犬にとって散歩が重要ということは、よく知られています。とはいえ、天候や体調などによって散歩に行けないこともありますし、疲れているときは犬を散歩に連れて行くことをつらいと感じる方もいるかもしれません。

そんなとき、犬を散歩させないと何か不都合はあるのか気になる方も多いでしょう。犬に散歩をさせないと身体的・精神的な面などのリスクがあります。

今回の記事では、犬を散歩させない場合に生じるリスクや上手に散歩させるポイント、散歩に行けないときの対策を紹介します。

犬を散歩させない場合のリスク

犬を散歩させない場合のリスク

犬種により異なりますが、基本的に犬には1日2回30分〜1時間程度の散歩が必要です。しかし、時間がない、またはめんどくさいからといって、愛犬を散歩させなければどのようなリスクがあるのでしょうか。

犬を散歩させないと生じる可能性のあるリスクは、おもに次の4点です。

身体に悪影響を及ぼす

散歩をしないと、犬の身体に悪影響を及ぼします。まず注意すべきなのは、運動不足による肥満です。肥満は病気を引き起こす原因となり、糖尿病や心臓病、関節痛、呼吸機能の低下などのリスクを高めてしまいます。

また、運動不足になると、筋肉や関節、骨などが脆くなり、関節痛の一因になります。そのほか、腸の働きが弱って便秘になってしまうこともあります。

精神的に悪影響を及ぼす

一日の大半を屋内や庭など限られたスペースで過ごす犬にとって、散歩は気分転換の機会になります。散歩をしないとストレスが溜まり、結果として悪影響が出ることがあります。

たとえば、無駄吠えや咬む行為が増えるなどです。乱暴になり、家の中の物を壊すなどのいたずらが激しくなることもあります。

また、自らの手足を舐め続ける肢端舐性皮膚炎(したんしせいひふえん)という病気になったり、下痢や嘔吐、脱毛症、うつ病などにつながったりすることもあります。

社会性が身につかず内気になる

散歩をさせないと、犬にとって重要な社会性が中々身につきません。犬は外の世界を知り、ほかの犬や人と出会う機会を経て社会性を身につけていきます。散歩の機会が減ると、これらの機会が失われてしまうのです。

結果として、飼い主様にしたがって歩くことも学べず、言うことを聞かない、しつけができない犬になるおそれがあります。また、怯えたり吠えたりする機会が増えたり、内気になってしまったりすることもあります。

飼い主様とのコミュニケーションが不足する

犬を散歩させなければ、飼い主様とのコミュニケーション不足につながります。

犬にとって散歩は気分転換になり、体を動かせる時間だけでなく、飼い主様と過ごせる大切な時間です。飼い主様と一緒に散歩できることは、犬にとって幸せで楽しい瞬間です。

また、散歩中に飼い主様と過ごす時間は信頼関係を深める機会でもあります。散歩の時間が失われれば、犬はストレスを感じやすくなり、問題行動が発生する可能性もあります。愛犬と絆を深めるためにも、散歩は欠かさず行いましょう。

小型犬は散歩をさせないでも問題ない?

小型犬は散歩をさせないでも問題ない?

小型犬であっても散歩は必要です。

小型犬であれば散歩をさせなくても問題がないと聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。理由としては、小型犬は体が小さいことから、家の中を自由に動き回れれば、十分な運動量が確保できるといわれていたからです。

しかし、近年ではマンションで犬を飼う方も増えており、床面積が広くない物件に住んでいれば運動量は確保できません。

そのため、たとえ小型犬でも十分な運動量を確保するために、散歩は必要であるとされています。ただ、大型犬と比べると少ない運動量でも問題ないことは事実です。犬の大きさに合わせて適切な運動量を確保してあげることが重要です。

犬が散歩を嫌がる理由

犬が散歩を嫌がる理由

飼い主様が犬の健康のために散歩をさせようとしても、なかには散歩を嫌がる子もいるでしょう。以下では、犬が散歩を嫌がる理由について解説します。

首輪が合っていない

犬が散歩を嫌がる原因に、首輪が合っていないことが挙げられます。首輪やハーネスのサイズが合っていなければ、首や体に不快感や痛みを覚えることがあり、散歩自体を嫌がる原因です。

逆に、ゆるすぎると首輪が動いて摩擦や不安定さを感じさせ、また嫌がる原因となります。そのため、散歩の際は愛犬のサイズに合った首輪を選んであげましょう。犬の首に約2本の指が入る余裕がある程度が理想です。

老化が進んでいる

老化が進んでおり、体力が低下していることも愛犬が散歩を嫌がる原因です。年齢を重ねると、筋力や関節の柔軟性が低下し、成犬のときと同じように散歩ができなくなります。

また、体力が落ちることで、疲れやすくなり、散歩を負担に感じるようになる場合があります。特に、シニア犬には無理をさせてまで散歩はせず、体調に合わせて散歩時間やペースを配慮してあげることが重要です。

散歩中に嫌な思いをした

散歩中に嫌な思いをして、トラウマを抱えている場合は散歩を嫌がります。

犬は人間よりも音に敏感であり、車のエンジン音や工事の騒音、他の犬の吠え声などにより恐怖を感じる場合があります。また、散歩中に見知らぬ人に突然触られたり、他の犬に威嚇されたりすると、トラウマに感じて散歩を嫌がるようになるでしょう。

子犬の頃に散歩をしていなかった

子犬のことに散歩をしていなかった犬は、外の環境に慣れていないことから、散歩を嫌がる傾向にあります。

子犬の時期は社会性を発達させるためにも重要な時期で、外の世界に触れさせることで警戒心や恐怖心を克服させられます。しかし、子犬の時期に外の環境に慣れさせていなければ、外の音や匂い、人混みなどに対してストレスを強く感じてしまうでしょう。

そのため、子犬の頃から積極的に散歩するようにしてください。

病気が潜んでいる

愛犬が突然散歩を嫌がるようになった場合は、病気や怪我が潜んでいる可能性があります。特に、シニア犬の場合は関節痛や筋肉のトラブルを引き起こしているかもしれません。

愛犬の歩き方に違和感がある場合は、関節疾患や怪我の可能性があるため注意が必要です。もともと散歩が大好きだった犬が、急に散歩を嫌がるようになったら、早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。

散歩を嫌がる犬の対処法

散歩を嫌がる犬の対処法

愛犬が散歩を嫌がる場合でも、散歩は必要です。散歩を嫌がっている場合は、以下の4つの対処法を参考にしてみてください。

抱っこやカートを利用する

散歩を嫌がっている犬の場合は、最初は無理をせずに抱っこやカートなどで、外の環境に慣れさせることが重要です。犬が風や外の匂いを感じるだけでも十分な刺激になります。

外に出た場合は、愛犬に優しく声をかけて不安を和らいであげてください。また、どうしても歩きたがらない場合は、カートや抱っこで少しずつ慣れさせてあげてください。

リードを無理に引っ張らない

愛犬が歩かないからといって、リードを無理に引っ張らないようにしてください。無理やりリードを引っ張ると、散歩中に嫌な思いをしたということを記憶してしまい、今後の散歩にも支障をきたします。

また、愛犬に合わせすぎると飼い主様のいうことを聞かずに、散歩コースとは違う場所へと動き出す可能性があるでしょう。

そのため、飼い主様の行きたい方向に愛犬が歩くまでは、その場で止まって愛犬が歩くのを待つようにしてください。

怒ったり叱ったりしない

散歩を嫌がる愛犬に対して、怒ったり叱ったりするのは避けましょう。愛犬が散歩を拒むことには、何らかの理由があります。理由もわからずに愛犬に叱責すると、よりストレスを感じさせて、ますます散歩を嫌がってしまいます。

愛犬が散歩に行こうとしない場合は、愛犬が安心できるように少しずつ慣らしていき、愛犬のペースに合わせてあげることが重要です。

無理せず帰る

散歩を嫌がる愛犬の対処法として、無理せずに帰ることも重要です。愛犬が歩くことを嫌がっている場合、無理に引っ張ったり長時間外にいたりすることで、犬にストレスを与えてしまいます。

特に体調や気分が悪い時は、無理をさせずに早めに帰宅する必要があります。散歩は犬にとって楽しい時間であるべきです。そのため、嫌がる場合は無理をせず、愛犬の体調や気分を尊重してあげてください。

犬を上手に散歩させるポイント

犬を上手に散歩させるポイント

以下では、犬を上手に散歩させるポイントを紹介します。

愛犬にとって適切な散歩時間を把握する

犬にとって適切な散歩の時間は、体格や犬種によって異なります。そのため、自分の愛犬に適した散歩の時間をあらかじめ把握しておきましょう。

一般的に、犬の散歩は朝・夕2回に分けて行なうのが適切です。1回あたりの時間は、小型犬は15~30分程度、中型犬は30~40分程度、大型犬は60分程度が目安です。

また、犬種による違いも意識しましょう。同じ小型犬でも、愛玩犬のルーツをもつチワワやマルチーズは20~30分程度、元々猟犬として使役されていたトイプードルやミニチュアダックスフンドは40~60分程度が理想的な散歩の時間の目安です。

あとは散歩から帰ってきたときの様子を観察して、犬に適切な時間を探っていくとよいでしょう。

リードに慣れてもらう

リードや首輪をつけることが嫌いで、散歩に行きたがらない犬もいます。このような場合は、家の中でもリードをつけて過ごしてもらい、少しずつ慣らしていく方法が効果的な場合があります。

家の中では飼い主様がリードを持つ必要はなく、垂らしておけば問題ありません。そのままでも食事や遊びがしっかりできていたら、ぜひ褒めてあげてください。

なお、犬によってはリード自体が嫌いなのではなく、首輪をリードで引っ張られる感覚を嫌っていることがあります。そのような場合は、首輪ではなくハーネスにリードをつけることで改善することがあります。

また、握りやすいリードを選び、愛犬を適切にコントロールすることも重要です。長さを調節できるリードを選べば、犬も快適に走り回れるでしょう。

散歩コースの下見をする

犬にとって危険ではないかを確認するために、散歩コースの下見をしておくことも重要です。

下見の際は、ゴミがたくさん落ちていないかチェックをしましょう。犬は拾い食いをすることがあるためです。特にタバコの吸殻は、飲み込むと危険なため注意が必要です。

また、コースの途中で見かけるほかの犬の様子を観察することも大切です。よく吠える犬など、愛犬が怖がる可能性がある犬がいないか、確かめておきましょう。もし愛犬が苦手な犬と出会ってしまっても、適切な距離を保てる幅のある道路かどうかもチェックポイントです。

交通量も散歩のしやすさに関わる重要なポイントです。大通りなど交通量が多過ぎる場所は、飼い主様も愛犬も歩きづらいことがあります。

歩きやすい場所は大きさや犬種ごとにも違います。たとえば小型犬なら、関節に負担がかかり過ぎる階段や坂道の多い場所は不向きです。愛犬の様子を見ながら次回の散歩ルートに活かしていきましょう。

短い距離から散歩する

まずは、散歩に慣れさせるためにも、短い距離や時間で散歩しましょう。しばらく愛犬と一緒に歩いてみて愛犬が引き返そうとしていれば、無理に散歩を続けずに中断しても問題ありません。

愛犬がストレスなく散歩できることが何よりも重要であるため、焦らず愛犬のペースに合わせて散歩しましょう。

外に慣れさせる

散歩に慣れていない犬であれば、まずは外に慣れさせることが重要です。いきなり散歩するのではなく、自宅の庭や自宅の前の道などで愛犬と遊んであげるといいでしょう。

愛犬が外に慣れれば、外が楽しい場所であると認識してもらえるため、徐々に散歩にも慣れていってくれるはずです。

ご褒美をあげる

ご褒美を与えながら散歩するのも効果的です。おやつや好物で誘い、お散歩させれば愛犬は散歩すると良いことがあると認識します。そのため、外に対して恐怖心や抵抗なく楽しく散歩ができるようになるでしょう。

ただし、ご褒美を使って散歩する場合は、ご褒美を与えすぎないように注意してください。

犬の散歩に行けないときの対策

犬の散歩に行けないときの対策

天気が悪いときや飼い主様の体調が悪いとき、仕事が忙しいときなどさまざまな理由により散歩に行けないこともあるでしょう。

そのようなときは、無理して散歩に行く必要はありません。行けるようになったら行けなかった日の分を補うように、少し長めに散歩をさせてあげましょう。

室内で散歩の代わりに遊んであげるのもおすすめです。ボールを投げて持ってきてもらう遊びや、ロープを引っ張りあう遊びなど、体をよく動かせる遊びを取り入れるとよいでしょう。

また、ノミやダニ、アトピーなどが気になり散歩をさせたくないこともあるかもしれません。ノミやダニに対しては獣医で処方される予防薬などを活用し、アトピーに関しては草むらなどを避けるなど、適切な対策をとりましょう。

なお、老犬で散歩が難しい場合も、犬用カートなどを活用してなるべく外に出してあげるのがおすすめです。運動にはあまりならなくても、外の空気に触れることでストレスが軽減されます。老犬の散歩については、以下のページも参考にしてください。

関連記事:老犬も散歩は大切!散歩がもたらす効果や成犬と比べて注意すべき点について解説

犬を散歩させないことはリスクがあることを覚えておこう

犬を散歩させないことには、リスクがあります。肥満などの原因となるほか、精神的なストレスが問題行動や病気を引き起こすこともあります。また、社会性を身につける機会が減るため、内気な犬になってしまうかもしれません。

犬を上手に散歩させるためには、愛犬にとって適切な散歩時間を把握することが大切です。また、犬にとって歩きやすい散歩コースを意識するとよいでしょう。どうしても散歩に行けないときは、行ける日に長めに散歩させてあげてください。