老犬にみられる問題のひとつに「徘徊」が挙げられます。犬が徘徊をはじめると、飼い主様は心配でどうにか止めてあげたいと考えますね。老犬の徘徊は、無理やり止めるとかえって犬のストレスにつながることがあります。

一方で、対策を取らずに徘徊させると思わぬ怪我につながる恐れもあります。徘徊の裏に病気が潜んでいる可能性もあります。今回は、老犬が徘徊する理由について解説します。徘徊する老犬との生活の中で、飼い主様にできる対策法についてもお伝えしますので、是非参考にしてみてください。

老犬が徘徊するおもな理由

老犬の徘徊にはいくつかの理由があります。ここでは、老犬が徘徊するおもな理由を3つ解説します。

昼寝が長すぎるため

老犬になると、日中寝ている時間が長くなる傾向になります。飼い主様も、寝ている老犬を起こすのがかわいそうだと考えることが多く、結果的に昼寝が長すぎることになります。老犬は散歩に出かけることも減るため、運動不足なども重なり、夜間に眠れなくなり昼夜逆転の生活になります。

夜間に眠れない老犬は、飼い主様の姿を探したり、空腹などを感じて落ち着かず徘徊することもあります。日中はできるだけ眠らせっぱなしにせず、適度に刺激を与えましょう。老犬の場合、体のどこかに異常や痛みがあって眠れない可能性もあるため、念のため動物病院で体に不調がないかどうかを診てもらいましょう。

ストレスが溜まっているため

老犬は、体の衰え、感覚器官の衰えなど様々な変化に対してストレスを感じています。さらに散歩にあまり出かけなくなることでストレスが溜まります。ストレスの解消には散歩が効果的であることが科学的にもわかっています。

日中、老犬が寝ていても適度なタイミングで起こして散歩に連れ出しましょう。足腰が衰えた老犬には、歩行補助用のハーネスなどの利用も良いでしょう。自力で散歩できない場合も犬用バギーなどを利用して外の空気に触れさせるだけでも効果があります。

認知症を患っているため

人の認知症は知られていますが、犬にも認知症があります。徘徊は認知症の症状のひとつです。認知症の犬は、自分の居場所や空間の把握ができなくなり、徘徊することが多いです。徘徊だけでなく夜鳴きなどの症状が伴う場合もあります。

認知症の症状は、ある日突然あらわれるものではありません。初期には、なんとなくぼーっとする時間が増えたり、障害物が避けられなかったりというような些細な変化しかみられません。認知症は早期の対応で進行を遅らせたり、症状を緩和させることが可能です。老犬の様子がおかしいと感じた際は、早めに動物病院で相談しましょう。

徘徊には思わぬ病気が隠れていることもある

老犬の徘徊には病気が潜んでいる可能性もあります。ここでは徘徊の原因として考えられる病気について解説します。老犬に徘徊がみられた場合、年齢のせいだと飼い主様独自の判断をせず、必ず動物病院を受診しましょう。

徘徊に隠れている可能性のある病気

徘徊の原因として考えられる病気のひとつに脳腫瘍が挙げられます。脳腫瘍では運動失調の結果ふらつく、旋回するなどの行動がみられることがあります。飼い主様から見ると、目的なく徘徊しているように見えることもあるでしょう。脳腫瘍の場合、徘徊だけでなく、痙攣などの神経症状や怒りやすくなるなど性格に変化が出ることもあります。てんかんを持っている犬の場合は、発作の前やあとにふらふらと徘徊することがあります。

足腰などの関節に痛みがある場合、座る、寝るなどの姿勢がつらかったり、痛みをまぎらわせるために徘徊することがあります。この場合、飼い主様が体を触ろうとしたら怒ったり痛みで悲鳴をあげることもあり、歩く姿勢もぎこちないことが多いです。緑内障や網膜剥離など何らかの原因で急に視力が低下すると、犬は周囲の状況がわからずに徘徊するような動きをすることがあります。

自己判断せず診察を

上でお伝えした通り、犬の徘徊や徘徊に見える動きには色々な原因が潜んでいます。それぞれの原因によって対処法は異なりますが、早期の対応で状況の改善が期待できることも多いです。犬が徘徊する場合、老犬だから仕方ないと飼い主様が自己判断せず、早めに動物病院に相談しましょう。受診の際は、徘徊の様子がわかるような動画を持参したり、徘徊以外に気になる症状があればメモをしておくと良いでしょう。

老犬の徘徊への対策は?

ここまで、老犬の徘徊の原因についてお伝えしました。ここでは、老犬の徘徊に対して飼い主様にできる対策方法を解説します。

無理に徘徊をやめさせるのはNG

飼い主様にとっては無意味に動いているように見えても、犬は理由があって徘徊していることもあります。不安な気持ちなどを徘徊によって紛らわせていることもあり、飼い主様が心配のあまり無理やり徘徊をやめさせると犬のストレスにつながります。無理に徘徊をやめさせるのではなく、下で解説するような安全対策をおこなったうえで、犬の気が済むまで徘徊させることが良いでしょう。

徘徊対策のチェックポイント

徘徊する犬との生活では、環境に注意が必要です。犬が特に徘徊するスペースには、ぶつかって怪我をしそうな家具などはできるだけ置かないようにしましょう。家具などの角はクッションやスポンジなどでカバーをして、ぶつかった時の安全対策を取るのも良いでしょう。

徘徊中に挟まって自力で出られなくなりそうなスペースは、あらかじめ塞いでおきましょう。床がフローリングなど滑りやすい素材の場合は、滑り止めとしてジョイントマットなどを活用しましょう。ただし、毛足の長いカーペットなどは犬の爪が引っかかって危険です。小型犬や中型犬などの場合は、ドッグサークルやビニールプールなどを活用して、安全に動き回れる環境を提供するのも良いでしょう。

また、夜間の徘徊に困る場合、日中に寝すぎている可能性があります。老犬だからと言って眠らせ続けると、夜間に眠れず徘徊の原因となるため、日中はタイミングを見計らって犬を起こし散歩に行ったりおもちゃなどで遊ぶなど、刺激を与えましょう。ブラッシングやマッサージなどで飼い主様とコミュニケーションを取ることも良い刺激になります。

老犬の変化を受け入れ適切な環境を提供しましょう

犬が徘徊をはじめると、飼い主様にも大きなストレスがかかります。まずは動物病院を受診して原因に沿った対策方法のアドバイスを受けましょう。どんな犬でも老化は免れないため、成犬の時と同じ状態には戻れないこともあります。犬の変化を受け入れ、その時その時に必要な環境を提供することも大切です。飼い主様が思いつめ過ぎず、リラックスして犬と接すれば犬もリラックスできるでしょう。