愛犬との時間のなかで「なんだか以前より水を飲む量が増えたような気がする」と気づくことがあるかもしれません。
犬の正常な飲水量がどの程度なのか、犬が水を飲みすぎる原因や考えられる病気について知りたい方も多いでしょう。
今回の記事では、犬が1日に飲む水の量の目安や、水を飲みすぎる場合に考えられる原因について解説します。愛犬の飲水量に不安がある方はぜひ参考にしてみてください。
目次
いつもより飲む水の量が増えていたら注意が必要!
水は食べ物の栄養を吸収しやすくしたり、血液やリンパ液として体に必要な物質を運んだり、老廃物の排泄にも関わります。また、体温を一定に保つ役割なども果たしており、すべての動物の生命活動にとって絶対に欠かせない物質のひとつです。
そのため、犬も日常的に水を飲みますが、飲む量がいつもより急に増えた場合には注意が必要な場合もあります。
犬にとって正常な飲水量というのはどれくらいのものでしょう?
もちろん、気候や運動量などにもよりますが、概ねの目安としては、1日の総合飲水量は犬の体重1kgあたり50cc前後です。
1日で体重1kgあたり100cc以上飲んでいる場合は、飲み過ぎだと言えます。
例えば、体重5kgの犬であれば、1日で500cc以上水を飲む場合は飲み過ぎだと考えられます。
飲水量の増加に関しては、暑い夏の散歩のあとや、激しい運動のあとなど一時的なものであれば心配することはありません。ただし、長期間にわたって飲み過ぎている場合はなんらかの問題が潜んでいる可能性があります。
犬が水を飲みすぎる原因とは
ここでは犬の飲水量が増える病気以外の原因として考えられることを4つご紹介します。
ストレス
犬はストレスを感じると水を飲むことがあります。
特に、フードを食べる量が減り水ばかり飲むような場合はストレスが関係しているかもしれません。
引っ越しや新しい家族が増えるなど生活環境の変化はありませんか?飼い主様が忙しくなってあまり構ってあげられなくなったなども犬にとってのストレスとなります。
脱水
暑い日に長時間散歩したり、運動したりすることで脱水して一時的に飲水量が増えることがあります。犬は汗をかく代わりに、「パンティング」と呼ばれる口を大きく開けてハアハアと荒く呼吸することで体温調節を行います。
犬がパンティングを繰り返したあと水を大量に飲む場合は、暑さによってかなり脱水していることが考えられます。
ペットフードの変化
フードの変化によっても飲水量は変わります。例えば、ウェットフードからドライフードに変えると水を飲む量が増えるでしょう。
一般的なウェットフードの水分含有量は75%程度と多めなので、ウェットフードを食べている時はフードから多くの水分を摂取できます。
一方、ドライフードの水分含有量はわずか10%程度なので、フードとは別に飲水がたくさん必要となるのです。そのほか、塩分量の多い食事を与えた場合なども喉の渇きにより飲水量が増えることがあります。
薬の服用
動物病院で処方される薬のなかには、利尿作用のあるものがあり、尿量が増えることにより飲水量が増えることがあります。抗炎症薬として使われるステロイド剤や、心不全の治療に利用される利尿薬などが代表的です。
水の飲みすぎから考えられる4つの犬の病気
ここでは病気の可能性について、考えられる病気とそれぞれの特徴や症状をご紹介します。
これらの病気の中には、早期に治療しないと命の危険につながるものもあるため、日頃から愛犬を注意深く観察することが大切です。
慢性腎臓病
腎臓がなんらかの慢性的な病気を抱えていると、たくさん水を飲んで尿をたくさん出す「多飲多尿」の症状が出ることがあります。
腎臓による濾過機能が低下すると尿が濃縮されないまま排泄されるため多尿になります。多尿になることで体が水分を欲して多飲になるのです。
病気進行すると、反対に尿が少なくなる「乏尿」や、食欲低下、体重減少、嘔吐などの症状が出はじめます。慢性腎臓病は初期症状がわかりづらいため、発見されにくく、飼い主様が異変に気付いたときには病状が深刻化していることが多い病気のひとつです。
クッシング症候群
クッシング症候群は、副腎という内分泌器官で作られるコルチゾールというステロイドホルモンが過剰に分泌される病気です。
クッシング症候群の代表的な症状のひとつが多飲多尿ですが、これ以外にも、食欲が異常に亢進したり、筋肉が減るのに腹部だけが膨れたり、皮膚が薄くなったり、左右対称の脱毛がみられることもあります。
子宮蓄膿症
未避妊の雌犬特有の病気で、細菌感染によって子宮の中に膿が溜まる病気です。性ホルモンの影響を受けるとされ、発情終了後に発症することが多いです。多飲多尿のほかに、元気がない、嘔吐、食欲低下、陰部から膿が出る、お腹が膨らんでみえるなどの症状が出ます。
糖尿病
血液中の糖をコントロールするインスリンというホルモンの不足や、インスリンの作用不足によって血糖値が下がらなくなる病気です。多飲多尿のほかにも、下痢や嘔吐、体重減少、食欲低下などの症状が見られることが多いと言えます。犬の場合、比較的老犬に発症することが多い病気のひとつです。
愛犬の健康を守るためにできること
大切な愛犬にはいつまでも元気で長生きして欲しいですね。ここでは、犬の健康を守るために飼い主様にできることをお伝えします。
普段から飲水量を確認しておく
愛犬の健康な時の状態を把握しておくことで、少しの変化にも気づきやすくなります。
飲水量の確認の方法のひとつとしては、朝の7時に水の入った容器の重さを計り、24時間後の翌朝の7時に再び容器の重さを測って重さの差から飲んだ水の量を把握する方法が挙げられます。
また、市販されている目盛り付きの水入れを利用すればもっと手軽に飲水量の確認も可能です。
水を飲む量は、気温や運動量の変化によって日々異なることが多いため、1週間ほど毎日続けて平均を出して、それを愛犬の健康な時の飲水量の目安とすると良いでしょう。
一緒に尿の量も確認する
飲水量と同時に把握しておきたいのが尿量です。成犬の尿の回数は、1日に3~5回程度が一般的なので、おしっこの回数が増えたり、ペットシーツの交換頻度が増えたりする場合は多尿の可能性が高いです。
また、おしっこをしている時間が長い、おしっこの色が薄い、おもらしや失禁するなどの変化が見られる場合も注意が必要でしょう。
水の飲み過ぎ以外の症状に注意する
上でお伝えしたように、多飲の症状が出る病気の場合、その他にも体重減少、食欲減退、嘔吐や下痢、左右対称の脱毛、お腹が膨れるなど様々な症状があらわれます。これらの異変がみられる場合は病気の可能性が高いと考えましょう。
おかしいと感じたら病院へ連れて行く
普段と様子が異なる場合、飼い主様の自己判断やインターネットの情報のみに頼るのではなく、動物病院で客観的な判断をしてもらうことが大切です。
特に、飲水量が明らかに増えた状態が続く場合、早めに動物病院を受診しましょう。受診の際には、多飲のほかにもここまでお伝えしたような病気の兆候があるかどうかもチェックしておくと役立ちます。
飲水量と尿量をセットで確認し、愛犬の健康を守ろう
今回の記事では、犬の水の飲み過ぎに着目し、病気以外の原因と病気が関わるケースそれぞれについてご紹介しました。
記事でもお伝えしたように、飲水量と必ずセットで把握したいのが尿量です。小さな異変の段階で早めの対処をすることが愛犬の健康維持につながります。日頃から観察を細やかに行い、少しでも普段と異なる点に気づいたら早めに動物病院を受診すると良いでしょう。