な年齢は異なり、10歳を超えてもずっと元気な猫がいれば、自分で動くのが難しくなる猫もいます。そのため、13〜14歳頃に介護が必要になるのは目安として考えておきましょう。
老化が進んでいなくても介護が必要な猫もいる
猫に介護が必要なのは老化した猫だけだとお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし、介護が必要な猫は、年齢や老化に関係ありません。
老化が進んでいなくても介護が必要になる猫は以下のとおりです。
- 重大な病気を患っている
- 腎臓に障害を持っている
- 怪我や後遺症がある
上記の症状がある場合は、老衰が始まっていなくても早い段階から介護が必要です。猫の様子や年齢からみて介護が必要かどうかをよく確認しましょう。
老猫の基本的な介護方法
老猫の介護は計画的に行う必要があります。老猫を介護するためには、まずは基本的な方法を理解することが重要です。
以下では、老猫の基本的な介護方法について解説します。
食事
キャットフードを与える際は、老猫でも食べやすいようにシニア用に変更しましょう。また、寝たきりの猫は、体力が落ちて食欲が低下します。
衰弱していて餌をあまり摂取しない猫の場合は、エネルギー重視の高タンパク・高カロリーで栄養価が高いフードを選びましょう。
猫がまったく食べないからといって、介護食や流動食を利用するのではなく、猫の症状を理解し、様子を見ながら食事を与えてください。食欲がある猫であれば、体を起こしてあげて、伏せのような状態にして与えると良いでしょう。
猫が横になったまま首から頭の部分を持ち上げて食事すると、気管に食事が流れて「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を引き起こす可能性があります。
寝たきりでない猫でも、頭を下げた状態で食事するのは負担がかかります。そのため、食器は台に置いて、高さを出してあげると食べやすくなるでしょう。
爪切り
老猫は、爪とぎをしなくなり、動き回ることも少なくなるため、爪が伸びっぱなしになります。
爪は丸まって伸びていくため、放置すると肉球に爪が刺さって傷ついてしまう可能性があります。また、爪が伸びると爪が思うように収納できなくなり、猫自身だけでなく飼い主様も怪我をしてしまうでしょう。
そのため、猫の爪の状態はこまめに確認し、爪切りしてあげてください。
ブラッシング
老猫になると、関節炎や体の痛みにより毛づくろいが思うようにできなくなる可能性があります。毛づくろいができなくなると、毛がボサボサになるだけでなく、皮膚炎を引き起こすことがあります。
そのため、定期的にブラッシングして皮膚に異常がないか確認してあげましょう。
他にも、ウェットタオルや濡らしたガーゼを利用して、口や目の周り、被毛、おしりなどをこまめに拭いてあげると、身体を清潔に保つことができます。
ベッド
寝るときに体にかかる負担を軽減するためには、クッション性があるベッドを用意してあげましょう。
ベッドの上にペットシーツやタオルを敷いて、こまめに交換してあげると清潔さを保てます。
ベッドを設置する場所は、老猫が出入りしやすい場所がおすすめです。夏はエアコンの風が直接当たらないようにし、また冬は乾燥しないよう保湿を心がけてください。
トイレ
猫を介護する際は、トイレにも配慮してあげなければいけません。
老猫になると、トイレの回数が増えるため、すぐに用を足せるように移動しやすい場所に設置するか、または複数にトイレを設けましょう。また、猫が寝たきりの場合は、猫用のオムツを利用するのもいいでしょう。
しかし、オムツを嫌がっている場合や自分で排泄ができない場合は、動物病院で診察を受け、適切な圧迫排尿・排便の方法を学ぶといいでしょう。
自己流で行うと、猫の体を傷つける可能性もあるため、必ず動物病院で指導を受けてください。
一人暮らしで老猫を介護するポイント
以下では、一人暮らしでの猫の介護についてお伝えします。
一人暮らしの場合、家を空けるのが心配なことが多いでしょう。飼い主様一人だけでの対応が難しい場合の対策についてもお伝えします。
留守にする時間をなるべく減らす
寝たきりの老猫や、重い病気を抱えている猫の場合は、容体が急変することもあります。
獣医師からそろそろ何があってもおかしくないなどと知らされた場合は、後悔することのないように、できるだけ留守にする時間を短くすると良いでしょう。
いざというときに慌てないように、介護生活がはじまったら、愛猫の最後を見届けられるような体制を準備しておきましょう。
自宅環境を整える
老猫は体の様々な機能が衰えます。体温調節機能も低下するため、気温の変化に弱くなります。できるだけエアコンなどを利用して、室内を一定の温度に保ちましょう。
トイレや水の設置は、ベッドやソファなど、猫が過ごすことの多い場所の近くに複数用意するのが理想です。
老猫になると免疫も落ちるため、猫が過ごす空間は、常に清潔を保ち病気を防ぎましょう。
ペットカメラを設置する
ペットカメラを設置すると、留守のあいだにも猫の様子を確認できることができて安心です。
ペットカメラは商品により、備わっている性能は異なります。部屋全体を見渡せるものや、夜間でも見えやすいもの、声をかけられるものなどの中から、使いやすいものを選びましょう。
猫にとっても飼い主様にとってもできるだけ安心して過ごせるような環境整備が大切です。
家族や友人を頼る
一人暮らしの場合、飼い主様ひとりで見守り続けるのは困難です。
すべてを自分ひとりで抱え込もうとすると、飼い主様のストレスも溜まり、飼い主様自身が健康を損なう恐れもあります。
家族や友人に相談して、留守中などに頼らせてもらえるようにお願いしておくと良いでしょう。
ペットシッターを利用する
一人暮らしの生活では、仕事や体調などさまざまな事情で突然家を空けなければならないときもあります。
家族や友人などに相談する時間もない場合、ペットシッターの利用も良いでしょう。ペットシッターは自宅に来て猫の面倒を見てくれるため、ペットホテルなどとは異なり、環境の変化によるペットへのストレスが少ないのもメリットです。
猫専門のペットシッターなど、信頼できて経験豊かなシッターを探すと良いでしょう。
老猫ホームを利用する
愛猫が寝たきりになると、食事介助や排泄・床ズレしないようなサポートなど、24時間付きっきりで介護が必要になる場合もあります。
飼い主様がご自身でサポートすることが難しくなった場合、老猫ホームを検討するのも良いかもしれません。
老猫ホームは費用が高額になることがネックですが、適切な介護を受けられます。
終身で入居できる施設もあるため、飼い主自身が高齢の場合や、体調の面などで猫の介護が難しくなった場合に検討する方が多いです。
猫の寿命はどのくらい?
上記では猫の介護のついてお伝えしましたが、そもそも猫の寿命は何歳くらいなのでしょうか?
猫の平均寿命
2021年の一般社団法人ペットフード協会による【全国犬猫飼育実態調査】(https://petfood.or.jp/topics/img/211223.pdf)の結果では、猫の寿命は15.66歳でした。現在の猫の寿命は、だいたい、15歳くらいだといえるでしょう。
猫は年々長寿になってきている傾向があり、平均寿命は2010年の調査より1.3歳も延びています。
背景には、完全室内飼いなどの飼育環境の改善や、獣医療の発展、良質なペットフードの開発などいろいろな要因があります。
猫の年齢を人間に換算してみる
猫が人間よりも長生きするのは難しいですね。猫は、人間の約4倍の速さで歳をとるとも言われています。
猫の年齢を、人間に換算すると何歳くらいなのか、一例として、環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドララインにおける、猫の年齢の人間換算をご紹介します。
出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2509a/full.pdf 7P
猫の高齢化社会の課題
猫が長寿になってきているというのは、飼い主様にとっては嬉しいことです。
しかし、猫も人間と同様に年齢を重ねると、視力・聴力・嗅覚、運動機能や消化機能などが衰え、昔はあまり考えることのなかった、寝たきり猫や高齢猫の介護が増えてきているという課題もあります。
何歳から老猫になるのか?
猫は、何歳くらいから老猫になるのでしょうか?全米動物病院協会と全米猫専門医協会が2021年に出したガイドラインでは、10歳以上の猫を老猫と定義しています。
(https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X21993657)
猫の老化には個体差も大きく、その要因としては、人間同様に生活習慣の違いが挙げられます。
例えば、年齢に応じて必要な栄養素が変化します。老猫になったら、老猫用のフードに切り替えるなどの対応が必要です。
猫の場合、見た目に老化がほとんど見られない子もいますが、いつまでも若いと過信せず、ケアを取り入れていくことが大切です。
猫の老化症状を知っておこう
猫が老化すると、見た目や行動などにどのような変化が出るのでしょうか。単なる老化症状と、病院を受診すべき状態の見分けも困難です。
以下では、猫の老化による変化や、動物病院を受診すべき状態についてお伝えします。
目ヤニが増える
老化によって、特に朝起きた時の目ヤニが増えることがあります。
しかし、日中も目ヤニが目立ったり、目ヤニで目が開けづらくなったりなどの症状は単なる老化ではなく、病気のサインである可能性もあります。獣医師に相談しましょう。
寝ている時間が増えた
老猫になると、体力・筋肉量の低下により、寝ている時間が増えるでしょう。活動性も低くなり、走ったり、高いところに登ったりなども少なくなります。
老猫の怪我の防止のためにも、あまり高いところに登らせるなどの行動は取らせないような環境にしましょう。
被毛のツヤがなくなり、色が薄くなってきた
老猫になると、自分で毛づくろいをする回数が減少したり、上手に毛づくろいができなくなったりするため、被毛の状態が悪くなることがあります。
白髪が生え、全体的に被毛の色が薄くなることもあります。飼い主様の定期的なブラッシングが必要です。
歯に黄ばみが目立つようになった
老猫が抱える代表的な問題が、歯周病などの口内トラブルです。猫の歯の根元あたりが黄ばんでいるのは、歯垢や歯石などが付着しているからです。
放っておくと、歯周病につながります。できるだけ早く動物病院を受診して、改善を目指しましょう。猫を飼い始めたら、歯磨きの習慣をつけることは歯周病の防止に効果的です。
今までにない行動が増えた
老猫は認知機能の低下や精神的な変化により、若いときにはみられなかった異常な行動がみられることがあります。
代表的なものに、トイレの失敗や、徘徊、分離不安などが挙げられます。
老猫の介護で飼い主様の負担を軽減するためにできること
猫を介護する際、猫に対する介護も重要ですが、飼い主様自身のケアも欠かせません。
介護をする前と介護中では、飼い主様の精神状態にも大きな変化が生じます。以下では、老猫の介護で飼い主様の負担を軽減するためにできることを解説します。
ストレスを感じたら一度離れてみる
猫のことを大切に思っていても、介護中はストレスが溜まり、イライラすることもあるでしょう。しかし、介護中は精神状態が変わり、ストレスが溜まることは一般的です。
ただし、絶対にそばにいないといけないというわけではないため、ストレスを感じた場合は無理して介護せず、一度猫から距離をとってみましょう。
離れるだけではストレスが軽減されない場合は、ペットシッターに頼り、介護の負担を分散させてみてはいかがでしょうか。
また、ストレスが溜まる原因が猫の問題行動であれば、動物病院で相談して投薬治療を受けてみることをおすすめします。
猫を介護することはもちろん大切ですが、飼い主様自身の健康も大切です。そのため、ストレスを溜め込みすぎないように気をつけましょう。
介護用グッズを活用する
介護中は、介護用グッズをうまく活用しましょう。うまく排泄できない猫にはオムツ、問題行動を予防するためには飼育用ゲージを利用するなど、介護用グッズに頼ることも手段の一つです。
状況に応じて介護グッズを利用すると、飼い主様の負担も軽減されるでしょう。
ペットロスを避けるためにエンディングノートを作る
ペットロス避けるために、思い出をエンディングノートに残しておくと良いでしょう。
エンディングノートを残しておくと、つらいときに読み返すことができ、沈んだ気分も緩和してくれるでしょう。また、写真を撮ったり、動画を残したりしても、ペットロスを避けられるでしょう。
早めの準備で穏やかな介護生活を
猫との生活の中で、猫が先に年老いていくことは避けられません。老猫と呼ばれるのは10歳くらいからですが、7歳くらいになったら将来の介護も見据えた猫との生活プランを考える必要があります。
早い段階で準備をすることで、愛猫に悔いのない老後を送らせてあげられるでしょう。時には人に頼ることも大切です。
家族や友人だけでなく、ペットシッターや老猫ホームなどのサービスを調べて、いざという時に利用できるようにしておきましょう。大好きなペットにはいつまでも元気でいてほしいですが、いつか必ずお別れの時がやってきます。
いざその時が来ると、急な悲しみで冷静な判断ができなくなることもあります。そのため、ペットが元気なうちから、ペットの看取りや葬儀などをどうするのかを考えておくことで、後悔のない最期の時を過ごすことができます。
また、悔いなくきちんとペットとお別れをすることは、その後のペットロスの緩和にも繋がります。COCOペットでは、生前の終活についてのご相談も承っております。些細なご質問でも、お気軽にご相談ください。