「顔がお母さんと似ている」「髪色は遺伝だね」などと日常の何気ない会話の中で遺伝について触れることで「犬も遺伝するのかな」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
実際、母親や家系で遺伝するのは私たち人間だけでなく犬も同じです。本記事では、犬が母親から遺伝するものや犬の遺伝子検査など「犬の遺伝」について詳しくご紹介します。
目次
犬が母親から遺伝するものとは
冒頭にてご紹介したように、犬も遺伝します。以下では、具体的にどのような部分が親から遺伝されるのか解説します。
容姿
犬の容姿は母親から遺伝するケースが多くあります。容姿と一口に言っても、毛色や顔、体格、模様など目で見たときに感じる要素の全てを含んでいます。
ただし、遺伝情報は母親だけでなく母親と父親からそれぞれに受け継ぐため、必ずしも母親だけに似るとは限りません。
毛色を例に挙げると、母親が白毛であるのに黒毛の子犬が産まれることはよくあることです。そればかりか、両親が白毛なのに黒毛の子犬が産まれることもありえます。
性格
犬の性格も、先天的な要素として子犬に遺伝する可能性が高いです。例えば、噛み癖や攻撃性などです。例えば、攻撃性が高い母犬であった場合に、子犬にも遺伝することは考えられます。
ただし、生活環境や周囲の動物や飼い主との関わりなど後天的要素も影響して性格が変化することも考えられるので、一概に遺伝だけで決まるとも断言はできません。
アレルギー
母親がアレルギー体質であった場合、子犬に遺伝する可能性も考えられます。
犬の三大アレルギーとは、「アトピー」「食物」「ノミ」。近年、アレルギー性皮膚炎や食物アレルギーを発症する犬は増加傾向にあることからも油断は禁物です。以下の症状が現れたら、動物病院を受診しましょう。
- 痒み
- 皮膚の赤み
- 目が赤い
- ウンチがゆるい
アレルギーは生活習慣や意識次第で発症リスクを抑えることができます。可能であれば、母親はもちろん父親の体質についても調べておきましょう。
疾患
最も注意したいのが、遺伝性の疾患です。ペットにはそもそも「遺伝病」が多く、「単一遺伝子疾患」と「多因子遺伝子疾患」に分類されていて、「単一遺伝子疾患」は遺伝子検査で診察が可能です。
もちろん、遺伝に限らず食事や生活習慣、細菌、ウイルス感染をはじめとする環境要因が発症の要因である可能性もあります。
しかし、遺伝子検査をすることで遺伝性の疾患の有無を知っておけば早めに対策をすることができることからも、あらかじめ両親の疾患の有無について知っておくと良いでしょう。
水頭症
水頭症は、先天性が要因であることが多い疾病で、チワワやマルチーズ、トイプードルをはじめとする小型犬によく見られるとされています。
- いつも寝ている/眠そうにしている
- 落ち着きがない
- いつも興奮している
- 物覚えが悪い
上記は、水頭症の症状であり、違和感がある場合には受診の上検査をしましょう。
進行性網膜萎縮症
進行性網膜萎縮症は遺伝により生じる病気です。罹患すると次第に光を感知できなくなり、視力が低下、最終的には失明に至ります。主な症状は以下です。
- 暗い環境下で反応しない
- 暗い場所を怖がる
- 地面の匂いを嗅ぎながら歩く
遺伝性白内障
白内障は加齢に伴うもの以外に遺伝性もあり、多くの犬種の発症が確認されています。発症年齢は生後数か月から数年までさまざま。発症が認められた場合には、唯一の治療法である外科的除去を受ける必要があります。
フォンヴィルブランド病
出血した際の止血の役割を担うフォンヴィルブランド因子の低下や欠損、異常をきたすフォンヴィルブランド病は、ウェルシュ・コーギー・ペンブローブに多く認められる病気です。
- 外傷時の大量出血
- 鼻出血
- 口腔内出血
- 血尿
イベルメクチン中毒
フィラリア予防のために使用されるイベルメクチンが引き起こす中毒を指します。疥癬(かいせん)や毛包虫症(アカラス)の治療にも用いられています。
筋ジストロフィー
人間にも発症する筋ジストロフィーは、筋力が徐々に低下していく進行形の病気です。
X染色体連鎖劣勢遺伝であるため、オス犬に発病する特徴があります。生後2か月頃に発育不良などの症状が現れはじめ、2歳頃には死に至ります。
メラノーマ
犬の発症率が高いメラノーマは、悪性腫瘍の一種です。
- 唇や皮膚、爪の付け根などに黒いしこりができる
- しこりの表面から出血している
- 口臭
上記が症状の一つであり、リンパや肺などに転移する危険性があることからも早い受診が必要となります。
門脈シャント
腸から吸収した栄養を運ぶ血管(門脈)が肝臓に繋がらず体に循環する病気であり、肝不全を引き起こす門脈シャントは、遺伝的要因が高いとされています。
日本ではミニチュアシュナウザーやヨークシャーテリアに多くみられる病気であり、完治のためには手術を受ける必要があります。
日本は「犬の遺伝子疾患」が多い国
世界で見ると、日本は犬の遺伝子疾患が多い国と言われており、原因としては特定の犬種に人気が集中することで、繁殖が横行していることが挙げられます。遺伝子疾患を持つ犬同士が繁殖した場合、高確率で子に遺伝します。
遺伝子疾患を持っていることに気付かず、あるいは気づいていたとしても繁殖を行っているケースもあることから、無秩序な繁殖を止めない限り遺伝子疾患を持つ犬がさらに増加する可能性があると言えるでしょう。
犬の遺伝子検査とは
親犬から遺伝した遺伝子疾患をはじめとする要因を知るためには、遺伝子検査を受けるほかありません。遺伝子検査は動物病院のほか、最近では自宅で検査を受けるキットが販売されていることをご存じでしょうか。
検査方法には、「口腔粘膜からの採取」あるいは「血液からの採取」がありますが、最近では犬への負担を考慮し前者を用いるケースが多くあります。以下でさらに遺伝子検査について解説します。
遺伝子検査の必要性について
遺伝子疾患は一定の遺伝形式で子に引き継がれるため、遺伝子検査をすることで遺伝子疾患の発症リスクを知ることができます。
発症前に疾患の有無を知ることができれば早期発見や治療が可能となる上、病気に対する準備や冷静な判断ができるでしょう。さらに、次世代の子犬たちへの遺伝を考慮し、遺伝子疾患を残さない工夫や取り組みも可能となります。
日本における遺伝子疾患発症率が高いことを踏まえても、今後さらなる対策が求められており、遺伝子検査の導入はその一つと言えます。
遺伝子検査で分かること
「遺伝子検査で何が分かるのだろう」と疑問に感じた方もいらっしゃるでしょう。遺伝子検査では、遺伝子疾患リスクの有無が明らかになり、具体的に遺伝子検査の結果は大きく以下の3つに分類されます。
結果 | 分かること |
---|---|
クリア | 遺伝子疾患リスクのある遺伝子を持っていない |
キャリア | 遺伝子疾患の原因遺伝子を片親犬から一つ引き継いでいる |
アフェクテッド | 遺伝子疾患の原因遺伝子を両親犬から二つ引き継いでいる |
リスクの有無について確認するのはもちろん、事前に把握することで症状が出た場合に早期対策が可能となります。
犬の遺伝子検査の費用相場とは
遺伝子検査を動物病院で受ける場合、病院ごとに料金を設定しているので、かかりつけの動物病院があったり、検査を検討している病院があったりすれば一度問い合わせてみましょう。
また、検査キットを購入し、自身にて行う場合には目安としては1項目5,000円前後~となります。まずは、検査項目や検査方法などをリサーチし、比較の上決めるようにしましょう。
犬の遺伝子検査で遺伝子疾患発症リスクをチェック!正しい方法で検査しましょう
本記事では、犬の遺伝について、遺伝子検査を含めご紹介いたしました。遺伝子検査をすれば、遺伝子が原因となる疾患発症リスクを知ることができるため、治療や飼い方など、未来に向けた対策も可能となるでしょう。
愛犬のことを更に詳しく知れる検査になるため、機会があればぜひ検査してみましょう。