猫と暮らす飼い主様のなかには、愛猫が病気や老化によって食事を摂らなくなったため、強制給餌の方法を知りたいという飼い主様もいらっしゃるかもしれません。いつか強制給餌が必要になるかもしれないから、今のうちに知っておきたいという方もいるでしょう。
今回の記事では、強制給餌に必要なものや下準備、具体的な手順を紹介し、強制給餌のポイントも解説します。強制給餌が必要な飼い主様はぜひ参考にしてみてください。
目次
猫の強制給餌とは?
強制給餌とは、自分で食事を摂らないペットに対して、人間が指やシリンジを利用して強制的に食事を与える方法です。
一般的には、普段食べているフードをふやかしたり、専用の流動食を利用して、液体や液体に近いドロドロの状態にした食べ物を、指やシリンジなどを利用して口に入れて食べさせます。強制給餌を行うことで、病気と闘う体力を取り戻したり、食欲自体を取り戻せる可能性があります。
強制給餌の目的
病気などで食欲不振に陥った場合、絶食状態が続くと消化管の動きが鈍り、より食欲がなくなるという悪循環に陥ります。そのまま絶食するとどんどん体力が奪われますし、猫の場合は「肝リピドーシス」という命に関わる状態に移行することもあります。
これを避けるために強制給餌を行って体力をつけたり、消化管を動かすことで食欲増進をはかります。猫が食べ渋りをしているだけの場合、強制給餌がきっかけになって自発的に食事を再開することもあります。
ただし、強制給餌による食事は本来の病気の根本治療とは異なります。まずは栄養をつけて体力を回復させ、治療を乗り切る手助けをするのが強制給餌の大きな目的なのです。
猫の強制給餌に必要な準備
ここでは強制給餌に必要なものや下準備についてご紹介します。
必要なもの
強制給餌をはじめる際には、下記を準備しましょう。
- ドライフードやウェットフード
普段食べているフードなど愛猫の食欲がそそられるフードを選びましょう。 - お湯(熱湯ではなくぬるま湯で良い)
- フードをすりつぶすためのすり鉢やミル
わざわざ用意できなくても、スプーンなどを利用することもできます。 - シリンジ(シリンジを使う場合)
- バスタオル
猫の体をすっぽり覆える大きさのものがおすすめです。 - おしぼりや濡らしたタオル
猫の顔回りや体を拭くためのものなので、冷たいものではなく温かい状態のものを用意しましょう。
強制給餌の下準備
猫の強制給餌の前には以下のような下準備を行なう必要があります。
① フードをふやかしペースト状にする
ドライフードの場合、適量のお湯でふやかします。ふやかしたフードをすり鉢やミルを使ってなめらかなペースト状にします。ウェットフードの場合はふやかさずにそのまますりつぶすだけでも良い場合が多いですが、必要ならお湯を少し足します。
あまり水分が多すぎると、せっかく強制給餌しても水分ばかりでお腹がいっぱいになってしまいます。猫が飲み込むのにそれほど苦労しない程度の水分量に加減しましょう。また、作り置きはせずに食事のたびに新鮮なものを用意する方が衛生的です。
② 猫の爪を切る
強制給餌の際は、猫が嫌がって暴れることがあります。飼い主様や猫自身が怪我をしないように、あらかじめ爪切りをしておくと良いでしょう。
③ 猫を保定する
保定とは、猫が動かない状態に抑えることです。抱っこするだけでは嫌がることも多いため、バスタオルで猫の体をしっかり巻き、そのうえで抱きかかえるとやりやすいでしょう。
猫に強制給餌を行なう2つの方法
実際に強制給餌を行う際には、大きくわけて指を使う方法とシリンジを使う方法があります。ここでは両方について詳しく解説します。
指を使う方法
飲み込む力のある猫や、与えるフードが比較的硬めのペーストの場合、指を使った強制給餌を行うことが可能です。指を使う場合の手順は下記となります。
1. ペースト状のフードを指に取る
2. 反対の手で猫の口を開ける
3. 猫の口に指を入れ、上顎にフードを塗って指を口から出す
猫の口を開ける際は、猫の口の両端に上から指をひっかけるとやりやすいでしょう。
ただし、猫の口の中に指を入れることになるため、猫があまりに嫌がる場合などは噛まれる危険もあるため避けましょう。猫が自分で舐めてくれるようなら、まずは猫の鼻先に少しフードを塗ってみましょう。猫が美味しいと感じるとおとなしく口に入れさせてくれることもあります。
この方法で食べるようになって少し食欲が戻ってくると、飼い主様が口の中に指を入れなくても、指を近づけると猫が自分の舌を動かして食べてくれるようになることがあります。そのうち指ではなくてスプーンなどで与えることができるようになり、皿から直接食べてくれるようになることも期待できます。
シリンジを使う方法
飲み込む力が弱い場合や、与えるフードがほとんど液体に近いような場合や、指でフードを与えても吐き出す場合にはシリンジを利用した強制給餌が有効です。手順は下記の通りです。
1.シリンジにペースト状のフードを入れる
2.シリンジの先端を猫の口の脇から入れる
3.シリンジを押して、猫が飲み込んでいることを確認しながら少量ずつフードを与える
この時、シリンジの先端を猫の口の真正面から入れると、歯が邪魔になったり、舌で押し戻されてしまって上手に与えることができません。必ず猫の口の脇から入れるようにしましょう。
また、シリンジの場合、一気に大量のフードが入ってしまって猫が誤嚥する可能性があるため、注意が必要です。飼い主様の手の大きさに合わせて利用しやすいサイズのシリンジを選ぶことも大切です。
猫の強制給餌のポイント
強制給餌は初めて行い場合は難しいと感じることもあるかもしれません。ここでは強制給餌がやりやすくなるようなポイントをご紹介します。
正しい姿勢で行なう
強制給餌の際に一番怖いのは誤嚥による誤嚥性肺炎です。仰向けの体勢は誤嚥するおそれがあるためNGです。うつ伏せに近い体勢を取りましょう。可能であれば、普段通り4本の脚を地面につけた状態や、お座りの状態がやりやすいでしょう。また、立たせるような姿勢でもかまいません。
呼吸の状態を観察する
猫が自発的に食事を摂る場合、誤嚥しそうになると咳をして吐き出すことができます。しかし、強制給餌の場合は与えたフードが気管に入りやすくなり危険です。
また、病気などで体力が落ちている猫の場合、保定によるショックをおこす可能性もあります。強制給餌を行っている間は、猫の呼吸の様子をしっかり観察して、少しでも苦しそうなそぶりがみられたらただちに強制給餌を中止しましょう。
1回に与える量に注意する
強制給餌が必要な猫の多くは消化機能が低下していて、一気にフードを与えると消化しきれなかったり吐き出してしまい、余計に体力を奪ってしまうおそれがあります。最終的には、1回に与える量は20ml~25mlが可能ですが、はじめのうちは、1回に与える量は5ml程度にとどめておき、少しずつ量をふやしていくようにしましょう。
コツさえ掴めばそれほど難しくない!
今回は猫の強制給餌について、準備するものや手順などを詳しくご紹介しました。はじめて行う場合は難しく感じる強制給餌ですが、コツを掴めばそれほど難しいわけではありません。
猫の方も初めは驚いて嫌がるものの、フードが美味しいことに気づくと喜んで食べてくれる場合が多いです。もしも心配な点があれば、動物病院に相談してみるのも良いでしょう。いずれまた猫が自分でご飯を食べられることを目指して強制給餌を行っていきましょう。