猫と生活していると「なぜこんなに毛が抜けるのだろう」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
猫の抜け毛が一番多いのは「換毛期」です。抜け毛を放置すると、猫本人や飼い主様の健康にも影響するため対策をしなければなりません。
本記事では、猫の抜け毛の原因や、猫種と抜け毛の関係、抜け毛によるトラブルなどを解説します。有効な対策方法や、部屋や服に付いた抜け毛を掃除する際のポイントもお伝えするため、是非参考にしてみてください。
目次
猫の抜け毛の原因4つ
そもそもなぜ猫の抜け毛は多いのでしょうか。はじめに、猫の抜け毛が多い理由についてお伝えします。
換毛期
猫には「換毛期」という、気温の変化に合わせて毛が生え変わる時期があります。基本的には、春と秋に6週間~2か月くらい続きます。冬の間、寒さを防いでいた被毛が抜け落ちて、夏の間さっぱり過ごせる被毛になるためです。
換毛期は、ダブルコートと呼ばれる下毛を持った種類の猫ではっきりと表れます。しかし、室内飼いの猫ではエアコンや暖房の影響により、換毛期の時期がはっきりしないことも多いでしょう。
病気
病気でも抜け毛が多くなることがあります。抜け毛が発生する病気としては、以下が考えられます。
- 皮膚への細菌感染
- 真菌感染(皮膚糸状菌症)
- ノミアレルギーなどのアレルギー
- 疥癬などの外部寄生虫感染
- 自己免疫疾患
- ホルモン異常
病気の場合は、抜け毛と一緒にフケや湿疹、かゆみなどの症状が併発しやすいため、抜け毛が増えたら病気ではないかをチェックしましょう。
ストレス
猫は、環境の変化など些細なことでも、ストレスに感じやすい生き物です。換毛期でないのに、抜け毛が多くなったらストレスが原因かもしれません。例えば、引っ越しや同居猫が増えた、来客があったなど、猫のストレスの原因になります。
手や足などの特定の場所を舐める仕草や部分的な脱毛は、ストレスにより起こりやすいため、なるべく早くストレスを取り除いてあげてください。また、ストレスによる過度な毛づくろいにより、心因性脱毛などの病気を併発することもあります。
栄養不足
皮膚や被毛を健康に保つためには、栄養が必要です。栄養が足りていない場合やバランスが悪い場合には、抜け毛が増えることがあります。
猫用の総合栄養食を与えている場合は心配ありませんが、手作り食の場合、ビタミン類やたんぱく質が不足すると、抜け毛につながる可能性もあります。特に皮膚や被毛を健康に保つには、たんぱく質が重要です。食事の内容を見直してみましょう。
健康を守るための抜け毛対策4つ
抜け毛の放置は、さまざまなトラブルの原因となります。猫と人の健康を守るためにも、抜け毛対策は必要不可欠ですが、忙しくこまめに掃除するのが難しい方もいらっしゃるでしょう。
抜け毛は抜け落ちる前に対策をすることで、ある程度の量を抑えることができます。ここでは抜け毛への対策方法を4つご紹介します。
シャンプー
猫は水に濡れることを大変嫌がります。獣医師からの指示がない場合、シャンプーは必ずしも必要がありません。ただし、シャンプーをすると、人の猫アレルギーの原因となる物質が一時的に減ることがわかっています。
猫アレルギーを持った方の来客などがある場合は、シャンプーをすることでアレルギー症状が出にくくなる可能性もあります。シャンプーが負担になる猫の場合、濡らしたタオルなどで体を丁寧に拭くだけでも効果を感じられるでしょう。
サマーカット
長毛種の場合、夏の暑さ対策も兼ねて被毛を短く刈るサマーカットという手段もあります。サマーカットにすることで、抜け毛のお手入れも簡単になりますが、デメリットもあります。
例えば、紫外線による皮膚炎である「日光性皮膚炎」を起こすことや、刈った毛が伸びてこなくなることもあります。猫自身が強いストレスを感じることもあります。サマーカットは獣医師やトリマーとよく相談して検討しましょう。
食事の見直し
栄養が関わる脱毛に関しては、フードの見直しが必要です。手作り食の場合、ビタミンAやEなどのビタミン類やたんぱく質、脂質などをバランスよく含むレシピを考える必要があります。
栄養学などの専門知識が必要なため、栄養性の抜け毛が認められる場合には、動物病院で市販の猫用フードに切り替えることを勧められることも多いでしょう。最近では抜け毛下対策用の猫用フードも売られています。
ブラシやコームでのブラッシング
ブラッシングで抜け毛をこまめに取り除くことで、皮膚炎や毛球症の予防になります。飼い主様の猫アレルギー発症のリスクも緩和されるでしょう。
猫のブラッシングには、コームやスリッカーブラシ、ラバーブラシなど色々な道具があります。被毛のタイプによってこれらを使い分け、毛の流れに沿って優しくブラッシングしましょう。耳の後ろや脇、お尻に周辺などは毛玉ができやすいため、特に丁寧に行うと良いでしょう。
猫の抜け毛を取り除くためのブラッシングに慣れさせるコツ
猫の抜け毛を取り除くために、ブラッシングは非常に重要です。しかし、多くの猫がブラッシングを嫌がります。以下では、ブラッシングに慣れさせるコツについて解説します。
ブラシに触れさせる
まずは、ブラシを猫に触れさせて、慣れさせることが重要です。ブラシを手に持って、猫の顔や首に軽く触れてみましょう。
猫が嫌がらなければ、少しずつ毛の流れに沿ってブラッシングしてみても問題ありません。嫌がる素ぶりがあれば、まずは猫の近くにブラシを置いて様子を確認してみてください。
ブラッシングを短時間してみる
最初は、ブラッシングを短時間で終わらせるようにしましょう。猫が嫌がったり、ストレスを感じたりする前に、ブラッシングを終了するとよいでしょう。ブラッシングは不快なものではないと猫に覚えてもらうためです。
ご褒美をあげながらブラッシングを行う
ブラッシングが終わるたびに、ご褒美をあげましょう。ご褒美をあげることで、猫はブラッシングを良い経験として覚えやすくなります。
少しずつブラッシングすることで、猫はブラッシングに慣れていきます。無理にしようとせず、猫のペースに合わせて、ゆっくりと行いましょう。
抜け毛が多い猫種と少ない猫種
猫の抜け毛の量は、猫の種類によっても異なります。猫の被毛には「ダブルコート」と下毛のない「シングルコート」があります。さらにそれぞれ長毛種と短毛種に分けられます。ここでは抜け毛が多い猫種と比較的抜け毛の少ない猫種をご紹介します。
明確な換毛期があるダブルコートの猫種
抜け毛が多い猫種は、ダブルコートの猫です。ダブルコートは下毛(アンダーコート)と上毛(オーバーコート)の2層構造で、短い下毛を長めの上毛が覆います。換毛期に下毛が生え変わることで気温の変化に適応するため、抜け毛が多いのが特徴です。
ダブルコートの代表的なのは以下の猫種です。
- 日本猫(雑種)
- アメリカンショートヘア
- スコティッシュフォールド
- ノルウェージャンフォレストキャット
- ラグドール
抜け毛が少ないシングルコートの猫種
ダブルコートの猫と比較して、被毛に下毛がなく、1層構造のシングルコートの猫は、抜け毛が少ないでしょう。
抜け毛の量は、毛の長さや体の大きさによっても異なりますが、比較的抜け毛が少ないとされているのは、以下の猫種です。
- シンガプーラ
- シャム
- オリエンタルショートヘア
- ベンガル
- ターキッシュアンゴラ
- メインクーン
抜け毛が少ないと言われるシングルコートですが、全くお手入れをしなくても良いというわけではありません。特に長毛種の場合は、定期的なブラッシングが必要です。
猫の抜け毛の放置は健康トラブルの元
猫の抜け毛は放置しても大丈夫なのでしょうか。
抜け毛の放置は、猫本人にも飼い主様にもトラブルを引き起こす可能性があります。ここでは、抜け毛原因で引き起こされる可能性があるトラブルについてお伝えします。
猫の皮膚炎や毛球症
特にダブルコートの長毛種で多いのが、抜け毛が落ち切らずに皮膚の上でフェルト状にかたまり、その下の皮膚が炎症をおこすトラブルです。
猫は普段から自分の体を毛づくろいをして、飲み込んだ毛を吐き出したり便と一緒に排出したりしています。飲み込む毛があまりに多い場合、毛が消化管に蓄積されボール状にかたまって「毛球症」になる可能性があります。毛玉の塊の大きさによっては、腸に詰まってしまうこともあるため注意が必要です。
猫の毛玉による胃炎や食道炎
胃腸の中で塊になった毛玉を吐き出すために嘔吐を繰り返していると、胃炎を起こすことがあります。また、嘔吐によって逆流した胃酸が食道を傷つけ、食道炎も引き起こすことがあるでしょう。胃炎や食道炎は食欲の低下につながります。
ハウスダストによるアレルギー
床に落ちている抜け毛の上を歩いたり、家具についた抜け毛を払ったりすると抜け毛と一緒にハウスダストも舞い上がります。ハウスダストを吸い込むとくしゃみや鼻水、喘息などのアレルギー症状が出るため、こまめな掃除が必要です。
ハウスダストは人だけでなく、猫にも影響を与えます。猫は人に比べて低い位置で生活しているため、ハウスダストを吸い込むことや目に入ってしまいやすいでしょう。
また、人は比較的猫アレルギーになりやすい生き物です。猫の抜け毛を掃除せずに放置すると、毛に付着したフケによって飼い主様がアレルギーを起こす可能性があります。一度猫アレルギーを発症すると、花粉症などと同様に完治させることはできません。
効果的な猫の抜け毛掃除のポイント
換毛期などの大量の抜け毛の処理は、飼い主様にとっては大変ですね。お部屋の抜け毛だけでなく、洋服などに付着した抜け毛に悩むことも多いでしょう。ここでは、抜け毛掃除のポイントをお伝えします。
部屋のものを減らす
お部屋に出ている物を極力減らし、抜け毛が入り込む場所や付着する場所を少なくしましょう。平面であれば、掃除もしやすいです。
また、ものの収納場所を決め、しまう習慣をつけてください。いちいちものを動かしたり、片付けたりする手間がなくなり、こまめな掃除がしやすくなります。
掃除機をかける前に霧吹き
抜け毛は掃除機の排気で舞い散りやすいため、掃除機をかける前に霧吹きなどで軽く湿らせると良いでしょう。床がなんとなく湿ったら抜け毛を集めて、掃除機で吸い込むと良いです。
また、フローリングの場合、ペーパーモップなどで毛を集めるのがおすすめです。絨毯は、1度掃除機をかけただけでは完全に毛が吸えないこともあります。畳の場合は溝の上で数秒立ち止まり、ゆっくりしたスピードを心掛けながら掃除機をかけましょう。
布製品にはゴム手袋
ソファなどの布製品やキャットタワーなどについた抜け毛は、ゴム手袋を使用すると簡単に集められます。
ゴム手袋をはめて撫でるだけで、ゴム手袋の表面に抜け毛が付着するため便利です。細かい部分や掃除機をかけにくい部分には、粘着ローラーも活用できます。
毛の付きにくい素材の服を着る
面素材の服や表面がツルっとした生地の服は毛が付着しにくいです。毛がつきにくい服を着れば、掃除や洗濯がラクになります。服の上から羽織れるチュニックやエプロンを猫の世話をする際に使用するのもおすすめです。
もし洋服に付いた毛がついたら、粘着クリーナーなどでこまめに取り除きましょう。洋服に、あらかじめ静電気防止効果があるスプレーや柔軟剤などを使っておくと有効な場合もあります。
毛の付いた洋服を洗濯する際は、ランドリースポンジを活用すると、洗濯中に毛を集めてくれるためおすすめです。
ペットの毛対応の空気清浄機
空気清浄機の中には、空気中に舞う抜け毛を吸ってくれるタイプがあります。フィルターのメンテナンスは必要なものの、床に散らばる抜け毛が減り日々の掃除がかなりラクになるでしょう。抜け毛だけでなく、アレルギー対策にも効果があります。
猫の抜け毛に悩まないための部屋作りをしましょう
室内飼いしている場合、換毛期で大量の抜け毛を落とすため、掃除の手間が増えて悩む飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
猫や飼い主様にとって快適なお部屋にするためには、掃除の手間を少なくする仕組みを作る必要があります。以下では、猫の抜け毛に悩まないための部屋作りのポイントを解説します。
掃除しやすい素材のインテリアに変更する
猫の抜け毛は繊維素材の内装や家具につくと、非常に取り除きにくくなります。カーペットやソファなどに毛が絡みつくと、掃除に負担がかかるでしょう。
そのため、繊維素材のものをなるべく使わないようにすることがおすすめです。たとえば、カーペットをクッションフロアにしたり、ソファを布張りのものから合成皮革にしたりしてみましょう。掃除にかかる時間が減らせます。
猫の専用部屋を作る
猫の抜け毛の掃除をラクにするには、猫専用の部屋を設けるのも一つの方法です。以下のものを一部屋にまとめてみましょう。
- キャットタワー
- トイレ
- 食事スペース
猫専用の部屋を中心に過ごすと、抜け毛が散らばる範囲を狭められます。猫から目を離せないとお悩みの方は、自室をパーテーションで区切ってみる方法もおすすめです。
断熱対策をする
換毛期による猫の抜け毛に悩んでいる飼い主様は、部屋の温度差をなくすことで改善できるかもしれません。
換毛期は、寒暖の差によって体温を調節するために猫の毛が抜ける現象です。そのため、室内の温度を一定に保つことで、寒暖の差がなくなり、換毛期が訪れにくくなります。
まとめ
今回の記事では、猫の抜け毛に着目し、猫の抜け毛の原因や、猫種と抜け毛の関係性などをお伝えしました。
猫との生活の中では、抜け毛とのつきあいは避けて通れません。猫本人や飼い主様自身の健康のために、抜け毛の掃除はこまめに行いましょう。ブラッシングは、抜け毛対策になるだけでなく、猫の血行を促進し、スキンシップの時間にもなるためおすすめです。