猫と生活していると、猫の様子が普段と異なり、病気かどうかわからず心配になることがあるかもしれません。

病気の種類は豊富にあり、年齢によってかかりやすい病気も異なるため、愛猫の健康を守るためには飼い主様の正しい知識が必要です。

今回の記事では、猫が病気になったときに現れやすい症状、年齢ごとにかかりやすい病気、病気の際の対応方法、病院へ連れて行く際の注意点、病気の予防方法などを解説します。

猫が病気になったときに現れやすい症状と種類

猫が病気になったときに現れやすい症状と種類

はじめに猫が病気になったときに現れやすい症状について、体の部位ごとに解説します。

口や鼻の症状

口臭、歯茎の腫れや赤み、出血、歯がぐらつくなどの症状は歯周病の可能性があります。

くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状は鼻炎や風邪の可能性があります。歯茎が少しだけ腫れている、時々くしゃみが出るなど、病院への受診を迷う場合はいちど動物病院に相談してみると良いでしょう。

目の症状

目の色の異変、涙や目やに、まばたきが多い、目をこするなどの症状は結膜炎、角膜炎、白内障、核硬化症、黄疸、緑内障などの可能性があります。

少しの涙や目やには健康な猫にもみられることもありますが、普段より量が多い、まぶしそうに目を細める、頭を振るなどの変化が現れた場合は注意が必要です。放置すると視力低下や失明につながるケースもあります。

皮膚の症状

かゆみ、脱毛、発疹、かさぶたや多量のフケ、べとつきなどの症状は、アレルギー性皮膚炎などの皮膚炎や皮膚糸状菌などによる真菌(カビ)症、内分泌系の病気や、ストレスなどの可能性があります。

また病気ではなく、食べ物や飼育環境など生活に起因する不調の場合もあります。動物病院での検査によって、原因をはっきりさせることが必要でしょう。

消化器・生殖器・内分泌疾患の症状

吐く、尿の色や量の異常、便秘や下痢、食欲の低下や異常増加、飲水量の異常な増加、陰部からの出血や粘液排出、体重変化などの症状は、消化器系の疾患や尿路系の疾患、内分泌系の疾患など多岐にわたります。

これらの病気が潜んでいる場合は、放置すると命の危険もあります。早めに病院へ受診することをおすすめします。

猫から人間にも感染する病気

猫から人間にも感染する病気

猫が病気になったら飼い主様が看病してあげることが一般的ですが、人間にも感染するリスクがある病気もあるため注意が必要です。基本的に、野生動物からの感染が多く、猫や犬から人間に感染する病気はわずかです。

猫から人に引っかかれたり噛まれたり、舐められることで人間に感染するため、事前に人間に感染する病気について知っておきましょう。

猫ひっかき病

猫ひっかき病とは、猫の中にいるバルトネラ菌が病原体であり、猫に引っかかれたり噛まれたりした場合に感染します。バルトネラ菌は健康な猫の体にもいる菌で、猫は無症状です。

しかし、人間に感染すると傷口が痛み、リンパ節が大きく腫れてしまいます。発熱や倦怠感が伴うこともありますが、自然に治まることが一般的です。

しかし、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症やエイズなどの病気を持つ場合、感染が全身に広がる可能性もあるため、注意してください。

パスツレラ症

パスツレラ症は、猫の口の中にいるパスツレラ菌が人間の体内に入ることで感染する病気です。猫に噛まれたり引っかかれたりして人間の体内に入ると、約30分〜数時間後に激痛と発熱が発症する可能性があります。

また、猫に口や鼻などの粘膜を舐められて感染すると、気管支炎や肺炎などの呼吸器症状を引き起こす場合もあるため注意が必要です。

Q熱

Q熱は、猫が持つコクシエラ菌を吸い込むことにより感染する病気です。急性のQ熱はインフルエンザに症状が似ており、突然の高熱や頭痛、筋肉痛、倦怠感などの症状が見られます。

自然治癒で完治でき、多くの場合は2週間以内に解熱するといわれています。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

重症熱性血小板減少症候群は、マダニによるSFTSウイルスが原因で感染します。猫も人間も感染すると食欲が低下し、発熱や下痢・嘔吐などの症状を引き起こします。

白血球や血小板が減少する病気で、重症化してしまうと死に至る危険性もある病気です。過去に、飼い猫から飼い主様に感染して死亡した例も報告されています。

SFTSに気をつけるためにも、外に出る猫はマダニがいないかよく感染し、飼い主様もマダニに咬まれないように気をつけましょう。

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌とは、カビが皮膚に生える病気を指します。猫では頭や首、足などに見られることが多く、感染した部分が脱毛して赤くなる症状が現れます。

人間が感染すると皮膚に丸い赤みができ、軽いかゆみが出る場合もあります。とくに免疫力が低下していたり、皮膚が弱っていたりする場合に感染しやすいため、注意が必要です。

猫がかかりやすい病気は年齢ごとに異なる

猫がかかりやすい病気は年齢ごとに異なる

年齢によってかかりやすい病気は異なります。以下ではそれぞれの年代ごとの猫がかかりやすい病気について解説します。

子猫は下痢をしやすい

1歳頃までの子猫は免疫が未熟なため、感染症にかかりやすく体調も崩しがちです。特に色々な原因で下痢をすることが多いといえます。

生後7ヵ月以内くらいの子猫の場合、下痢によって脱水や低体温症になる可能性もあるため、動物病院を受診するようにしましょう。受診の際は、できるだけ新鮮な便を持って行くと診察がスムーズです。

おとなの猫がかかりやすい病気は膀胱炎・嘔吐・結膜炎の3つ

おとなの猫がかかる病気は多岐に渡ります。なかでも膀胱炎・嘔吐・結膜炎が多いといえます。膀胱炎は、膀胱が細菌感染などによって炎症を起こす病気です。血尿など尿に異常がみられることが多く、放置すると深刻化するため早めの治療が大切です。

おとなの猫は比較的よく吐きますが、吐いたあと元気がないなどいつもと様子が違うようであれば、動物病院に相談しましょう。結膜炎は目の結膜の炎症です。原因にはウイルスや細菌の感染、外傷、異物が目に入るなどが挙げられます。

いつもより涙や目やにが多い場合は、結膜炎を疑い動物病院を受診しましょう。

シニア猫は腎不全に気をつける

7歳以上のシニア猫は、加齢や腎臓の病気などによって腎不全になりやすいといえます。腎不全は進行すると多飲・多尿などのような症状があらわれます。健康診断などで早期治療を心がけましょう。

猫が病気かもしれないサイン

猫が病気かもしれないサイン

猫の病気は早期発見と早期治療が重要です。しかし、猫が病気かもしれないサインを覚えておかなければ、猫が病気になっていることに気付けない可能性があります。

以下では、猫が病気かもしれないサインについて解説します。

くしゃみや鼻水が出ている

猫が風邪や体調を崩していたりする場合には、くしゃみや鼻水の症状が見られる場合があります。猫カゼの一種である猫ウイルス性鼻気管炎は、一度感染すると体内にウイルスが残り、免疫が低下すると再び症状が現れることも珍しくありません。

くしゃみや鼻水の様子が頻繁に見られるようであれば、動物病院に連れて行ってあげましょう。

目を気にしている

目ヤニが増えたことにより、目を気にしている様子が頻繁に見られているのであれば、結膜炎やアレルギー、角膜などを傷つけている可能性があります。また、他にも目の周囲にある腫瘍が原因であるケースも考えられます。

いずれにしても、目を触ると悪化する可能性があるため、すぐに動物病院に連れて行ってください。

急激な体重変化が見られる

14〜15歳を過ぎた猫は老化により、背中やお尻の筋肉が減って痩せることがあります。しかし、老化ではなく、急激に痩せてきたと感じた場合は、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症など、病気のサインかもしれません。

猫に急激な体重変化が見られた場合は、何らかの病気が潜んでいる可能性があるため、動物病院を受診すると良いでしょう。

声が枯れている

猫の声が枯れている場合、口内炎や喉の奥で炎症が起こっている可能性があります。口内炎の原因は、猫カゼの一種である猫カリシウイルス感染症が関係しているケースも考えられます。

いつもと猫の鳴き声が違うという場合は、動物病院を受診してください。

お腹が腫れている

猫のお腹が腫れている場合は、お腹に水が溜まっている可能性が考えられます。腹水は、猫伝染性腹膜炎や肝臓病、重度の腎臓病など、重症な病気が潜んでいるかもしれません。

猫のお腹を触ってみて、液体の感触があったり膨らみが移動したりする場合は腹水である疑いがあります。命に関わる病気が潜んでいるかもしれないため、すぐに動物病院に連れて行ってあげましょう。

体を舐めている

頻繁に体を舐めている際にも注意が必要です。猫はストレスや病気により、過剰に毛づくろいをすることがあります。また、病気でなくても、アレルギーや感染症により皮膚炎が生じて、かゆみにより体を舐めている場合も考えられます。

毛づくろいをしていても特に問題はありませんが、普段と様子が違うようであれば獣医師に相談してください。

咳をしている

猫が咳をしている場合は、喘息になっている可能性が考えられます。猫は病気により咳をすることはほとんどありません。しかし、病気ではなく、一時的に咳をすることもあるため、咳をしている場合は一度様子をみましょう。

また、咳が頻繁に見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。

猫が病気を引き起こす原因

猫が病気を引き起こす原因

愛猫に元気がない場合、病気を抱えている可能性があります。猫は敵から身を守るために、他人に弱みを見せない習性があり、病気を抱えていても気づくのが遅くなります。

猫が病気になる際は、基本的にどのような原因があるのでしょうか。以下では、病気を引き起こす原因について解説します。

ストレス

猫はストレスを抱えると病気を発症することがあります。猫は適切でない生活環境や環境の変化などにより、ストレスを感じます。

室内で上下運動ができなかったり、爪とぎができなかったり、ベッドや食器が変わったことによる生活環境の変化は、猫にとってストレスとなります。

また、引っ越しや結婚・出産により家族が増えても猫にとっては大きな環境の変化となるでしょう。そのため、猫がストレスを感じないように生活環境を見直し、優しく声をかけるようにしてあげてください。

ケガ

猫がケガすることにより病気を引き起こすケースもあります。外でのケガや他の動物との喧嘩でできた傷は、感染症のリスクが高まります。特に、傷口から細菌やウイルスが侵入することで、膿瘍や感染症を引き起こすかもしれません。

感染症は放置してしまうと、深刻な状態に進行する可能性もあるため注意が必要です。

気候の変化

機構の変化は、猫の健康に影響を与えます。特に急激な温度変化や湿度の変動は、猫の免疫システムにストレスを与え、病気のリスクを高めます。

寒冷な気候では、風邪や呼吸器感染症が増加し、逆に暑い気候では、熱中症や脱水症状を発症する可能性があります。また、湿度が高ければ、皮膚病やカビの発生リスクにもつながるため適切な気温と湿度を保つことが重要です。

老化

猫が病気を引き起こす原因として、老化が挙げられます。猫が高齢になると、体の機能は徐々に衰えていき、免疫力も低下していきます。免疫力が低下することにより、感染症や慢性疾患が発症しやすくなるでしょう。

また、老化による代謝の変化や細胞の再生能力の低下も、病気が進行する原因となるため、定期的な健康診断と適切なケアを心がけてください。

猫が病気になったときの対応方法は?

猫が病気になったときの対応方法は?

以下では「猫が病気かな?」と感じた時に取るべき対応方法をお伝えします。

自宅での処置

病院を受診するほどでもないと考えた場合、猫をよく観察して気づいた異変を記録しておくと良いでしょう。体調不良の猫はストレスに弱いため、室内を快適な温度に保ち、静かで安心できる環境を与えましょう。

食欲がない場合は、嗜好性の高いウェットフードを与えるなど、猫の状態に合ったケアが必要です。新鮮な水を近くに設置していつでも飲めるようにすることも大切です。

病院への受診を検討する

自宅で数日間ケアをしながら様子をみても症状が改善しない、または悪化するような場合は、早めに獣医師の診断を受けることが重要です。

猫がぐったりとして呼びかけにも応じない、呼吸が早かったり深かったりする、触ったときに冷たかったり異常に熱い、激しく吐く、尿がまったく出ないなどの症状の場合は緊急な治療が必要なケースが多いといえます。すぐに動物病院に連絡しましょう。

猫を動物病院へ連れて行く際のポイント

猫を動物病院へ連れて行く際のポイント

以下では、猫を病院に連れて行く際に注意すべきことをお伝えします。

キャリーバックに入れる

猫を病院に連れて行く際は、脱走や事故などを防ぐため、また病院で他の動物とトラブルにならないように必ずキャリーバッグに入れましょう。扉が1つだと、猫が怖がってなかなか出てこず診察が滞ることもあります。

上部や側面にも扉があったり、ワンタッチで上下がセパレートしたりするタイプがおすすめです。日頃からキャリーバッグに慣れさせておくことも重要です。

ストレスを与えない工夫をする

通院は移動や環境の変化などで猫のストレスになりがちです。お気に入りのタオルや、普段遊んでいるおもちゃなどを一緒にキャリーバッグに入れるなど、できるだけ猫がリラックスできるように配慮しましょう。

動物病院から絶食の指示が出ていなければ、おやつを与えても良いでしょう。日頃から健康診断などで通院に慣れてもらうことも大切です。

猫の治療を得意としている病院へ行く

動物病院のなかでも、猫の治療に慣れている病院を選ぶことも大切です。猫専門の病院や猫専門の病棟がある病院であれば、猫の扱いや病気について経験豊富な獣医師やスタッフが多く安心です。待合室で他の動物に遭遇することもないためストレスも軽減されるでしょう。

猫の病気を予防するには

猫の病気を予防するには

飼い主様としてはできるだけ猫を病気から守りたいですね。以下では猫の病気の予防についてお伝えします。

日常生活に工夫を加える

生活に刺激がないと猫は食べることにだけ執着して、肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病になりやすいといえます。

食事の際はフードを投げて与えるなど、狩猟本能を刺激する工夫をしましょう。キャットタワーを設置したり、おもちゃで一緒に遊んだりして運動不足を解消することも大切です。

ノミ・ダニ・伝染病・フィラリアを予防する

ノミやダニは猫の皮膚や毛に寄生して吸血するため、皮膚病の原因になります。お外に出る猫の場合、しっかり予防をしておきましょう。予防薬には色々な種類がありますが、首付近に滴下するタイプが簡単です。

ワクチン接種で、猫がかかりやすい伝染病を予防することも必要です。猫の混合ワクチンには色々な種類があり、その地域で流行している感染症に基づいて獣医師がおすすめしてくれます。

伝染病のひとつであるフィラリアは、犬の病気だというイメージがあると思いますが、猫にも感染します。犬と同様に、毎月1回の予防薬で防ぐことができるため特に蚊の多い地域の猫やお外に出る猫の場合は検討しても良いでしょう。

病院で定期健診する

病気の早期発見や健康の維持のためには、定期的な健康診断が必要です。半年に一回、もしくは年に一回程度は病院で健康診断を受けましょう。

一般的な健康診断の検査内容は、血液検査・尿検査・糞便検査・レントゲン検査などです。年齢や猫の健康状態に合った検査を受けると良いでしょう。

正しい知識で猫を病気から守ろう

今回の記事では、猫が病気になった時にあらわれやすい症状や、年齢ごとにかかりやすい病気、「猫が病気かな?」と思った時に取るべき対応などをご紹介しました。

猫がかかりやすい多くの病気は初期ではほとんど症状が出ないため、あまり楽観的に構えていると病気が進行してしまう可能性があります。普段から猫の病気についての知識を身につけ、猫を病気から守る意識をしっかり持って観察しましょう。

大好きなペットにはいつまでも元気でいてほしいですが、いつか必ずお別れの時がやってきます。

いざその時が来ると、急な悲しみで冷静な判断ができなくなることもあります。そのため、ペットが元気なうちから、ペットの看取りや葬儀などをどうするのかを考えておくことで、後悔のない最期の時を過ごすことができます。

また、悔いなくきちんとペットとお別れをすることは、その後のペットロスの緩和にもつながります。