「飼い猫が元気に生活していくためには何ができるのだろう」と思っている飼い主様もいらっしゃるでしょう。
猫は人間と違い、言葉を発することができないからこそ、飼い主様である人間の対応力が愛猫の健康、そして生活を左右することになるかもしれません。
本記事では、猫の個性と遺伝子との関係性に触れ、猫との生活のために知っておきたい「遺伝」と私たちにできる猫の飼い方についてご紹介します。
目次
高確率で猫が遺伝するもの5選
親から遺伝する要因があるのは、猫も私たち人間も同じです。親と似ている一面があるのは「遺伝子」によるものになります。まずは一般的に猫が親から遺伝することが多いものをご紹介します。
被猫パターン
猫の被毛にはいくつかのパターンがあり、この被毛パターンは親猫から遺伝します。しかし、必ずしも両親と被毛パターンが同じなるわけではなく、隔世遺伝である場合も。
非常に複雑ではあるものの、見た目には分からなくともパターンは両親から得た遺伝子で形成されています。
目の色
猫の目の色とは角膜の内側にある「虹彩」と呼ばれる薄い膜のことを言い、虹彩に含まれているメラニン量で目の色が異なります。
元々持つメラニン色素の量は母猫・父猫からの遺伝で決まることから、猫の目の色は遺伝で決まると言えます。とはいえ、中には兄弟でも色味が違ったり、突然変異で両親と全く異なる目の色を持つ子猫が生まれたりするケースもあります。
遺伝性疾患
猫には種類によってかかりやすい疾病があり、その多くが先天性である遺伝子疾患とされています。見た目だけでは分からないものが多くあるため、早めの遺伝子検査を実施して遺伝子疾患リスクを知る必要があると言えます。
鍵しっぽ
猫のしっぽが途中で鍵のように曲がっている「鍵しっぽ」ですが、しっぽが曲がっていたとしても、生活そのものに支障はありません。そのため、猫の個性や特性として見なされる場合が多くあります。
中には外傷によってしっぽの先が曲がる後天的要因のケースもありますが、多くの場合は遺伝子が要因とされています。
性格
人懐っこかったり、攻撃的だったりする性格も親から遺伝する要因とされています。もちろん、飼い主様と生活や環境など後天的な要因が形成する部分もありますが、遺伝によるものも多いのは間違いありません。
実は、性格に関しては母猫よりも父猫の影響を受けるケースが多いとされています。また、被毛による影響もあることからも、遺伝子が大きく関係していると言えるでしょう。
「品種好発性疾患」とは
最近の傾向として、猫種ごとの特徴が強い純血種の猫を求める人が増えています。純血種はきちんと品種が証明された血統書つきであることで安心感がありますが、実は純血種は品種好発性疾患のリスクがあることをご存じでしょうか。
品種好発性疾患とは、親猫から受け継いだ遺伝情報が何らかの原因で傷つきかかる遺伝性の病気です。
生まれつき症状がある場合もあれば、成長に伴い発症することもあるため、早い段階で遺伝子検査を行い、リスクを学ぶことが早めの対策に繋がります。以下で更に詳しく「品種好発性疾患」について解説します。
肥大型心筋症
心臓の壁が厚くなることで、体に血液が送られにくくなる病気です。肺に水が溜まり呼吸不全を起こしたり、血栓症を起こし後が麻痺したりといった症状が主で、最悪の場合死亡する可能性もあります。
スコティッシュフォールドやマンチカン、アメリカンショートヘアに加え、日本雑種猫もかかりやすい品種とされています。
多発性嚢胞腎症
腎臓に液が入った多数の嚢胞が形成される多発性嚢胞腎症は、嚢胞ができることで腎臓機能が低下する病気です。
初期のうちは無自覚であり、多くの場合は4歳以上で発症し、10歳以上になると発症率が2倍となります。発症すると対症療法や輸血療法がおこなわれますが、具体的治療法は見つかっていません。
ペルシャ系長毛種やアメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、マンチカンなどが好発品種です。
漏斗胸
胸部の肋骨が変形し、胸がへこんでしまう漏斗胸も、遺伝的要素が強いとされている疾病です。変形により肺や器官、心臓などがある胸腔が狭まり、呼吸や心機能に影響を与えます。
- 過呼吸
- チアノーゼ
- 咳
- 運動不耐性
上記が主な症状であり、重篤な症状がある場合には変形を整復する外科手術が行われることも。漏斗胸の症状が出やすい猫種はベンガルです。
ピルピン酸キナーゼ欠損症
酵素の一種であるピルピン酸キナーゼが不足することで起こる病気で、赤血球が破壊され、貧血を引き起こします。
生後2~3ヶ月で貧血を引き起こし、4歳までに死亡するケースが多くあります。好発品種にはアビシニアン、ソマリ、シンガプーラ、ベンガル、メインクーンなどがあります。
猫の遺伝子検査とは
猫が遺伝子の影響を受けるものは多くありますが、特に遺伝子疾患のリスクについてはいかに早く気づき、対応するかがカギとなります。遺伝子検査を受けた場合、結果は染色体の組み合わせによって以下の3種類に分類されます。
- クリア
- キャリア
- アフェクテッド
上記のうち、遺伝子のリスクがあるのはキャリアとアフェクテッドで、特にキャリアの猫が繁殖を行う場合には注意が必要となります。以下では、猫の遺伝子検査とはどのようなものなのか、詳しく解説していきます。
遺伝子検査の方法と流れ
遺伝子検査について、大事のように感じがちですが以外にもその方法は簡単です。猫の遺伝子検査方法は「血液」と「口腔粘膜」、2種類の採取方法から選択でき、採取した検体は専門機関にて検査されて結果が届きます。
遺伝子検査はどこで受けられる
猫の遺伝子検査は、動物病院で受けられますが、最近では検査キットを用いて自宅で検査を受ける人も増えています。
遺伝子検査の必要性について取り上げられることが多いことからも、今後さらに遺伝子検査が身近かつ手軽になることが予想されます。
猫の遺伝子検査費用の相場
猫の遺伝子検査の費用については、病院で受けるか、あるいはキットを用いて自身で行うかなど受ける場所や方法によって異なります。検査費用については各検査機関や方法によって違うものの、5,000円前後を相場と見積もっておくと良いでしょう。
猫の遺伝子検査を実施する3つの意義
猫の遺伝子検査についてご紹介しましたが、「何のために検査するのだろう」と思われている方もいらっしゃるでしょう。以下では、猫の遺伝子検査を実施する3つの意義について解説します。
最適な治療法や生活環境を選ぶことができる
遺伝子検査をすることで、日常生活では気づくことができなかった遺伝子疾患リスクを知り、必要に応じて最適な治療を受けることができます。
さらに、生活環境についても愛猫に合わせて選択することができるので、猫にとってより良い暮らしや環境を整えることができるのも、遺伝子検査で得られるメリットと言えます。
発症リスクを知る
目に見えない疾病リスクを抱えている可能性があるのは私たち人間もペットも同じです。あらかじめ発症リスクを知っておけば、全く予期せず急にリスクが明らかになるよりも良い選択や対応ができるはずです。
必要以上に怯えるのではなく、受け入れ、備えるという意識で検査を受けることも一つの意義と言えるでしょう。
将来的に、変異遺伝子を残さない
あらかじめ遺伝子疾患の発症リスクを知ることで、目の前の愛猫に早期治療を開始できたり、生活環境を整えたりすることができるだけでなく、未来に向けた取り組みもできます。
遺伝子疾患リスクがある猫であれば、当然繁殖することで疾患リスクが遺伝する可能性もあるでしょう。新たに増やさないという選択もできるため、それにより将来的に遺伝子疾患リスクを持った猫の減少に繋がると言えるでしょう。
猫と過ごすために知っておきたい遺伝子との関係性
本記事では、猫が親から遺伝するものや、愛猫の命と向き合うためにも知っておきたい遺伝子との関係性についてご紹介しました。
疾患があったり、治療の必要があったりありますが、全てを含んだ遺伝子は猫の個性の一つであり特性です。愛猫の遺伝のことについて知り長く楽しい時を過ごしましょう。