ペットと暮らしていると一番気になるのがペットの健康ですよね。

ペットに健康診断を受けさせようと思っても費用が気になり迷う方もいらっしゃるかもしれません。

最近ではペット保険に加入している方も多いですが、保険に入っていれば健康診断も保険でまかなえるのでしょうか。

今回はペットの健康診断に着目し必要性や内容を詳細に解説します。健康診断に保険が使えるのかなど、健康診断の費用やペット保険に関してもお伝えします。

ペットの健康診断費に保険は使えない!

結論からお伝えすると、残念ながらペットの健康診断費にペット保険は使えません。ペット保険というのは、月々の保険料を支払えば将来ペットに治療が必要となった時、一定の費用が保険から支払われるというシステムです。

保険から支払われる割合は保険商品によって異なりますが、ペット保険は健康なペットが将来病気や怪我をした時の「治療費」に使う目的で備えるものなのです。

健康診断は治療ではありません。ペットが健康であることを前提に体の状態を確認するものなので保険の適用外です。

同じくワクチン接種もペットの病気を予防するためのもので治療費は発生しないため、保険を使うことができません。

不妊を目的とした避妊・去勢手術も治療ではないためペット保険を利用することはできません。

また、以下のような場合でもペット保険の対象外となってしまうため、注意が必要です。

  • 生まれつきの病気の治療
  • 自然災害による病気やケガ
  • 飼い主様の過失によるケガ

ただし、健康診断でペットに病気が見つかった場合、その際の治療にはほとんどのケースで保険を使うことができます。

ペットの健康診断費についての様々な疑問に回答

ペットの健康診断は多くの動物病院で行われています。そもそもペットの健康診断は必要なのでしょうか。どの程度の費用がかかり、どの程度の頻度で受ければ良いのでしょうか。

そもそも健康診断は必要か?

ペットの健康診断は基本的に受けることをおすすめします。なぜならペットは言葉で体の不調を伝えてくれないので、飼い主様が見落としてしまう不調もあるからです。

動物には、本能的に自分の体調不調を隠そうとする習性が備わっています。野生では体調不調が周囲に悟られると襲われることにつながるからです。

そのため、いくら飼い主様が注意深く観察していてもペットが不調を隠そうとするため、見抜くことは難しいのです。

もう一点、意外と忘れられがちですが、健康な状態を獣医師に把握してもらっておくのも大切です。

血液検査の結果なども健康な時のデータを蓄積すると、いざ体調が悪くなった時にどの程度変化したのかがわかりやすいです。

費用について

気になる健康診断の費用ですが、動物病院ごとに設定が異なります。平成27年に日本獣医師会が出した「家庭飼育動物(犬・猫)の診療科実態調査 調査結果」(http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin_pdf/h27.pdf )を元に、相場をご紹介します。

この調査では、健康診断の診察料で最も多いのは10,000~12,500円未満で、次に多いのが7,500~10,000円未満でした。続いて12,500~17,500円未満という回答が多い結果となっています。5,000円未満または5,0000円以上という回答もありましたが、わずかです。

一般的には、下記のような料金設定が多いと言えます。

  • 問診・触診・一般血液検査・尿検査などの一般的な健康診断:5,000~10,000円未満程度
  • 上記に加え、レントゲン検査を行う場合:20,000円未満程度

ホルモン測定を行ったり、エコー検査を行ったりするなどさらに内容を充実させた健康診断では3,0000~50,000円程度だと考えれば良いでしょう。

健康診断を受ける年齢や頻度は?

健康診断は何歳からどの程度の頻度で受ければ良いのでしょうか。

犬猫をお迎えする際、ブリーダーさんやペットショップではじめての健康診断を済ませていることが多いです。家庭にお迎えしたら、ワクチン接種などのタイミングで年に一度の健康診断がおすすめです。

年に一度は負担になるという場合も多いでしょう。それでも小型犬や猫なら5-6歳を目安に、大型犬であれば4歳を目安に健康診断を受けはじめるのが望ましいです。

いつまでも若いように見えますが、これくらいの年齢からペットは「中年期」に入ります。人でも中年期に入ると様々な体の不調が現れることがありますが、ペットも同様です。「中年期」からは年に1度の健康診断をお勧めします。

さらに年を重ねると、小型犬や猫では9-10歳で「シニア期」となります。大型犬では7歳以降で「シニア期」です。この年齢になると、年に2回健康診断をしておいた方が安心です。

シニア期に入ると、動物病院に通うことや健康診断そのものがストレスとなることもあります。獣医師とよく相談して頻度を決めるのが良いでしょう。

健康診断の検査項目について

健康診断の検査項目について

ペットの健康診断ではどのような検査を行うのでしょうか。ここでは一般的な検査項目をご紹介します。

問診

問診は、飼い主様からの聞き取りです。愛犬の最近の健康状態や気になる点について、獣医師に正確に伝えます。

病院によっては問診票を記載するところもあり、以下のような項目について聞かれることがありますため、あらかじめ準備しておきましょう。

  • 食事の内容、食欲の有無
  • 散歩の頻度
  • 排便の様子(便の固さや頻度)
  • 生活環境について
  • 体調不良の症状の有無

何か異変に気づいた時はメモなどがあると良いかもしれません。また、口頭で説明しにくい場合も、写真や動画を活用することで、より正確に愛犬の状態を伝えられます。

視診・触診・聴診

獣医師が目で見て、手で触り、聴診器で聞くことで愛犬の健康状態をチェックします。

視診により、歩き方や呼吸の異常に気づいたり、お腹を触って腫瘍に気づいたりすることもあるため、病気の早期発見のための重要な検査項目です。

聴診では、聴診器を使って胸やお腹の音を聞き、異常がないかを確認します。聴診を通して、心臓の音に違和感を持ったり、お腹の消化音がおかしかったり異常を発見できることもあります。

全身状態を獣医師の五感を使って検査することで、今後の検査の方向性が決まるため、次の検査につながる大変重要な検査項目です。

血液検査

血液を採取する検査です。血球成分からは、貧血などがわかるほか、肝臓や腎臓などの数値を測ります。

健康診断で行われる血液検査では、「血球検査」と「生化学検査」の2種類が行われ、貧血や炎症の可能性、栄養状態や疾患の有無が確認できます。

検査名検査できる項目具体的な検査値
血球検査貧血・炎症・がんなど・赤血球の数
・白血球の数
・血小板の数
生化学検査栄養状態・腎臓系疾患・脂質異常など・血液中のたんぱく質数
・コレステロール値
・腎臓から排出される老廃物数

上記のような項目を検査し、検査結果がそれぞれの項目の基準値を大きく上回っていたり、下回っていたりする場合に、病気の可能性が疑われます。

尿検査

尿検査では、腎臓や膀胱に異常がないかどうかを調べることができます。前立腺や子宮などの生殖器の不調がわかることもあります。

尿検査では、以下の3つの項目を検査し、病気の有無を特定します。

検査項目内容分かる病気の例
一般性状尿の色や臭い、透明度など、尿の外観による検査血尿・膀胱炎・糖尿病など
化学的性状尿試験紙による尿内成分の検査腎疾患・肝臓や胆道の疾患など
尿沈渣尿を遠心分離し、沈殿物を検査尿路感染症・結石・腫瘍など

尿検査は、隠された病気を発見できる重要な検査であるため、定期的に健康診断で行われます。

便検査

便検査では主に寄生虫の有無や腸内細菌のバランスなどを調べます。

多くの動物病院では、便の見た目の検査、顕微鏡を用いた検査(直接法・浮遊法)の2種類を行っていることがほとんどです。

検査方法内容
肉眼検査便の色や硬さ、匂いを確認する
顕微鏡検査(直接法)便を直接顕微鏡で観察する
顕微鏡検査(浮遊法)飽和食塩水で便を溶かし、比重の差を利用して便内の寄生虫の有無を確認する

肉眼検査では、主に便の色により病気の可能性を特定します。例えば、白っぽい便の場合は膵臓や胆のうの異常、血便の場合は大腸からの出血などが分かります。

顕微鏡検査では、直接法と浮遊法の2種類を実施し、便内の細胞成分や寄生虫の有無を確認し、消化不良の有無や寄生虫に感染していないかを確認します。

レントゲン検査

レントゲン検査は、骨や関節、心臓、肺、胃、肝臓や腎臓などの各臓器の主に大きさや形、位置の状態を確認します。誤飲してしまった異物や結石などが見つかることもあります。

レントゲン検査は痛みを伴わない上、短時間で検査が終わるため、愛犬に負担をかけないことが特徴です。

レントゲン検査を受ける場合は、餌などの胃の内容物が撮影の邪魔になる場合があるため、緊急時を除いて、検査当日は絶食するようにしましょう。

エコー検査(超音波検査)

エコー検査では、レントゲン検査ではわからない血液の動きや異物などがわかります。

心臓や腹部にエコーを当てることで、心臓の動きや収縮の様子、内臓の結石の有無が確認できるため、心臓病や腫瘍といった緊急性の高い疾患の判断に効果的な検査です。

レントゲン検査と同様、痛みはなく麻酔を必要としないため、愛犬に負担をかけないことから、多くの動物病院で健康診断の項目として実施されます。

犬がかかりやすい病気について

犬がかかりやすい病気について

犬がよくかかる病気としては以下のようなものが一例としてあります。

  • 下痢・血便
  • 歯周病・歯肉炎
  • 心臓病
  • アトピー性皮膚炎
  • 膝蓋骨脱臼

これらの病気は健康診断を受けることで早期発見が可能です。

例えば、下痢や血便といった症状は、寄生虫の感染や食物アレルギー、胃腸炎などが原因で発症するため、健康診断で便検査を行っていれば早い段階で発見・処置できます。

他にも、若年期に発症しやすい「膝蓋骨脱臼」や、高齢期にありがちな「心臓病」についても、定期的な健康診断を通じて早めに処置しておくことが重要です。

健康診断を受けて発見されたこれらの病気は、ペット保険の補償対象となる場合が多いため、もし入院や手術といった処置が必要な場合でも飼い主様の金銭的な負担を軽減します。

異常が見つかった場合は、保険を使える

健康診断を受けた時、異常が見つかり治療が必要になることもあります。そんな時心配な医療費は、ペット保険に入れば軽減されます。

早期治療でペットと元気に過ごせる時間も増えるでしょう。ここではそんなペット保険についてさらに詳しくお伝えします。

ペット保険の補償対象3つ

ペット保険の補償の対象となるものは主にこれからお伝えする3つです。

  • 通院:診療費、薬の処方代、薬の費用など
  • 入院:入院費
  • 手術:手術費や麻酔管理費用など

基本的にペット保険では、保険加入後に発生した病気やケガが補償の対象となります。

ペット保険は上記の「通院」「入院」「手術」の区分で補償内容が決まっており、どの区分を補償する保険に加入しているかどうかで、診療時の保険金の支払い有無が決定します。

例えば、入院や手術のみ補償するペット保険に加入している場合は、通院によりかかった診療費は補償対象になりません。

そのため、ペット保険に加入する際には、どの診療区分を補償対象とするかをよく検討した上で決めることが重要です。

医療以外に付与できる特約

保険会社によっては、医療にかかる補償の他に、以下の特約をオプションで付与できる場合があります。

他人を傷つけてしまった場合の損害賠償の補償

愛犬の散歩中に他人に嚙みついてケガをさせてしまった場合など、法的な賠償責任を負った際に賠償金の一部を保険金で賄える特約です。

犬用車いすの購入費用の補償

愛犬がなんらかの原因で四足歩行が困難になった場合、歩行を補助するため犬用の車いすの製作費を補償できる特約です。

ただし、車いすの製作費用は「事故」が原因に限られる場合が多く、病気による障害の場合、車いすの費用は補償されないことに注意しましょう。

葬儀・火葬費用の補償

ペットが亡くなった際の葬儀や火葬費を補償してもらえる特約です。火葬費の他に、供養のための仏具などの購入費も補償対象となります。

これらの特約は保険商品により取り扱いされていない場合もあります。

医療補償とセットで利用できるか、別途保険料の上乗せが必要かも保険会社により異なるため、複数のペット保険の内容を比較した上で特約を付けるかどうか決めましょう。

保険にはいっていなかった時の自己負担はいくらか

ペット保険にはいっていなかった場合、ペットの医療費にはどれくらいかかるのでしょうか。前述の「家庭飼育動物(犬・猫)の診療科実態調査 調査結果」も参照しながら例をご紹介します。

【骨折】

小型犬に多い前足の骨折では、手術費だけで10万円程度必要です。

前足の骨折では1週間前後の入院となるため、入院費で7万円前後かかります。検査費なども含め、退院の際に20~25万円前後の金額がかかることが普通です。

【リンパ腫(血液のがん)】

高齢犬に比較的多いリンパ種という血液のがんは、抗がん剤を投与します。

抗がん剤は高価な薬で定期的な投与が必要なため、月に数万円、トータルでおよそ50万円以上の医療費がかかることも一般的です。

このように高価なペットの医療費ですが、ペット保険に入っていることで自己負担が数千円~数万円程度に抑えられることが多く、10倍程度の費用差が出ることも多いです。

まとめ|健康診断は大切なペットを守るため

ペットは言葉にして体の不調や違和感を訴えてくれません。客観的な検査で体の状態を確認できる健康診断は非常に大切です。

健康診断そのものにはペット保険の利用はできませんが、見つかった病気の治療には使えます。いざという時のために、ペット保険に入っておくのも安心ですね。

ペットの状態によっては動物病院へ行くこと自体が負担になる場合もあります。大切なペットを守るために、家族や獣医師とよく相談して健康診断を上手に取り入れましょう。