猫の歯の健康は飼い主様にとって気になるポイントのひとつですね。
猫にも歯磨きが必要なのか、歯の健康を維持するためには何をすればいいのかを知りたい飼い主様も多いでしょう。猫は歯周病になりやすい動物なので、日々の歯磨きが欠かせません。
今回は、猫の口内のチェック方法や、歯磨きをはじめる時の具体的な方法、歯磨き以外の猫の歯のケア方法など猫の口内の健康維持に大切な点をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
おとな猫の7割以上が歯周病
意外かも知れませんが、猫が虫歯になることはごく稀です。しかし、歯周病になる可能性は大変高く、世界小動物獣医師会(WSAVA)の デンタルガイドラインによると、70%の猫が2歳までに歯周病にかかるとのことです。
歯周病は最終的には命まで脅かす危険な病気なため、猫の歯の健康維持には積極的に取り組む必要性があります。
猫は歯周病になりやすい
猫が歯周病になりやすい原因は、歯石ができやすい口内環境だということです。歯周病の原因は、歯垢の中の細菌です。歯垢は歯石に溜まりやすいため、歯石があると歯周病が発生しやすくなります。
歯石形成にかかる時間は、人の場合およそ30日と言われています。一方、猫は口内がアルカリ性に傾いているため、たった7日間程度で歯石ができます。猫は歯石がすぐにできるため、歯周病になりやすのです。
歯周病は命に関わる恐ろしい病気
猫の歯周病では、歯周組織に溜まった膿が顔の組織を溶かし、顎の骨が溶けて骨折してしまったり、顔に穴が開いてしまったりすることがあります。
さらに、病巣で増殖した細菌が血管に入って血流に乗ると、心臓や肝臓・腎臓などあらゆる臓器に付着し、心不全や腎不全など命に関わる状態になることがあります。 もちろん、歯周病の治療には全身麻酔が必要なため、猫の体に負担が大きいことや治療費が高額になることも忘れてはなりません。
日々の口のチェックと歯磨きによる予防が大切
猫の口内トラブルには、歯周病の他にも、歯肉口内炎、歯の吸収病巣などが挙げられます。
猫は体調不良を隠す動物なので、飼い主様が気づいた時にはこれらの病気が進行している可能性もあります。日々の歯磨きを通し歯の健康状態をチェックして、病気の早期発見を目指しましょう。
愛猫の口の健康チェックをしてみよう
猫の口の健康チェックを行う際は、口臭が強くないか、よだれが垂れていないか、歯肉に赤みがあったり腫れや出血などがないかどうかを確認しましょう。
歯並びがおかしくないかどうかも大切なポイントです。猫が口を触られることに慣れていない場合は、口を触られることに慣らすところからはじめましょう。
フードを食べているところをよく観察することも大切です。食べこぼしが多かったり、どちらか片側の歯のみを使っていたり、硬いフードを避けるようになっていないかどうかも確認しましょう。
猫の歯の健康にも「歯磨き」は効果的!
歯周病の原因となる歯石は、歯に歯垢が付着することで形成されます。歯垢は歯磨きでしが除去できないため、歯の健康維持には歯磨きが必要です。
ここでは、猫の歯磨きの開始時期や、歯磨きの頻度、使う道具などをご紹介します。
歯磨きは子猫のうちから
歯磨きを始める時期に明確な決まりはありません。一般的には、成猫よりも子猫の方が歯磨きに慣れやすいため、子猫をお迎えした場合はできるだけ早い段階で歯磨きを習慣化しましょう。
猫の歯は、およそ生後3カ月から6カ月のあいだに永久歯に生え替わります。可能であれば、完全に永久歯に生え変わる生後半年前後には歯磨きを習慣化しておきたいですね。
歯磨きの頻度
歯に付着した直後の歯垢は簡単に歯磨きで取り除けます。そのため、理想的な歯磨きの頻度は1日1回です。
どうしても忙しいという場合でも、最低3日に1回は歯磨きを行いましょう。これ以上の時間が経過すると、歯垢がどんどんベトベトして、取り除くのに時間がかかり、猫が歯磨きを嫌いになる可能性が高いです。
猫用の歯ブラシや歯磨き粉を使う
歯磨きの際は、猫専用の歯ブラシや歯磨き粉を使用しましょう。猫の口は小さいため、人用のものは使えません。市販の歯ブラシにはさまざまな形状の商品があります。愛猫に合わせて選びましょう。
猫と人では口内環境が異なります。歯磨き粉も、猫用のものが必要です。人用の歯磨き粉には、猫にとって有害な成分が含まれる可能性があるため絶対に使用してはいけません。
猫の歯磨きの方法
猫は口周りを触られることを好まないため、歯磨きができるようになるまでのハードルがやや高いと言えます。ここでは、猫の歯磨き方法について段階的にお伝えします。
STEP1:口に触られることに慣れさせる
まずは口周りを触られることに慣れさせましょう。猫がリラックスしているときや、まどろんでいる時などに口に触れ、触れたらご褒美のおやつをあげます。 触られることに慣れてきたら、唇をめくったり、口周りをもむなどの練習を、おやつを利用しながら行いましょう。
STEP2:指で歯や歯肉に触れられることに慣れさせる
口周りを触れても、突然歯ブラシを当てると嫌がる猫は多いです。はじめに、飼い主様の指で歯や歯肉に触れる練習が必要です。この時も、触らせてくれたらご褒美を与えます。
触られることに慣れてきたら、指先に猫用歯磨きペーストを付けて、歯に付ける練習も行います。飼い主様の指にガーゼなどを巻き付けて指磨きの練習も行いましょう。
STEP3:歯ブラシに慣れさせる
歯ブラシ自体が怖い猫も多いため、歯ブラシを常に猫が見える位置に置いておき、危険なものではないことを覚えてもらう必要もあります。
歯に当てる時は、猫が自分で歯ブラシを舐めてくれるように、歯ブラシにおやつをつけてみたり、猫の好きな味の歯磨き粉をつけておくと良いでしょう。どうしても歯ブラシが怖いときは、まずは綿棒などで試してみましょう。
STEP4:口を開けて歯磨きする
上のステップまでができるようになったら、いよいよ本格的に歯磨きを行います。歯磨きペーストを付け、少しずつ歯ブラシを動かして外側の歯から磨きましょう。
口を開ける際は、上あごの犬歯の後ろ側を、人差し指と親指で持ち、優しく巻き込むと上手にできます。歯の外側を嫌がらないようなら、歯の内側も磨いてみます。
猫が歯磨きを嫌がったら?便利な代用品をご紹介
上でお伝えしたように、猫の歯磨きまでのハードルはやや高いと言えます。ここでは、歯磨きに慣れるまでの間や、どうしても猫が歯磨きしてくれない場合に使える歯磨き以外のデンタルケア用品をご紹介します。
飼い主様の指で歯を触れる場合は、指サック型の歯磨きシートが便利です。ジェルタイプの歯磨き粉を併用すると、さらに効果も高くなるでしょう。猫用の歯磨きガムも市販されています。猫が遊びながら歯のケアをできる歯磨き用おもちゃも良いでしょう。
ただし、これらの代替商品では、残念ながら完全に歯垢を落とすことはできません。歯磨きガムなどは、商品によってはカロリー過多となり、肥満の原因になることもあります。代替品を利用しながら、しっかりと歯磨きができるようになることを目指しましょう。
定期的に動物病院でも歯をチェックしてもらおう
歯の健康維持のためには、動物病院との連携も大切です。定期的に動物病院で歯科健診を受けることで、飼い主様だけでは気づけないトラブルの早期発見につながることもあります。
動物病院では、家庭での歯磨きでは取り切れない歯石除去も可能です。すでにできてしまった歯石は、放置するとさらなる歯石の形成につながるため、獣医師と相談し、必要に応じて除去をしましょう。
歯の健康維持は体全体の健康維持につながる
記事でもご紹介した通り、歯周病は単なる口内のトラブルだということだけではなく、心臓や腎臓など体全体の健康にも影響する病気です。歯周病を防ぐことは、猫の体全体の健康維持のためにも重要なのです。
ただし、無理に歯磨きをしようとすると、猫が歯ブラシを見ただけで逃げてしまうということにもなりかねません。今回ご紹介した歯磨きまでのステップも参考に、根気よく歯磨きができるようにしていきましょう。