猫と生活している飼い主様の中には、猫のいびきを聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。いびきに何らかの病気が潜んでいるのではないかと心配になることもあるかもしれません。いびきが心配のいらないものなのか、または何らかの病気を疑うべきものなのかは、いびきの音から判断できることもあります。今回の記事では、猫のいびきの音の種類をはじめ、いびきをかく原因や飼い主様にできるいびきへの対処法についてご紹介します。
目次
猫のいびきについて
はじめに猫のいびきのメカニズムを解説します。人のいびきはのどの空気の通り道が狭まって、空気によってのどが振動することで音が出ます。寝ている時はのどを支える筋肉がゆるむために起きている時よりもよりのどが狭まって音が出やすくなるのです。一方、猫のいびきは、のどだけでなく鼻腔が狭まることで起こります。健康な猫でもいびきが出ることもあるため、正常ないびきなのか、病気の可能性があるのかを見極めることが重要です。
猫のいびきの種類
猫のいびきは大きく分けて低い音と高い音に分類できます。それぞれのいびきについて考えられる原因や病気の可能性を解説します。
グーグー・ブーブーなどの低い音
グーグー・ブーブーなどの低い音のいびきは、病気の可能性が高いと言えます。低い音のいびきは、肥満が原因でのどが圧迫されている時や、なんらかの原因で鼻腔が圧迫されたり詰まっていたりする際に見られるいびきです。特に、ブーブーといった鼻が詰まるようないびきの時は息苦しさを感じているかもしれません。このようないびきにくわえ、くしゃみや鼻水が出ていたら風邪やアレルギーの可能性もあります。
プスプス・プープーなどの高い音
プスプス、プープーなどの高い音のいびきの場合、ほとんど心配はありません。リラックスして熟睡している可能性が高いです。また、飼い主様を信頼して安心しきっていたり、満足しているような時にこのような高い音のいびきをかくことがあります。
猫のいびきの原因
猫がいびきを描く原因には、鼻炎や腫瘍などの病気や、肥満、先天性の異常などが挙げられます。ここでは猫のいびきの原因と特徴、それぞれの治療方法などを解説します。
鼻炎
アレルギーや感染症などで鼻炎になるといびきがみられることがあります。鼻炎の猫の場合、いびきの他にくしゃみや鼻水が見られることも多いです。鼻水は透明でさらさらしていることもありますが、原因によっては膿のようにネバネバすることもあります。
アレルギー性鼻炎の場合、多くは鼻水が透明でさらさらです。猫のアレルギー性鼻炎の原因物質にはハウスダストなどが挙げられます。外に出る猫に多い鼻炎は猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスなどが原因となる感染性の鼻炎です。これらの感染症では結膜炎など目にも症状が出ることが特徴です。
猫の鼻炎の治療は原因に応じた投薬が中心ですが、鼻腔の膿が多い場合は外科的に溜まった膿を取り出す手術を行うこともあります。猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスは混合ワクチンで予防することもできるため、猫をお迎えしたらワクチンの検討をすると良いでしょう。
腫瘍
鼻腔内に腫瘍があると、腫瘍によって空気の通り道が狭まって低い音のいびきをかきます。鼻腔内腫瘍の原因として、リンパ腫、腺癌、扁平上皮癌などが挙げられますが、中でも多いのがリンパ腫だと言えます。中高齢での発生が多い傾向がありますが、若い猫でも発症することがあります。リンパ腫の症状はいびきの他にくやみや鼻水、鼻出血、顔面の変形、目やになどさまざまです。
猫の鼻腔内腫瘍の治療は、放射線療法や抗がん剤による治療が中心です。ただし、腫瘍が他の臓器に転移することもあり、腫瘍の場所や大きさによって治療方法を選択します。
肥満
人と同様に、猫も肥満になるといびきをかきやすいと言えます。首回りに脂肪がつき、気道やのどが圧迫されることでいびきをかきやすくなるのです。肥満はいびきいがいにも多くの病気の原因となります。適切な食事と運動で適正体重を維持できるように心がけましょう。
短頭種気道症候群
短頭種気道症候群はチンチラやヒマラヤン、ペルシャ、エキゾチック・ショートヘアなど鼻が短いいわゆる短頭種によくみられる呼吸器疾患のひとつです。「軟口蓋過長症」「喉頭虚脱」「気管低形成」などのいくつかの病気が合わさって、鼻や喉の気道が閉塞する状態になるのが特徴です。この病気は生まれつきの体の構造に加え、肥満、興奮、高温多湿などで病気を悪化させることがあります。短頭種気道症候群の要因のひとつとなる病気についても解説します。
軟口蓋過長症
先天的に上あごの一番奥にある柔らかい部分である「軟口蓋」が長いため、息を吸う時にのどを塞ぐ病気です。短頭種の犬には一般的ですが、猫ではごくまれだと言われています。いびきはこの病気の最も典型的な症状のひとつです。完全に治療するためには外科的に軟口蓋を切除する手術が必要です。
喉頭虚脱
虚脱とは、本来の形状を保てない状態を示します。喉頭虚脱は慢性的な鼻やのどの閉塞によって、のどの軟骨が弱くなってのどの形状が保てない病気です。呼吸困難を示し、いびきをかくこともあります。治療は外科的に閉塞している部分を改善することですが、すでに呼吸困難が強い場合には酸素吸入などを行い状態を落ち着かせます。
気管低形成
気管低形成は遺伝や発育の問題によって気管が本来の太さにならずに細くて本来の柔軟性を持ちません。そのため呼吸が上手にできずにいびきをかくことも多いです。上でお伝えした軟口蓋過長や喉頭虚脱などを伴うことも多いため、治療はこれらを改善させることです。
病院を受診すべきいびきかどうかの判断方法
猫がいびきをかいている時、すぐに動物病院を受診すべきなのか様子を見ても良いのか迷うことも多いでしょう。上でもお伝えしたように、高い音で寝息と同じくらいのボリュームでプスプス、プープー、ピーピーなどといびきをかいていて、寝ている様子に異常がなければ多くの場合は心配いらないいびきだと考えられます。
一方で、低い音のいびきが見られた場合は病院を受診した方が良いケースが多いです。また、今までいびきをかいたことがないのに急に大きな音でいびきをかくようになったり、くしゃみや鼻水がみられたり、起きている間も呼吸音が気になるなどの場合は動物病院に連れて行きましょう。特に口を開けて寝ていたり、寝ている間に呼吸が苦しそうにみえるような場合はできるだけ早めに受診するようにしましょう。
飼い主ができるいびきの対処法
肥満やアレルギー性鼻炎におけるいびきは、飼い主様にもある程度対処することが可能です。肥満が原因の場合は飼い主様が遊びに誘ったり、キャットタワーを設置して垂直方向の運動を促したり、ダイエット専用のフードに切り替えるのがおすすめです。アレルギーによる鼻炎の場合、原因物質をできる限り取り除くようにすると良いでしょう。特にハウスダストは猫のアレルギー性鼻炎の原因のひとつとなるため、お部屋の掃除をこまめに行うことで症状を軽減させることが可能です。
寝ている様子を観察して気になるいびきはすぐに受診を。
今回の記事では猫のいびきに着目して、原因や動物病院を受診すべきかどうかの判断方法、いびきの対処法などをお伝えしました。猫が起きて活動している間はよく観察しているという飼い主様も、寝ている間はあまり様子をみないことがあるかもしれません。いびきをはじめ、寝ている様子も猫の健康状態を知るためのバロメーターとなります。猫が寝ていたら起こさないようにそっと様子を観察すると良いでしょう。