愛犬が老犬といわれる年齢になり、元気に走りまわるよりものんびりしている時間が増えてきた犬も多いでしょう。しかし体力の衰えによりできないことも増えますが、適度に動いたほうが老犬に効果的とされています。
本記事では、適度な遊びが老犬にもたらす効果やおすすめの遊び、遊ぶ際の注意点を紹介します。
目次
遊びが老犬に与える3つの効果
犬は一般的に7、8歳頃からシニア期となり、老犬と呼ばれるようになります。シニア期に入ると、身体の運動機能や感覚機能が次第に衰えて動くのがおぼつかなくなり、病気にかかる場合もあります。
寝ている時間が増えますが、実は適度な運動や遊びは心身ともに効果的とされているのです。適度な遊びによって得られるメリットを3つ紹介します。
脳の老化を予防する
犬が遊ぶときは身体の筋肉や感覚を使います。遊ぶだけでも筋肉や感覚の動きが脳に刺激を与え、脳の老化を予防すると考えられています。脳の老化防止は認知症リスクの軽減にもつながります。
実際に寝たきりの犬と遊びが大好きな犬では、認知症になるスピードが異なるといわれています。シニア期に入っている場合は、脳に刺激を与えるためにも積極的に遊ばせてあげましょう。
筋力の低下を予防する
あまり動かなくなったからと散歩に行かなくなると、ますます筋肉が退化してしまいます。筋肉は歩く、走るなど体を動かすためだけでなく、座ったり心臓や血管を動かしたりするなどにも使われ、生命活動で欠かせないものです。
若いときのように活発に運動するのではなく、ほんの少し歩くだけでも良いので遊びによって身体を動かすことを意識しましょう。お座りや伏せなどをするのも効果的です。
飼い主様との触れ合いで心の健康を維持
大好きな飼い主様と、スキンシップをとりながら遊ぶ時間は、老犬にとってストレス発散の時間になります。
犬は、若いときには走り回っていることがほとんどです。そのため、老犬になり動きにくくなった状況は、犬自身にとってもストレスを感じます。たくさん声をかけながら遊んであげることで愛犬の不安が軽減され、心も健康な状態を維持できます。
老犬の運動機能を確認する方法
老犬を一緒に遊ぶ際は、愛犬に無理させないためにも運動機能を確認しておきましょう。運動機能を確認するためには、具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。以下では、老犬の運動機能を確認方法について解説します。
愛犬の姿勢を確認する
まずは、愛犬の姿勢を撮影して姿勢が悪くないか確認しましょう。1ヶ月に1回の頻度で愛犬の姿を真正面、真後ろ、右側、左側、真上から撮影して変化を確認するようにしてください。
犬の後ろ足は通常の場合、くの字に曲がっています。そのため、愛犬を後ろから見た際に後ろ足がまっすぐ揃っていると、足の周りの筋肉や関節が衰えている可能性があります。
1ヶ月ごとに愛犬の姿勢を写真で収めておくと、変化にすぐに気づいて対処してあげられるため、愛犬の健康を守るためにも重要です。
歩き方を確認する
愛犬との散歩中に、歩き方で運動能力を確認できます。例えば、首が通常の位置にあり、目線をまっすぐに歩ける際は問題ありませんが、そうでない場合は前足の関節に異常があるかもしれません。
また、膝を曲げたまま歩いていたり、歩く姿は正常でも走ったり階段の上り下りをしたりする際の歩き方に違和感がある場合は、運動能力が低下している証拠です。
老犬とのおすすめの遊び方
動きが緩慢になった老犬と遊ぶ際、無理をさせるのは禁物です。ほどよく動きながら、五感を刺激する遊びがよいでしょう。おすすめの遊び方を5つ紹介します。
ご飯はどっち?ゲーム
飼い主様が左右の手の一方にエサを持ち、どちらにエサが入っているか愛犬が当てるゲームです。ご飯で嗅覚を刺激しますし、エサをもらえるので愛犬にも喜びがあります。
また、身体はほとんど動かさないため負荷が少ないのもメリットです。前段階として、こぶしに入れたエサを何度か鼻の前まで持っていくと、エサがあることや鼻をつけるとエサをもらえることをわかってくれます。
おやつ探し
コングなど、おやつを詰められる知育おもちゃを使うのも効果的です。コングとはアメリカ生まれのペット用知育玩具です。中にフードを入れることができ、天然ゴム製で噛んでも大丈夫な作りをしています。
コングを室内に隠し、愛犬に探してもらうのがおやつ探しゲームです。嗅覚や筋肉を使うほか、どこにあるか考えることで脳を刺激します。慣れてきたら難易度を上げていきましょう。
かくれんぼ
飼い主様も一緒になって遊ぶかくれんぼもおすすめです。匂いや音などを頼りに飼い主様を探すため、さまざまな感覚を使うことができます。ソファの裏やタオルの中など簡単なレベルからスタートしましょう。愛犬が見つけたら思い切り褒めてあげてください。
かくれんぼは、飼い主様が家のどこかに隠れて愛犬の名前を呼ぶだけで遊んであげられます。見つけたときにご褒美をもらえたり、褒めてあげたりすると犬も楽しんでくれるでしょう。
シニア犬とかくれんぼで遊ぶ際は、滑りやすい場所やぶつかりやすい場所がないかを事前に確認してください。滑りやすい場所には滑り止めをつけるなど、足腰に影響が出ないように対策してあげることが重要です。
室内散歩
かくれんぼのように動くのが難しい場合は、室内をゆっくりと散歩するのも効果的です。タオルやクッションなどのやわらかい素材のものの上は、足を踏ん張らないといけないため筋力を使い良い運動になります。
こちらも簡単なルートから始めて徐々に難易度を上げるとよいでしょう。おやつを使って誘導すると取り組みやすいです。
音のなるおもちゃ遊び
噛んだり揺らしたりすると音が鳴るおもちゃもおすすめです。遊びを通して聴覚を刺激することができます。誤って飲み込んでしまうことのないよう、おもちゃ選びには留意し、遊んでいる間も見守るようにしましょう。
遊ぶのが難しい老犬に刺激を与えるには
老犬でも遊ぶ体力がない子や遊び方を覚えられない子など、遊ぶこと自体が難しい場合もあります。愛犬がシニア期に差しかかった場合は、脳に刺激を与えることが重要です。以下では、シニア犬におすすめの刺激の与え方について解説します。
質の良い散歩をする
老犬に刺激を与えるためには、成犬の頃とは異なる質の良い散歩を心がけましょう。愛犬の歩くペースに合わせて歩き、体調や年齢に合わせて散歩してあげてください。
30分程度の散歩がつらそうなら、1回10分の散歩を1日2〜3回程度行うと良いでしょう。しかし、愛犬が嫌がっていたり疲れていたりするにもかかわらず、無理に散歩してしまうと散歩を嫌いになったり、体に負担を与えたりする可能性があります。
そのため、数分程度しか散歩できない場合でも、愛犬が散歩に行きたそうにしている場合は、積極的に散歩に連れて行ってあげてください。
ただし、真夏や雨風が強い日の散歩は避けましょう。夏場はアスファルトが高温になり足の裏を火傷する可能性があるため、涼しい時間帯を選んで散歩してあげることが重要です。
外で過ごす
遊びや散歩が難しい場合は、外で時間を過ごすだけでも効果的です。愛犬と一緒に外の風にあたったり、自然のにおいを嗅いだりすると、犬の脳に刺激を与えられます。愛犬がうまく歩けない場合は、抱っこしてあげたりカートに乗せてあげたりしても問題ありません。
庭やいつものお散歩コースだけではなく、いつもと異なる場所に出かけるだけでも犬にとってもいい経験になります。家の中で過ごす時間が増えてきた場合は、気分転換のためにも外に積極的に出るようにしましょう。
マッサージをする
犬も年齢を重ねると人間と同じように、身体に疲れが溜まりやすくなります。そのため、身体の疲れを取ってあげるためにマッサージを定期的にしてあげましょう。
愛犬に触れる時間は刺激になるだけでなく、血行促進にもつながります。ストレス解消や免疫力を上げるためにも、定期的に優しくマッサージしてあげましょう。
スキンシップを取る
愛犬とスキンシップを取ることも刺激になります。犬は年齢を重ねても飼い主様が大好きな気持ちに変わりはありません。そのため、飼い主様から抱きしめられたり、優しく撫でられたりするだけでもストレス解消になります。
スキンシップを取るときは声をかけてあげるとより良いでしょう。
ただし、シニア犬の性格により一人でゆったり過ごしたいと考える子もいます。そのため、しつこくスキンシップするのではなく、適度な距離感を保ちながら愛犬と過ごしましょう。
老犬と遊ぶ際の注意点
適度な遊びは老犬への良い刺激となりますが、遊び方によっては老犬のストレスになる場合もあります。以下では、老犬と遊ぶ際のポイントを解説します。
スペースを確保する
室内で老犬と遊ぶ際は、ケガをしないように広いスペースを確保してあげてください。狭いスペースで大きく走り回るような遊びをすると、事故やケガにつながる可能性があります。老犬になると小さい怪我でも重症になる恐れがあるため注意が必要です。
怪我のリスクを軽減するためにも、老犬が広々と遊べるスペースを確保し、片付けられものは片付けて安心安全に遊んであげましょう。
滑り止め対策をする
老犬と一緒に遊ぶ場合は、滑り止め対策をしてあげましょう。フローリングは老犬にとって滑りやすく、足腰を痛める原因です。足腰を痛めてしまうと、歩くことが困難になる可能性もあります。
自宅の床がフローリングの場合は、カーペットやジョイントマットを敷いて滑り止め対策をしてあげましょう。とくに、室内を歩き回るような遊びをする際は、滑り止めをして安全に遊べるようにしてあげてください。
おやつはあげすぎない
老犬と一緒に遊ぶ際は、おやつをあげすぎないように注意しましょう。宝探しゲームやかくれんぼなど遊びの一環で、ご褒美としておやつを与えることもあります。
しかし、ご褒美だからといっておやつを与えすぎると他の病気につながるかもしれません。愛犬の健康を守るために運動をしていても、食べ過ぎで肥満になってしまっては元も子もありません。
ご褒美やおやつを与える場合は、基本的にドライフードを1回1粒与える程度に抑えておきましょう。おやつの与え過ぎは肥満の原因であるため、愛犬の健康を守るためにも飼い主様が気をつけてあげてください。
一つの遊びだけは行わない
老犬と一緒に遊ぶ際は、一つの遊びに集中するのではなく、変化を交えて遊んであげることが重要です。例えば、宝探しゲームでも毎回探すお宝を変えたり、隠す部屋を変えてみたりして、変化を与えてあげたほうが刺激になります。
また、休憩を程よくはさんだらゲームを変えるなどして、愛犬が遊びに飽きないようにあらゆる遊びを取り入れると良いでしょう。
たくさん褒める
犬は飼い主様が大好きで、それは老犬になっても変わりません。遊びが上手にできた際は、たくさん声をかけ、大げさに褒めてあげましょう。たくさんなでてあげると犬も喜びます。
少し大げさかなと思うボリュームで声をかけ褒めてあげると、聴覚や理解力が衰えてきた犬にも比較的スムーズに伝わります。愛犬の大きな喜びになりますので意識して声をかけましょう。
毎日少しずつ継続する
愛犬が遊び方やおもちゃに飽きないよう、遊びをローテーションしながら取り組みましょう。また愛犬の負担にならないためにも、毎日少しずつ継続することが大切です。
特におやつを使った遊びは愛犬が興奮しすぎてしまい、あとで疲れが出てしまう可能性もあります。
休憩をとる
愛犬が興奮して楽しく遊んでいるのを見ると、飼い主様もうれしくなりつい休憩を忘れがちですが、こまめな休憩や水分補給は欠かさないようにしましょう。
愛犬が疲れていないように見えても、休憩を取ることは重要です。10分遊んだら5分休憩するなどして、愛犬の体に負担がかからないように気をつけてください。
愛犬の体調が優れない様子だったり、遊びの途中でとても疲れている様子だったりした場合は、無理せずに中断するか激しくない運動に変えましょう。
遊んだあとはリラックス
たくさん遊んだあとは、その分しっかりと休みましょう。たくさんなでてあげると、愛犬がリラックスしますし、マッサージにもなって癒し効果が高まります。顎の下や耳の後ろ、首の周りなどをマッサージするようになでてあげましょう。
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老犬と遊び方を考えて一緒に楽しもう
老犬になり、動きがゆっくりになってきた愛犬でも、飼い主様と一緒に遊びたい気持ちは変わりません。
適度な遊びは、老犬の脳の老化防止や筋力の低下防止などの効果も期待できます。そのため、愛犬の状態を見ながら少しずつでも毎日継続して遊びましょう。一緒に遊ぶ際の注意点にも留意して、愛犬のシニアライフをサポートしてください。