「保護犬という言葉は聞くけど、実態は知らない」という方も多くいらっしゃるでしょう。

さまざまな理由で保護された犬達は、新しい家族に迎え入れられることもあれば、残念ながら殺処分になってしまう犬もいます。

本記事ではそんな保護犬の現状と、保護犬になってしまう理由などについて解説します。

保護犬とは

保護犬とは、さまざまな事情で自治体や民間の動物保護施設、個人宅などで一時的に保護されて生活している犬たちのことです。日本では、1年間で約2.3万頭の犬が保護されています。

病気やケガをした状態で保護される犬や、動けないほど衰弱した犬、虐待などで人間に対して恐怖心を抱いている犬などさまざまです。

なぜ保護犬になる?

保護犬になる理由は、4つあります。以下で詳しく解説します。

野良犬・路上にいる犬の保護

引用:https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

保護される犬の割合で最も多いのが、飼い主様が分からない犬です。

2022年度には全国で22,392頭の犬が保護されましたが、そのうち88%が所有者不明の犬でした。

  • 元々野良犬だったケース
  • 飼い犬だったが捨てられたケース
  • 放し飼いだった犬
  • 迷子になって帰れなくなった犬

上記のような理由で所有者不明になります。

飼い主様からの依頼・飼育放棄

収容される犬のうち1割は飼い主様からの保護です。主な理由は以下の3つになります。

経済的な問題

犬を家族に迎えると、平均10~15年の長い期間、共に生活することになります。この期間中には、当然経済面の負担があると考えるべきです。

飼育コストが予想を超えたり、突発的な病気が発生したり、多大な治療費の支払いが発生したりすることも少なくありません。

それを想定せずに安直に犬を飼ってしまうケースもあり、後々手放すという結果を招くこともあるでしょう。

さらに、去勢や避妊手術には費用がかかります。これを怠ると犬の数が増えてしまい、最悪の場合「多頭飼育崩壊」に至るケースもあります。

身体的な問題

飼い主様やペットの身体的な問題で保護となるケースもあります。

飼い主様が高齢になり散歩することが難しくなってしまった、突然の病気で犬を飼うことができなくなったケースがあります。

中には、突然のアレルギー発症で犬と一緒に暮らせなくなってしまうケースもあるでしょう。

生活環境の変化

飼い主様のライフスタイルの変化で飼えなくなるケースです。主に以下の理由があります。

  • 仕事が忙しくなった
  • 犬の世話にまで時間が確保できなった
  • 引っ越し先がペット不可
  • 同居人に受け入れられなかった
  • 子供との相性が悪い

多頭飼育放棄

「多頭飼育崩壊」とは、ペットを多数飼育している状況で、飼い主様が適切な管理を行わず、動物が無秩序に増え続けた結果、飼育が困難になる状態です。主に不妊・去勢手術などの適切な処置を行わないことが原因で起こります。

飼い主様が何らかの理由で適正な飼育ができなくなった、もしくは飼い主様側が許容限界を迎えた場合、動物たちが栄養不足や衛生環境の悪化など、適切なケアを受けられない状態に陥ります。

動物福祉の問題だけでなく、公衆衛生の問題や近隣住民への迷惑となり、多くは近隣住民からの苦情・通報ではじめて状況把握されることが多いです。

ブリーダーから保護する場合

ブリーダーは、動物の専門的な知識を持ち、交配・繁殖を生業としています。

しかし、管理が不十分で許容範囲を超えると数が繁殖してしまったり、病気の子は売れないからと保護を申請したり身勝手なケースがあります。

悪質なブリーダー問題は、社会的な課題としてたびたびメディアにも取り上げられており、劣悪な環境で無理やり繁殖を行っているブリーダーもいるのが実状です。

また、ブリーダーの高齢化や廃業などをきっかけとする多頭飼育崩壊の現場から、たくさんの犬を保護するケースもあります。

更にブリーダー以外でも、ペットショップの売れ残りを保護申請する身勝手なケースも少なくありません。

保護犬の収容施設とその役割

引用:https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

保護される犬は年々減少していますが、それでもまだ年間23,000頭もの保護犬がいます。

保護犬のほとんどは自治体が運営する保健所や動物愛護センター、民間の動物愛護団体などに引き取られます。

保健所

保護犬に対する保健所の役割は、以下の3タイプです。

  • 保護犬の里親探しをする
  • 動物の簡易収容施設があり動物愛護センターなどの保護施設に引き取られるまでの一時的な期間収容する施設
  • 動物保護施設や殺処分施設を持つ施設

地域により保健所の役割は異なりますが、基本的に上記の機能があります。

動物愛護相談センター

動物愛護相談センターは、ペットと人間の共生を目指し、動物の保護と福祉を促進するための施設です。

保護施設があり、捨てられた・手放された動物の一時保護、健康管理、譲渡活動を行います。去勢手術や治療、ワクチン接種などもおこなっています。

また、動物を飼育する飼い主様やブリーダー・ペット販売者に対して、動物との正しい関わり方や適切な飼育方法の指導を行い、動物の福祉を守るための取り組みを支援しています。

動物愛護団体

動物愛護団体は、動物の保護と福祉を目的とした非営利の組織です。

行政機関から保護犬の引き渡しを受けたり、直接保護活動を通じて捨てられたり虐待されたりした動物を保護しています。

保護犬の新しい飼い主様を見つける活動をおこなうほか、環境や人に慣らす社会化やしつけなど、譲渡に適合するようなトレーニングなどもおこなっています。

飼育相談やマッチング、譲渡後の支援やフォローも活動の一環です。また、人間と動物の共生のために動物愛護の意識を高める啓発活動を行っています。

誰でも保護犬の譲渡を飼うことはできる?

保護犬を譲渡してもらうことは、誰でもできるわけでなく、審査に通る必要があります。動物愛護センターや動物愛護団体によって内容は異なりますが、大まかな譲渡までの手順を紹介します。

① 譲渡希望者の募集、譲渡会
② 譲渡申し込み
③ 飼育環境の調査や譲渡希望者の審査
④ 飼育のための講習
⑤ 譲渡

譲渡申請を行った後、譲渡希望者のライフスタイルのチェックや、保護犬との性格の相性、飼育環境の審査があり、適正でない場合には断られることもあります。

審査を通り、犬を適正に飼うための講習を受けることで、保護犬を家に迎え入れることができます。

保護犬も大切な命

保護犬は、さまざまな理由によって保護された「だけ」であり、特別なケースではありません。しかし、それに至るには人間の身勝手な理由であることが多いのが実情です。

そのため、犬を迎えたいと思った際は、10~15年共に過ごすということを念頭に飼うことを検討してください。

しかし、保護犬がいることも実状です。同じ命なため、家に犬を迎え入れる際には「保護犬」を迎え入れるのも一つの選択肢として加えてください。