顔はそっぽを向きつつもおしりをくっつけてくる愛犬の行動を不思議に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。突然の愛犬の行動に、どこか調子が悪いのかと心配に思うこともあるでしょう。
そっぽを向く行為は、人間の行動で考えると、相手を避けるときなどのマイナスな行動ですが、犬がおしりを向けてくるのは、飼い主様に対しての信頼の証しだといわれています。
本記事では、愛犬がおしりを向けてくる具体的な理由を紹介し、信頼関係を築くコツ、愛犬がおしりを向けているときの注意点を解説します。
目次
愛犬がおしりを向けてくる理由は?
愛犬がおしりを向けてくる理由には、次の2点が挙げられます。
信頼の証拠
犬にとって後ろ足(おしり)は、目が行き届かないため、敵から守らなければならない部位です。そのため野生の犬は、敵に襲われないように集団行動をして、仲間同士で背中を合わせて急所を守る習性があります。
自然界において、弱点は守るものであり、信頼している仲間にしか弱点は見せません。そのため、急所を見せるのは信頼の証しだといえます。
そのため、犬が近寄ってきておしりを向けて座ったり、おしりをくっつけて寝たりすることは信頼の証と考えられます。
犬は心を許している相手にしかおしりを向けることはありません。おしりを向けてくるのは、飼い主様のことを深く信頼し、そばにいて安心しているからでしょう。
落ち着いて欲しいときの仕草
2つ目は、飼い主様に対して愛犬が「落ち着いて欲しい」と感じているからだといわれています。
犬には、「カーミングシグナル」と呼ばれる、相手に感情を伝えるための行動パターンが生まれつき備わっています。カーミングシグナルは無駄な争いを避けることを目的とし、自分や相手を落ち着かせるための行動です。
喧嘩中におしりを向けた場合、相手に落ち着いてほしいと伝えているかもしれません。目をそらしたり、お腹を見せたりする行動も犬が相手に落ち着いて欲しい時に見せるサインです。
愛犬がおしりを向けてくるタイミングにより、伝えたい気持ちが変わります。愛犬の行動の意味を知るためには、どのような環境でおしりを向けてくるのか、しっかりと観察することが大切です。
おしりを向けるのは犬特有の習性にある
犬の習性からも、おしりを向ける理由が見えてきます。
犬の視力は0.2~0.3程度と低く、はっきりと視覚で相手をとらえられません。焦点を合わせる能力が弱く、60~70cm以上の距離を取らなければピントが合わないため、近くにあるものはぼやけて見えるようです。
犬にとって、背後ははっきりと見えないため、後ろから寄ってくる動物に警戒する習性があるのです。前述したように、犬には背後から襲われないよう仲間同士で背中・おしりを守っていた習性が残っています。そのため、飼い主様に対しておしりを向けてくるのは、絶大な信頼の証しといえるでしょう。
おしりを向けてくるのは、人間の感覚でいうと「そっぽを向かれている」とショックに思う飼い主様もいるかもしれません。しかし、犬のルールや習慣は、人間とは異なることを理解してあげることが大切です。
愛犬がおしりを向ける以外にみせる愛情表現
おしりを向ける行動は愛犬が飼い主様に見せる愛情表現です。しかし、以下の仕草も犬が飼い主様を信頼しているときに示すサインです。
あごを乗せる
愛犬が腕や足に顎を乗せる行為は、飼い主様への深い愛情を示すサインです。あごを乗せている間は、リラックスして身体の力を抜いて無防備になっています。そのため、愛犬が心を許している相手にのみ見せる仕草といえるでしょう。
頭をぶつけてくる
愛犬がわざと飼い主様に向かって頭をぶつけることはありませんか。
犬は飼い主様に甘えたり、もっと注意を引いたりしたい時に頭をぶつけてくることがあります。安心感を得たいという愛情表現のサインです。
おもちゃを持ってくる
犬がおもちゃを持ってくる行動は、飼い主に対して一緒に遊んでほしいという気持ちの表れです。時間に余裕があるときは、犬が持ってきたおもちゃで一緒に遊んであげましょう。
主従関係を保つために、飼い主様が遊びを終わらせることも重要です。
愛犬と良好な関係を築くコツ
愛犬がおしりを向けるのは信頼関係が築けている証拠ですが、おしりを向けられた経験がない飼い主様もいるでしょう。
犬と過ごす時間が少ない場合、信頼関係が十分に築けていない可能性があります。愛犬と良好な信頼関係を築くコツを以下で解説します。
犬と過ごす時間を増やす
犬と一緒に過ごす時間を増やすことは、信頼関係を築くうえで有効な手段です。以下のケアも日々行ってみてください。
- ご飯を用意する
- 遊ぶ
- ブラッシングをする
ブラッシングなどのケアを嫌がる場合は、少しずつ慣れさせてあげる必要があります。
犬を信頼する
犬は、自分が飼い主様から信頼されているかを判断できます。そのため、信頼されていないと感じている場合、犬からの信頼を得るのは難しいでしょう。信頼していない相手には背中やおしりを向けられません。
たとえば、しつけのトレーニングが愛犬にうまく伝わらないときに、うんざりした態度や言葉を使うのはよくありません。「必ずできる」と犬を信頼して、接してあげることが大切です。信頼を得るために、犬の期待を裏切る行動は避けましょう。
安心感を与える行動をとる
飼い主様が一貫性のない行動を取ると、犬からの信頼を得ることが難しくなります。
一時の感情で叱ったり、褒めたりすると犬が混乱してしまいます。犬が安心して過ごせるよう、優しく穏やかでいることが大切です。犬の性格にもよりますが、信頼関係が築けるまでには時間がかかります。
犬がいたずらをした際に、すぐに叱るのではなく、正しい行動ができるよう心がけましょう。
愛犬におしりを向けられた時に行うこと
愛犬は飼い主様を信頼し、おしりを向けてきます。おしりを向けられた時には以下の行動をとってみてください。
優しく撫でて声をかける
愛犬が甘えたい気持ちからおしりを向ける場合は優しく撫でて声をかけるなど、安心感を与えてあげましょう。積極的にスキンシップを取り入れ、コミュニケーションを図ることで飼い主様と犬の信頼関係を深められることが研究でわかっています。
寄り添う
愛犬がそばにきておしりを向けているときは、穏やかな気持ちになっていることが多いです。何もせずにただ寄り添ってあげるだけでも、愛犬にとっては居心地が良いでしょう。
犬はもともと群れで生活していた動物で、ひとりで過ごすことが得意ではありません。そのため、飼い主様と一緒に過ごす時間は犬にとって非常に嬉しいものであり、安心感に浸れるでしょう。
犬がおしりを向けているときの注意点
愛犬がおしりを向けてくれているときには、いくつか注意点があります。行動次第で信頼を失うリスクもあるため、事前に確認しておきましょう。
大きな音を出さない
愛犬が安心しておしりを向けてくれているときに、突然大きな音を出してしまうと警戒心を持ってしまうかもしれません。
犬の聴力は人間の4倍といわれ、聴覚がとても優れています。その分、音に敏感で驚きやすく、大きな音に対して恐怖を感じることもあります。
意図して嫌がることをする飼い主様はいないと思いますが、大きな着信音や音楽などが鳴り響く環境はよくありません。何度も愛犬にとって嫌なことを繰り返すとストレスになり、飼い主様を信頼できなくなってしまうでしょう。
突然おしりを触らない
おしりは急所です。おしりを向けているのは、飼い主様におしりを守ってもらえると安心して任せている状態です。飼い主様におしりを向けてリラックスしている時に、突然おしりを触られると警戒心が芽生えるかもしれません。
前述したとおり、犬は目がぼんやりとしか見えません。恐怖心を抱きやすいため注意が必要です。おしりに触りたくなったとしても、そっとしておいてあげましょう。
まとめ
愛犬がおしりを向けてくる行動は、一見素っ気ない態度に見えますが、実は飼い主様に対する信頼の証しです。また状況によっては、飼い主様に「落ち着いて欲しい」というメッセージでもあります。
愛犬に信頼してもらうためには、飼い主様側から愛犬を信頼し、嫌がることはせずに愛情持って接することが大切です。
おしりを向ける以外にも、犬には愛情表現を意味する動作がたくさんあります。犬の行動を学ぶことで愛犬の感情が理解しやすくなれば、より一層、愛情が注げるでしょう。