猫との生活のなかでは、愛猫が体調を崩してしまうこともありますね。「もしも愛猫が急に倒れて動かなくなったらどうしよう。」と心配な飼い主様もいるでしょう。

いざというときに、落ち着いて愛猫の命を救えるように、猫が動かなくなった場合にどのような初期対応をすべきなのか、心臓マッサージのやり方、人工呼吸のやり方などをあらかじめ知っておくことが大切です。

今回の記事では、猫に意識があるかどうかを確認する方法や、心肺蘇生法、猫の心肺蘇生で注意すべき点などを解説します。

心臓マッサージの前に猫が動かなくなったら確認すること

猫が倒れて動かないからと言って、すぐに心臓マッサージをすべきではありません。まずは意識があるかどうかなどをしっかりと見極めましょう。

大声で呼びかけ刺激を与える

猫が動かない場合、大声で呼びかける、体を叩いたりつねったりするなどして、少しでも反応があるかどうかを確認しましょう。

また、口をあけて中を確認するのも意識があるかどうかの見極めに有効です。口をあけて口の中に手を入れるなどしても全く反応がない場合は意識がないことが多いでしょう。多少でも意識があれば、なんらかの方法で嫌がる素振りがみられるはずです。

口を開けたら、何かが喉に詰まっていないかなどを確認することで意識がない原因を探れることもあります。

体温を確認する

猫の平熱は38度から39度程度で、人よりも1度~2度高いです。そのため、触ると温かいと感じるはずです。もしも温かさを感じることができなければ体温が低下しており、冷たく感じれば心臓が止まっている可能性もあります。

毛で確認が難しいと感じる場合は、猫の内股の付け根など、毛の薄い部分を触ってみましょう。普段使っている体温計があれば迅速に測りましょう。

呼吸状態を確認する

猫の呼吸があるかどうかを確認するためには、耳を猫の鼻と口のあたりに近づけ、呼吸音を聞きましょう。手を口元に近づけて空気を感じることでも呼吸があるかどうかがわかります。また、ティッシュペーパーを猫の口元に垂らして揺れるかどうかでも確認ができます。

これらで息を感じ取れない場合は、腹部を観察し、少しでも動きがあるかを確認します。しっかり観察するためには、猫のお腹だけでなく全身を見ることができる位置まで自分の体を離します。呼吸が非常にゆっくりになっていることもあるため、最低でも1分くらいは静かに確認を続けましょう。

心拍・脈拍を確認する

猫の左胸あたりを触って、心拍を確認します。耳を近づけて音を聞いても良いでしょう。心臓が動いていれば「ドックンドックン」という人と同じような心音が聞こえるはずです。呼吸と同様、心臓も非常にゆっくりな動きになっていることもあるため、最低でも1分は確認を続けましょう。

猫の後ろ足の血管を触り、脈拍があるかどうかを確認することもできます。猫の後ろ足の内股の中心あたりには、太い血管が走行しているため、指でそっと触ると脈を感じることができます。ただし、慣れていない方には少し難しいかもしれません。

かかりつけの病院に連絡する

これらの確認を行ったら、動物病院に連絡しましょう。現在の意識はあるのか、体温は感じられたか、呼吸はあるか、心臓の動きは確認できたかなどを伝えると良いでしょう。かかりつけの病院が開いていない時間帯に緊急事態がおこる可能性もあるため、あらかじめ近隣に24時間対応の救急病院などがないかどうかをチェックしておくと良いでしょう。

猫の胸部圧迫(心臓マッサージ)の方法

猫の呼吸が確認できず、心臓の動きも止まっている場合は、飼い主様による心臓マッサージと人工呼吸を行いましょう。ここでは心臓マッサージの具体的な方法をお伝えします。

猫の心臓の位置を確認する

まずは猫の左側を上にして横向きに寝かせ、心臓の位置を確認します。猫の肘を関節に沿ってそっと曲げてみて、猫の左肘に隠れるあたりが心臓です。心臓の位置は、体格など、個体によっても多少異なることがあるため、かかりつけの病院で愛猫の心臓の位置を聞いておくと良いでしょう。

胸部を圧迫する

人の心臓マッサージでは、自分の全体重を乗せるのが基本ですが、猫では体格に応じて、方法が2つあります。

一つ目の方法は、子猫や体重が3Kg以下くらいの小柄な猫の場合です。自分の左手の上に、猫の胸のあたりを乗せるようにして持ち、猫を乗せている左手の親指を、猫の心臓に当てるイメージで圧迫するやり方です。

もう一つの方法は、体重が3Kg以上ある体格の猫の場合です。寝かせたままの状態で、心臓のあたりに手を置いて圧迫します。左右どちらかの手を開き、その上にもう片方の手でこぶしを作って添え、両手で圧迫します。

どちらの方法でも、心臓そのものを押すというより、肋骨ごしに胸全体を押すというイメージで行うと良いでしょう。

猫の胸部圧迫(心臓マッサージ)のリズムや回数

心臓マッサージを行う速度は、1分間に100回程度(10秒間に15回程度)を目安とします。これは、もともとの猫の心臓の動くスピードと同じような速さです。胸部を2〜3cmほど沈めるように押す、戻るを繰り返し、30秒ほど行なった後に次に紹介する人工呼吸を行ないます。呼吸が戻るまで心臓マッサージと人工呼吸を繰り返します。

猫の人工呼吸の方法

蘇生のためには心臓マッサージと共に人工呼吸が必要です。ここでは人工呼吸の方法をお伝えします。猫の場合、口からではなく鼻から息を吹き込むことを覚えておきましょう。

まずは気道を確保する

まずは空気の通り道である気道をしっかりと確保します。心臓マッサージと同様に、左側を上にして猫を横たわらせ、首をまっすぐ伸ばし、空気が通りやすい状態を作ります。

猫の口をあけて、舌を引っ張って口角から外側に出します。舌は比較的強い力でひっぱらないと、すぐに喉の奥に引っ込んでしまいます。そうすると人工呼吸をしても舌で気道がふさがってしまうため、思い切り引っ張って、引っ張った状態を維持しましょう。

喉に何かが詰まっている場合は取り出してから人工呼吸を行いましょう。詰まっているものが確認できても取れない場合は、人工呼吸はせずにすぐに動物病院に運びます。

一時的に気道を塞ぐ

冒頭でお伝えした通り、猫の場合は鼻から息を吹き込みますので、猫の下あごを大きく掴み、口を塞いで一時的に気道を塞ぎます。

猫の肺へ息を吹き込む

猫の鼻から、「ふー」と1秒くらいかけてゆっくり息を吹き込みます。猫の肺を風船に見立て、風船を膨らませるイメージが良いでしょう。息は2〜3回吹き込みます。

上で伝えしたように、30秒くらい心臓マッサージを行い、2~3回人工呼吸をすることを繰り返し、このセットを2~3回繰り返したら一度呼吸や心臓の動きを確認します。反応が見られない場合は再度繰り返しましょう。

猫の心臓マッサージや人工呼吸で注意すること

蘇生のための心臓マッサージと人工呼吸ですが、注意も必要です。

心拍が確認できたら心臓マッサージはしない

心臓マッサージには骨折や内臓損傷のリスクもあります。心臓が停止している状態であればやむなく行う必要がありますが、心臓が動いているのであれば体へのダメージを与えるだけになります。猫が倒れていても、心拍が確認できるのであれば、すぐに動物病院に行きましょう。

蘇生によるリスクも把握する

心臓マッサージは、猫自身に肋骨骨折などのリスクがあります。また、体液を介して飼い主様もなんらかの病気に感染する可能性もあります。

激しく吐いていたり、出血が多い場合は心臓マッサージや人工呼吸のリスクの方が大きい場合もあるため、動物病院に連絡して蘇生を試みる方が良いかどうか聞いてみると良いでしょう。

一方で、自宅の家電などで感電した場合などは、迅速な心臓マッサージで救命することが可能かもしれません。リスクも把握しながらできるだけ落ち着いて対応することが大切です。

講習などを受けてあらかじめ緊急事態に備えよう

今回は、猫の心臓マッサージや人工呼吸についてお伝えしました。飼い主様としてはあまり想像したくない事態ですし、いざその時になったら動揺してしまう可能性も高いです。

緊急事態に備え、予め動物病院で蘇生方法を習っておくと良いでしょう。また、愛玩動物救命士などの資格を持った人が講習を行っていることもあります。機会があれば参加してみるのも良いですね。