犬を飼っていると、犬にも歯磨きが必要だと耳にすることが多いでしょう。しかし、どの程度の頻度で行うべきかわからなかったり、犬が歯磨きを嫌がって、毎日の歯磨きはできないという悩みもあるかもしれません。犬の歯磨きは寿命に影響する非常に大切な習慣です。今回は、なぜ毎日の歯磨きが必要なのかを解説し、歯磨きに慣れさせる方法や犬が嫌がる場合の対処法などについても具体的にお伝えします。是非参考にしてみてください。

犬の健康のためには毎日歯磨きが必要

犬の歯磨きの頻度は1日1回が理想的です。なぜ毎日の歯磨きが必要なのかをお伝えします。

犬の歯磨きでベストな頻度は毎日

犬の口内は一度清潔にしても、24時間以内に再び歯垢の付着がはじまるため、歯磨きは毎日行うことが理想的です。どうしても毎日歯磨きを行うことが難しくても、あとからお伝えするように、歯石ができる前に歯垢を除去するため、最低でも3日に1回は行う必要があります。犬は自分で歯磨きができません。飼い主が歯ブラシやお手入れシートを使って歯の清潔を保ちましょう。

犬は歯石がつきやすく頻度が少ないと歯周病になることも

人の場合、歯磨きをする大きな理由は虫歯の防止ですね。犬の口内には虫歯を産生する細菌があまりいません。口内がややアルカリ性に傾いていることも関連し、虫歯にはなりにくいです。

犬の歯磨きの目的は、歯石の防止です。歯石は歯周病の原因となり、歯周病は心臓など全身に影響し、寿命にも関係する病気です。歯石は、歯垢から形成され、犬の場合たったの3日~5日程度で歯垢が歯石になります。歯石は歯磨きでは除去できないため、歯垢の段階で除去して歯石ができるのを防止するために歯磨きをするのです。

子犬の頃からの習慣化が大切

いざ歯磨きをしようと思っても、犬はもともと口の中や歯を触られることは苦手です。犬は生後3週間程度で乳歯が生えます。ペットショップやブリーダーさんからお迎えした子犬にはすでに歯が生えているはずなので、お迎え後はできるだけ早く歯磨きの習慣をつけましょう。

犬が歯周病になるとどうなる?

犬は歯周病になりやすい動物です。世界小動物獣医師会(WSAVA)の デンタルガイドラインによると、犬の80%が2歳までに歯周病にかかっているそうです。アメリカ動物病院協会(AAHA)は、ホームケアをしていない小型犬では9ヶ月齢から歯周病が始まる可能性がある、としています。

歯周病になると、口臭が出たり、歯が抜けたり、顎の骨が溶けたり、病巣の膿によって顔に穴が開くこともあります。さらに病巣から血液を介して細菌が流れ、心臓や肝臓、腎臓などあらゆる臓器で障害を起こし、最悪の場合命を落とすこともあります。

犬の歯磨きの方法

ここでは犬の歯磨きの方法をお伝えします。犬は口の中や周りを触られるのを嫌がります。いきなり歯磨きをするのではなく、ステップを踏んで少しずつ歯磨きに慣らしましょう。

口の周りに指で触れる

まずは口の周りに触る練習です。いきなり長時間触るのではなく、口の周りにタッチしたらすぐに犬の好みの味の歯磨きペーストや練習用のおやつを与えます。手を近づけただけで避ける場合は、はじめは触らずに手を近づけるだけでご褒美をあげましょう。

繰り返すと、触られることとご褒美が結びつき、触られることが嫌なことではなくなります。練習中は優しく褒めることを徹底し、絶対にマズルをつかんだり、無理なことをしてはいけません。

歯に触る練習をする

上で口周りを触れるようになったら、同じ要領で歯も指で触る練習をします。歯茎も忘れずに触る練習をしましょう。歯や歯茎に触れるようになったら、指だけで歯をこする指磨きをしてみましょう。

歯磨きシートで歯の表面を拭く

指磨きができるようになったら、指以外のものに慣らす段階です。いきなり歯ブラシではなく、抵抗の少ない歯磨きシートで歯の表面を拭く練習をします。歯磨きシートがなければ、濡らしたガーゼなどを使用してもかまいません。

歯ブラシに慣れさせて警戒感を解かせる

歯磨きシートに抵抗がなくなったら、歯ブラシに慣らしましょう。犬は初めて見るものを怖がることがあるので、歯ブラシを見て警戒するようなら、歯ブラシを見せてすぐにおやつをあげることで、歯ブラシとおやつが結びつき抵抗がなくなります。

歯ブラシを口の中に入れる

歯ブラシを見ても怖がらなくなったら、口に入れてみます。いきなり入れるのではなく、まずは犬の好きな味の歯磨きペーストを歯ブラシにつけて、舐めさせてみましょう。歯ブラシからペーストを舐めるようになったら、少しずつ口内に入れてみます。

歯ブラシで歯を磨いていく

歯ブラシを口内に入れられるようになったら、歯を磨く練習です。前歯から順番に、少しずつ慣らしましょう。

犬が歯磨きを嫌がる場合の対処法

犬によっては、歯磨きができるようになるまで時間がかかることもあります。ここでは、犬がひどく嫌がる場合などに試すべき方法や、歯磨きの代替グッズなどについてお伝えします。

眠くなったタイミングで歯磨きをする

犬が遊びに熱中している時や、活動したい時間帯に歯磨きをしようとすると抵抗されることがあります。眠そうにうとうとまどろんでいるようなタイミングや、リラックスしてぼーっとしている時などに行うと良いでしょう。

飼い主が歯を磨きやすい姿勢で座らせる

飼い主が歯を磨きやすい姿勢を研究しましょう。例えば、飼い主の脚の間に背を向けておすわりさせると、後ろから歯を磨きやすいです。小型犬の場合、膝上に乗せて背を胸につける姿勢が磨きやすく、犬も安心します。歯磨きを真正面から近づけると怖がられることが多いので注意しましょう。

特別なおやつを使う

歯磨きの練習の時は、犬の大好きなおやつを使いましょう。犬が歯磨きとおやつを天秤にかけて、おやつが欲しいから歯磨きをしてもいいと思うような、とっておきのものがあると良いでしょう。

歯磨きグッズを使う

歯磨きの練習のあいだは、歯磨き効果のあるおもちゃや歯磨きガムを使用するのも良いでしょう。残念ながら、実際の歯磨き以外には、歯石を防ぐ効果はありません。しかし、歯磨きができるようになるまでは、これらのグッズを併用して、歯磨きにつなぐのも良いでしょう。

歯石は動物病院での除去も効果的

歯石は一度できてしまうと、ホームケアで除去することはできません。動物病院での処置が必要です。

スケーリングとルートプレーニング

動物病院では、まずスケーラーなどを用いてスケーリング=歯石除去を行います。さらに、スケーラーの届かない歯周ポケットの歯石を取るルートプレーニングという処置で、見えない部分までしっかり取ります。その後、歯の表面を磨き、細かい凹凸を無くして歯垢が付着しづらい状態にします。

処置は全身麻酔で

歯石除去には全身麻酔が必要なため、犬の健康状態や年齢などによっては、できない場合もあります。獣医師と良く相談しましょう。動物病院の中には、無麻酔で歯石除去を行う病院もありますが、その場合は歯周ポケットの中までは除去できないため、効果が低くなる可能性があります。安全性のために、無麻酔での歯石除去は行わない動物病院も多いです。

犬の長生きのために歯磨き習慣を

今回は、犬の健康のためには毎日の歯磨きが必要であるということや、具体的な歯磨きの方法をお伝えしました。慣れないうちは、練習にも時間がかかり、飼い主の負担もあるかもしれません。しかし、犬の歯周病は命にも関わる恐ろしい病気です。いきなり毎日やろうとすると犬にも飼い主にも負担が大きいかもしれません。まずは3日に1回でも実施してみましょう。犬の長生きのために、是非歯磨きの習慣をつけましょう。