「飼い犬がフローリングで滑って歩きにくそう」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
フローリングは私たちにとって身近で掃除しやすく便利なものですが、犬にとっては思わぬ事故につながりかねない、危険な存在かもしれません。
本記事では、フローリングが犬に与える影響やそれにより、起こりうる怪我や、犬がフローリングで滑らないための対策方法を解説していきます。
目次
犬を飼う際、フローリングに気をつけるべきか
通常、犬は手足の爪を地面に引っ掛けて歩いています。
しかし、地面がフローリングの場合、爪で引っ掛ける場所がないため、踏ん張りながら歩かなくてはなりません。
常に力を入れて歩いている状態になり、腰や関節に大きな負担をかけてしまいます。そのため、犬を飼う際、家がフローリングである場合は細心の注意が必要です。
フローリングが犬に与える影響
前述したとおり、犬は爪を使って歩いていますが、フローリングだと爪を床に引っ掛けられずに滑ってしまいます。
フローリングは、犬に以下のような影響を与えてしまいます。
- 踏ん張りがきかず思い通りに動けない
- 高い場所から飛び降りたときに着地に失敗する危険もある
- 余計な力を使って筋肉を傷める
床がフローリングだと、表面がツルツルしており踏ん張りが効かないため、思い通りに動けません。
そのため、犬にとって大きなストレスになってしまいます。
また、ソファーや段差などから飛び降りたときも危険です。ブレーキが効かず転倒し、大きな怪我につながる可能性があります。
余計な力をつかって身体に負荷をかけてしまうため、筋肉を傷める原因にもなるでしょう。
上記のとおり、床がフローリングだと犬に悪影響が及ぶ可能性があります。
フローリングが原因で犬に起こりやすい怪我
床がフローリングであることが原因で、大切な飼い犬が大きな怪我をしてしまう可能性もあります。
以下では、フローリングが原因で犬に起こりやすい怪我を5つ紹介します。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは、人間でいう膝のお皿の部分が正常な位置からずれてしまう怪我です。
略称として「パテラ」とも呼ばれています。
膝蓋骨の脱臼は程度により、グレード1からグレード4に分類されます。
グレード1の場合、膝蓋骨は通常通り滑車溝に収まっていますが、手で押すと脱臼する状態です。
ほとんど症状はありませんが、稀に膝蓋骨が外れ、「キャン」と鳴いて後ろ足を挙げたり、スキップしたりします。
グレード2は、後ろ足を曲げたタイミングで頻繁に脱臼する状態です。
後ろ足を曲げ伸ばししたり、手で押したりすると元の位置に戻りますが、脱臼の際は後ろ足が着けないようになるでしょう。
グレード3は、膝蓋骨が常に脱臼している状態です。
手で押せば一時的にもとに戻りますが、後ろ足を曲げて腰を落とした状態で歩くなどの症状が見られます。
グレード4は、膝蓋骨が常に脱臼しており、手で押しても元に戻すことができない状態です。
後ろ足を曲げたまま、うずくまった状態で歩くような様子が見られるでしょう。
交通事故や高いところからの転落で膝に強い衝撃が加わったことで発症し、股関節の溝が浅いトイプードルやチワワなどの子犬に多く見られます。
片方の足で歩いたり、痛めた足を引きずって歩いたりという症状がみられます。
他にも、痛がって鳴くことや、抱き上げた時に「パッキン」「カックン」と音が鳴ることもあります。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、背骨の間にある椎間板という緩衝材の役割をしている部分が変形し、脊髄を圧迫している状態です。
椎間板ヘルニアになると、ロボットなような歩き方をし、頸部の硬直や余裕がない様子が見られます。
椎間板ヘルニアもグレード1からグレード5までで症状が分類されます。
グレード1は、痛みだけが見られる状態です。抱っこしただけで痛みを感じたり、段差を上り下りしたりが困難となります。
グレード2は、軽度の麻痺状態で、足の力が弱くなりますが自力で立って歩けます。
しかし、グレード1と比べるとふらつきが見られるようになり、足先がひっくり返るなどの症状があるでしょう。
グレード3から5は、麻痺が強くなり立ち上がることすら困難な状態です。
足だけでなく、膀胱や肛門の機能にも影響があり、オシッコが出せなくなったりウンチを漏らしてしまったりすることもあります。
ダックスフンドやフレンチブルドッグなど、遺伝的に椎間板ヘルニアを発症しやすい犬種もいるため、注意が必要です。
今のところ有効な治療方法が見つかっておらず、完治は難しいため、痛みの緩和が治療の中心となります。
股関節形成不全
股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)とは、関節の骨が変形し、股関節とかみ合わなくなる病気です。
遺伝要因と環境要因の2つの理由により、股関節形成不全が発症します。
生まれたての際は正常な股関節でも、生後数週間のうちに股関節に変化が現れることもあります。
一方、環境要因としては、滑りやすい床による関節への負担や偏った栄養バランスで骨が成長しないことなどです。
関節内が炎症しているため、以下の症状が現れます。
- 足を引きずる
- 運動を嫌がる
- 段差を避けて歩く
ゴールデン・レトリバーやジャーマン・シェパードなどの大型犬に多く見られ、遺伝により、発症することが多いですが、発育期の環境も大きな原因となってしまいます。
関節炎
犬の関節は、蝶番のような動きをするものやすり鉢とすりこぎのように回転するものなど、形状は犬により異なります。
骨から伝わる衝撃を吸収するクッション材のような役割を持つのが関節です。
関節が外からのダメージによる関節の損傷や感染症により関節に障害が起きた場合、関節内にある関節軟骨の構造が変化してしまい、関節炎を引き起こします。
日々のダメージが蓄積することにより発症するため、飼い主様がすぐに気づきにくい病気です。
早期発見と早期治療をすれば、痛みが軽くなり、運動能力も回復しやすくなるでしょう。
レッグ・カルベ・ペルテス病
レッグ・カルベ・ペルテス病は、大腿骨の骨頭が壊死する病気です。
大腿骨の大腿骨頭に供給する血管が減少して血液供給がなくなることで、大腿骨頭が虚血して壊死してしまいます。
レッグ・カルテ・ペルテス病を発症すると、壊死した部分が骨折することもあり、立たせた状態にすると痛みを感じる足を挙げようとします。
治療の多くの場合は外科手術が必要であるため、悪化や再発しないためにも、関節に負担をかけない環境づくりを行いましょう。
愛犬がフローリングで滑らないための対策方法
床がフローリングだと、犬にとって危険があります。場合により、完治が難しい大怪我にもなりかねません。
しかし、犬のためにフローリング以外の床の家に引っ越しできる方は少ないでしょう。
以下では、犬がフローリングで滑らないための対策方法を紹介していきます。ぜひ実行してみてください。
定期的に爪を切る
犬は、爪が伸びてくると肉球が床にしっかりつかず、滑りやすいといわれています。
もともと滑りやすいフローリングで、滑り止めの役割を果たしている肉球が地面につかないと大変危険です。
爪を切られることに恐怖を感じる犬もいますが、怪我につながる可能性もあるため、定期的に爪を切ってあげてください。
足腰が弱ってくる高齢の犬は特に注意して、爪の伸び具合を見ていてあげましょう。
肉球を乾燥させない
フローリングは地面と異なり爪がスパイクにならないため、肉球が滑り止め代わりとなります。
空気が乾燥している場合、犬の肉球も乾燥しやすく、フローリングでも滑りやすい状態です。
そのため、肉球を乾燥させないために、保湿ケアしてあげなければいけません。
また、散歩の際はアスファルトとこすれて肉球が乾燥することもあるため、定期的に肉球専用のクリームやジェルでケアしてあげてください。
アトピーによる乾燥は獣医師に相談し、専用の薬を塗布してあげましょう。
滑りにくいフローリングに張り替える
滑りにくいフローリングにリフォームすることも手段の一つです。
なかにはペット対応のフローリングでオシッコによるシミがつきにくかったり、ひっかき傷にも強かったりなどのフローリングがあります。
しかし、フローリングの張り替えは数日かかることもあり、費用もかかります。
新しい環境は犬にとってもストレスがかかるかもしれないため、慎重に判断しましょう。
マットやカーペットを敷いておく
フローリングにマットやカーペットを敷いてあげると、滑って転んでしまうリスクを軽減できます。
一枚もののカーペットを敷くのが簡単です。しかし、食べこぼしがあった場合、カーペットに染み込みやすいため悪臭の原因になります。
取り外しがラクなジョイントマットは、汚れた部分だけを変えることが可能ですが、定期的な掃除が大変という難点があります。
状況に合わせて、2つを上手に使い分けると良いでしょう。
滑り止め効果のある靴下を履かせる
飼い犬に滑り止め効果のある靴下を履かせることで、怪我の予防につながります。
他にも肉球の保護や寒さ対策、災害時にも活用できるためおすすめです。
犬の爪にはめるリングも存在し、爪にゴム製のリングをはめるだけで滑り止め効果が出ます。
100均で犬用の靴下を売っていることもあるため、試してみてはいかがでしょうか。
ワックスやコーティングを施す
ワックスやコーティングを床に塗ることで、床自体が滑りにくくなるため、飼い犬が転倒する恐れを未然に防ぐことが可能です。
ワックスやコーティングを塗ることで床が傷つきにくくなるという利点もあり、賃貸物件でペットの爪痕が残ってしまうことが不安な方にもおすすめです。
段差にステップを設置する
段差にステップを設置することで、犬が段差を踏み外す危険を回避できます。
階段を飛び降りた時に衝撃を吸収してくれるため、腰や関節を痛めづらくなるでしょう。
しかし、ステップを設置するだけでは飼い犬が利用しないかもしれません。
ステップを使って段差を上り下りする練習が必要です。
犬がフローリングで滑らないようにするにはカーペットがおすすめ
犬がフローリングで滑らないようにするには、カーペットの使用がおすすめです。
カーペットを敷いてあげると、愛犬だけでなく飼い主様にとっても嬉しいメリットがあります。
以下では、カーペットを敷く利点について解説します。
カーペットが爪に食い込んで滑りにくい
犬がフローリングで滑らないようにカーペットを敷く際は、パイルカーペットがとくにおすすめです。
パイルカーペットは、犬の爪が食い込んで滑りづらくなります。
また、パイルカーペットをフローリングに敷くことで、クッション性もアップします。
クッション性がある場合、犬が歩いたり走ったりした場合でも、衝撃を吸収して足腰への負担を軽減してくれるため安心です。
騒音対策にもなる
フローリングにカーペットを敷くと、騒音対策にもなります。
フローロングの上を元気よく走ったり、穴を掘るような動作をしたり、騒音トラブルにつながる可能性があります。
とくに、マンションや集合住宅の場合は、近隣に迷惑をかけてしまうかもしれません。
しかし、カーペットを敷いておくと、犬の足音を吸収して騒音防止になります。
また、カーペットの種類により、鳴き声も吸収してくれるものもあるため、近隣トラブルが気になる方にもとくにおすすめです。
犬のニオイを防ぐ効果がある
犬にはアポクリン腺という強いニオイが出る原因である、汗を出す感染が全身にあり、体臭が気になりやすいです。
また、体臭だけでなく、排出物のニオイにより部屋中に気になるニオイが充満することもあるでしょう。
ほかにも、床に粗相したり、嘔吐したりすると、拭き取ってもニオイが残る場合もあります。
しかし、消臭機能があるカーペットを敷くと、気になるニオイを和らげる効果を期待できます。
また、洗えるカーペットを使用すれば、犬が粗相した時でも簡単にニオイや汚れを洗い流せるでしょう。
フローリングの傷防止になる
犬がフローリングの上を走ったり、穴を掘ったりするような動作をする場合、爪でフローリングが傷ついてしまいます。
賃貸住宅の場合、フローリングに傷がついてしまうと修繕する必要があり、費用も高くなってしまうでしょう。
とくに、コーティングされていない無垢材のフローリングであれば、犬の爪による傷は目立ちます。
傷が気になる時でもカーペットを敷いておくと、傷を防止することも可能です。
フローリングによるケガだけでなく、床の傷も減らしたい場合にもカーペットが効果的でしょう。
飼い犬にとって最適な環境づくりを
犬がフローリングで過ごすことは、腰や関節を痛めやすく、大きな怪我にもつながりかねないため大変危険です。
自宅でもできる対策をしっかり行い、リスクを回避してあげましょう。愛犬にとってより良い環境を整えてあげることが大切です。