愛犬の寝る時間が増えたように感じるが、正常なのか、年齢の影響なのか、それともなんらかの病気が関係しているのかなど不安を抱えている飼い主様は少なくありません。
犬は平均睡眠時間が人間より長く、特に子犬やシニア犬は20時間前後寝る子もいます。心配しすぎる必要はありませんが、なんらかの病気が潜んでいる可能性もあります。
今回の記事では、犬の寝ている時間が長い主なケースを解説し、愛犬がよく寝るようになった時のお世話のポイントなどをご紹介します。
目次
犬が寝てる時間の平均は12~15時間
犬はどれくらい寝る動物なのでしょう?AKC(アメリカンケネルクラブ)では、犬の平均睡眠時間は12~15時間と述べています。犬は人間よりも長い時間眠る動物なのです。
犬の睡眠においては浅い睡眠である「レム睡眠」が8割程度の時間を占め、深い眠りの「ノンレム睡眠」は2割程度だと言われています。犬は睡眠中に外敵に襲われても逃げられるように眠りを浅く保つぶん、体力を回復させるために総合的な睡眠時間を長くとるようになった動物だと言えるのです。
犬の寝てる時間が長いのはなぜ?
上でお伝えしたように、犬はもともと1日の大半を寝て過ごす動物です。それでも寝ている時間が平均よりも長いと心配ですね。
原因としてはさまざまなことが考えられますが、ほとんどのケースでは大きな問題はありません。ここでは、犬の寝る時間が長い主な理由を3つご紹介します。
食性や本能
野生の犬は食べ物を探しながら長い時間歩き、途中で寝て休息する生活を送ります。
常に外敵に襲われる危険と隣り合わせなので、周囲に敏感で睡眠が浅い動物なのです。ペットの犬は襲われる心配はありませんが、飼い主様の様子などに敏感に反応します。お出かけしようとしたら、寝ていると思った愛犬がさっと起きて着いてこようとすることなどがあるでしょう。
年齢によるもの
子犬期、成犬期、シニア期などライフステージによって寝る時間の長さも異なります。子犬期(0~2歳ごろ)は休息と成長のために18時間以上寝ることが多いです。特によく遊んだあとはずっと寝ていますね。
成犬期(3~6歳ごろ)の寝る時間は平均すると12~15時間程度ですが、大型犬は運動でエネルギーをより消耗するとされ、さらに長い時間寝ることもあります。シニア期(7歳以上)は、体力の低下や反応の鈍化により寝る時間も増えはじめます。
環境の変化によるストレス
環境の変化によるストレスを受けている場合も犬の寝る時間が増えることがあります。私たち人間も、新しい環境など環境に変化が起きてストレスを受けると疲れて普段よりたくさんの睡眠が必要になりますね。犬も環境の変化には敏感で、ストレスを感じます。そのため脳や体の疲れを取るため、普段よりも多くの時間寝るのです。
病気が原因で寝てる時間が増えるケースに注意
犬の寝ている時間が増える原因には、病気が関連しているケースもあります。特に腰を丸めてうずくまるような寝方をしていたり、普段と違うところで寝ていたりなど、いつもと違う様子が見られた際には次のような病気を疑う必要があります。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は内分泌系の病気のひとつです。
生きるためのエネルギー代謝などが低下するため、疲れやすさや行動意欲の消失により寝る時間が増える傾向があります。甲状腺機能低下症は4歳~6歳くらいで発症することが多いとされています。
若いのに運動をしたがらない、異常なくらい寒がりになる、脱毛、毛が生え変わらない、皮膚の異常など、見た目の変化が出てきたら甲状腺機能低下症の可能性もあります。治療が遅れると命にも関わるため、早めに動物病院を受診しましょう。
椎間板ヘルニアや関節疾患
椎間板ヘルニアや関節疾患などの影響で動くのが億劫になり寝る時間が増えることもあります。
歩き方に違和感がある、体を触ろうとすると嫌がって怒るなどの様子が見られたら、腰や足などどこかに痛みを感じているのかもしれません。
椎間板ヘルニアや関節疾患は突然発症するケースもあります。放置すると急激に悪化することもあるため、少しでも普段と異なる様子がみられたらできるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
血糖値異常や毒性物質による影響
血糖値が極端に低下した低血糖状態のときにも、寝る時間が増えることがあります。犬の低血糖の原因としては「糖尿病」などの病気の他に、キシリトールなどの毒性物質の影響も考えられます。
キシリトールは犬が口にすると血糖値が急激に下がり嗜眠傾向になります。キシリトール入りのガムや飴、歯磨きなどを犬が口にしてしまい、その後元気がない、後肢の震え、麻痺、嘔吐、下痢・失禁、体温の低下など低血糖の症状が見られたらすぐに動物病院を受診しましょう。
寝てる時間が増えた愛犬のお世話5つのポイント
上でお伝えした通り、病気が原因で寝る時間が増えることもあります。愛犬に異変を感じたらまずは病院を受診しましょう。病気ではないと判断され、年齢や本能、ストレスや単なる疲れなどでよく寝ている場合にはここでご紹介するようなポイントに注意をしながらお世話をすると良いでしょう。
落ち着いて寝れる環境を整える
犬の睡眠の大半は浅い眠りが占めているため、少しでも周囲に気になることがあると落ち着いて眠ることができません。大きな物音がせず、飼い主様やご家族が頻繁に歩いたりドアの開け閉めなどを行わない場所などに寝床を作ってあげると良いでしょう。気温、湿度などを考慮して寝る環境を快適に整えることも大切です。
寝てる時に近くで見守る
普通に寝ているだけだと思っていても、病気が潜んでいる可能性もあります。寝ている間に震えたり、辛そうな様子をすることはありませんか?愛犬の寝る時間が増えたと感じたら、時々近くで寝ている姿を見守って異常がないことを確認しましょう。
すぐ水分補給できるようにする
寝ている時間が増えると、水分を摂る回数も減り脱水状態に陥る可能性があります。愛犬が起きた時にすぐに水分補給ができるよう、寝床の近くに水を置くと良いでしょう。積極的に水分補給をしない犬には、普段のフードに水分を混ぜたりウェットフードをあげるなどの工夫でできるだけ水分補給を促しましょう。
無理しない範囲でお散歩に行く
お散歩は犬にとって運動不足の解消だけでなく、脳への刺激を与えたり気分転換のタイミングでもあります。寝ている時間が増えた犬も無理のない範囲でお散歩に連れて行くと良いでしょう。
特にシニア犬の場合、脳への刺激が減ると認知症や筋力の低下の原因となり寝たきりにつながることもあります。できる限り脳や筋肉を使うことが望ましいと言えます。自力で歩くのが難しい場合は、犬用カートを利用したり抱っこをして外を歩くだけでも良い刺激になりますよ。
愛犬とのコミュニケーションを大切にする
飼い主様とのコミュニケーション不足が原因で、犬がふて寝をすることもあります。日常的に話しかけたり一緒に遊ぶコミュニケーションの時間を大切にしましょう。
過度な心配は不要だが活動時間の観察も大切。
今回の記事では、犬の寝る時間が長い理由や、関連する病気、寝る時間の長くなった愛犬のお世話のポイントなどをご紹介しました。
犬はもともと寝る時間の長い動物なので、寝てばかりいると感じても過度な心配は必要ないことが多いです。しかし、病気が潜んでいる可能性やストレスを感じていることもあります。寝ている時間だけでなく、活動している時の様子にもよく着目し、異変が見られたら動物病院を受診するようにしましょう。