「猫が毛玉を吐くのは病気なのかな」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

飼い主様の大切な愛猫が毎回毛玉を吐いていたら可哀想に思い、病気か何かだと疑ってしまうかもしれません。

本記事では、猫が毛玉を吐く原因や病気の可能性に関して解説していきます。愛猫の体調が心配な方の参考になれば幸いです。

猫が毛玉を吐く原因とは?

猫が毛玉を吐く原因とは?

毛玉は長さ数センチの毛の塊であり、猫の大きさにより毛玉の大きさも異なります。

猫が毛玉を吐く原因はグルーミング(毛づくろい)にあり、毛玉を吐き出す行為は猫の一般的な生理現象です。

猫たちは自分の毛についた汚れや匂いを消すため、さらには皮膚病予防や毛並みを整えるために日々グルーミングをします。

しかし、日常的に行うグルーミングの際に自分の毛を飲み込んでしまうことがあるのです。

飲み込んだ毛は胃や腸のなかで毛玉となり、猫たちは自分の体を守るため生理的に毛玉を吐き出します。

消化されて便とともに排出される場合もありますが、長毛の猫は飲み込む毛の量が多いため消化できずに毛玉として吐き出すことが一般的です。適度な頻度であれば全く問題のない行為なので安心してください。

ただし、頻度が多く、元気や食欲がない場合は動物病院に連れて行きましょう。

猫に毛玉ができやすい理由

猫に毛玉ができやすい理由

猫の毛は、毛根から毛先にかけてささくれのような状態になっています。毛の状態により抜けた毛が身体にくっついたままであれば、ささくれの状態の毛はもつれ合い、やがて毛玉になります。

また、猫の皮膚は油分や体臭が生成されるアポクリン汗腺が多くあり、汚れが付きやすく、毛と毛が絡み合いやすいです。

そのため、定期的にシャンプーやブラッシングをしなければ、猫の被毛や皮膚が汚れ、毛も絡み合い、毛玉になります。

猫が毛玉を吐かないのは問題ない?

猫が毛玉を吐かないのは問題ない?

猫が毛玉を吐かなくても、食欲や元気がある場合はとくに問題ありません。猫にも毛玉をまったく吐かない子や定期的に毛玉を吐く子など、個体差があります。

毛玉を吐いていない猫でも、便と一緒に毛玉が排出されていれば心配ないでしょう。とくに、毛の短い猫は、胃の中に毛が溜まりにくく、便として排出されることが一般的です。

ただし、普段毛玉を吐いている猫がしばらく吐いていない場合は注意が必要です。

元気や食欲がない、体重が減った、便秘になっているなどの症状があれば、動物病院で医師に診てもらいましょう。

猫が毛玉を吐く頻度

猫が毛玉を吐く頻度

猫が毛玉を吐く頻度は、1ヶ月から数ヶ月に一度です。

とくに、毛が生え変わる換毛期(春と秋)は、毛玉を吐く回数が増えるので注意しましょう。

毛を吐き出す様子は苦しそうに見えるかもしれませんが、猫は吐くことが得意な動物なため心配はいりません。

また、猫のなかにはまったく毛玉を吐かない個体もいますが、単なる個体による性質の違いです。

「毛玉を全然吐かなくて大丈夫だろうか…」と不安に思う必要はありません。

毛玉が溜まると毛球症になる場合も…

基本的に猫が毛玉を吐き出す行為は普通のことです。

しかし、あまりにも毛玉が溜まりすぎると、吐き出せずに胃や腸の中に留まり続けてしまい、「毛球症」と呼ばれる病気を引き起こす原因になります。

毛球症とは、溜まった毛玉が消化器官の病気や腸閉塞を起こすことです。毛球症の初期症状は、食欲不振や下痢、便秘、吐いても毛玉が出てこないなどです。

初期症状のうちに受診しなければ症状は悪化し、脱水症状を引き起こします。

毛球症になった場合、点滴やサプリメントで治療しますが、腸閉塞の場合は開腹手術が必要になります。

腸閉塞や腹膜炎になった場合、命に関わる危険性もあるため、少しでも様子がおかしいと感じたらすぐに動物病院に連れて行きましょう。

吐きそうで吐けない空嘔吐にも要注意

吐きそうで吐けない空嘔吐にも要注意

猫が吐きそうにしているのに吐かない状態を「空嘔吐」といいます。

毛玉を吐き出したいのに吐けないときに空嘔吐が多く見られますが、口の中に異物があったり、違和感があったりする際にも空嘔吐が現れることがあります。

そのため、猫が空嘔吐していたら口の中を確認し、赤みや異臭がないかチェックしましょう。

上記のような症状がある場合、喉の炎症や口内炎、歯肉炎、歯周病などの病気である可能性が考えられます。

猫の毛玉に関して病院に行く5つの目安

猫の毛玉に関して病院に行く3つの目安

猫の毛玉の状態や頻度などにより病院に行くべき目安が5つあります。

事前に病院に行くべき目安を理解していなければ、初期症状の発見に遅れて病状が悪化していく可能性が考えられます。

吐く頻度は見逃しやすいため、日常から観察を怠らないようにしましょう。

吐く頻度や吐き気を催す頻度が多い

吐く頻度が多い場合や逆に吐こうとしているのに吐けない状態が続いている場合は、大きな毛玉が胃に溜まっている可能性があります。

また、1日に何度も吐いていたり、何日も連続で吐いていたりする場合、毛玉以外にも誤飲・誤食や胃腸炎など消化器系に異常がある可能性も考えられます。

「いつから吐き気が続いているのか」「普段の様子と何が違うか」などをメモしたうえで、動物病院に行ってください。

何度も吐く行為は猫にとって体力を消耗しやすく、脱水してさらに状態が悪くなることもあります。メモの内容を獣医師に伝え、処置すべき治療を受けましょう。

元気がなく食欲もない

いつもより元気がなくて食欲もない場合は、溜まった毛玉が多すぎて吐く回数が多くなり、胃液により胸やけを起こして食欲不振になっている可能性があります。

また、吐いた後でも元気や食欲が戻らない場合は、他に病気が潜んでいるかもしれません。病気として考えられるのは「毛球症」です。

胃の中に溜まった毛が排出できないと毛球症となり、さらに腸閉塞になると強い痛みが出てくるため、元気も食欲もなくなるのは当然です。

しかし、毛球症でなく、腎臓病の初期症状や慢性膵炎などであれば、症状に気付きにくく発見が遅れてしまうこともあります。

少しでもいつもと違う症状があれば、動物病院に連れて行ってあげてください。

とくに、多頭飼いの場合、どの猫が嘔吐したかわからない場合や、他の猫が残したフードを食べてしまうこともあるため、定期的に体重をチェックすることが重要です。

下痢や便秘などの症状は要注意の症状の一つです。

毛球症がひどくなって腸まで達している場合は、下痢や便秘になっている可能性があります。

くわえて、腸閉塞を起こしている可能性も高いため、すぐに動物病院を受診しましょう。腸閉塞は、悪化すると腸の管に穴が空いてしまいます。

空いた穴から腹膜炎を発症して亡くなることもあるため、速やかな行動を心がけてください。

また、嘔吐のほかにトイレにいく頻度が増え、尿が出ていない状況が見られたら、欠席により尿道閉塞になっている可能性が考えられます。

早期発見するためにも、日頃から尿や便の様子を確認してあげることも重要です。

誤飲した異物が混じっている

毛玉と一緒に異物を吐き出した場合は、動物病院に連れて行く必要があります。

誤飲・誤食した異物を吐き出すことは身体を守るための生理現象ですが、胃の中に異物が残っている可能性が考えられます。

そのため、放置すると胃の中に残っている異物が消化管を傷つけるリスクもあり、非常に危険です。

万が一、嘔吐物から異物が見られたら、獣医師に嘔吐物の写真や動画を見せて相談しましょう。

嘔吐物に血が混ざっている

嘔吐物に血が混ざっている場合は、体内の何処かで出血している可能性があります。ピンクや赤の場合、口の中や喉、食道、胃の中が出血しており、病気が潜んでいることも考えられます。

一方、黒く茶色っぽい血の場合、出血から時間が経っており、消化管の腫瘍が破裂していることが原因かもしれません。

原因により緊急性は異なりますが、嘔吐物に血が混じっていればすぐに動物病院に連れて行きましょう。

とくに嘔吐物だけでなく、鼻からも出血していたり、息苦しそうにしていたりする場合は緊急性が高いため注意が必要です。

ヨダレが出てフラフラしている

毛玉を吐いた後に口からヨダレがでていたり、フラフラしていたりする場合は、中毒症状が現れている可能性があります。

飼い主様が見ていないところで、人の薬やタバコ、玉ネギ、チョコレートなど、猫にとって有害なものを口にしているかもしれません。

万が一、上記のようなものを誤飲・誤食している場合は、早急に動物病院に連れて行きましょう。

毛玉を溜め込ませない5つの対策

毛玉を溜め込ませない3つの対策

愛猫が毛玉を溜め込まないためにできることがあれば、してあげたいとお考えの飼い主様もいらっしゃるでしょう。

毛玉が溜まらないようにするためには、日頃のケアやチェックが重要です。

獣医師に相談するなどして、飼い主様の愛猫に適した量や頻度を確認するようにしましょう。

猫草を食べさせる

猫草とは、背が低いイネ科の植物や大麦など猫が食べる草です。

猫が好んで食べる草には細かいトゲがあり、胃を刺激して毛玉の排出を促してくれます。

猫草を食べることでストレス発散や便秘の改善にもつながるため、水飲み場の近くなど猫が食べやすい場所に置いておきましょう。

ただし、猫草を与えすぎると消化しきれず、嘔吐や下痢を引き起こし、逆効果になることもあります。

1歳を過ぎた成猫の場合、普段食べるものは柔らかい若葉にし、猫草は1日に数本程度にとどめておきましょう。

また、猫の胃腸が弱っている場合は、猫草を与えるのは控えてください。

こまめにブラッシングをする

猫が毛玉を溜めてしまわないように、日頃のブラッシングで抜け毛やムダ毛を処理しておきましょう。

とくに、長毛種は毛が長いうえに多いことが特徴です。そのため、日頃からブラッシングを欠かさないようにしましょう。

ブラッシングする際は、顎の下やお腹などは猫が自分で舐められない場所なため、徹底的かつ丁寧にすると良いです。

専門店の猫用ブラシやコームを使用するとより猫の体にとって安心でしょう。

シャンプーも同時に行うと汚れを落とせて、より良い状態になります。

毎日数分間ブラッシングするのが重要

猫のブラッシングにそれほど時間をかける必要はありません。

毎日数分間で問題ありません。しかし、毎日数分間のブラッシングを続けることが重要です。

猫の毛は汚れを吸着しやすいため、しばらく放っておくだけでコームが届かないほど大きな塊の毛玉ができる場合があります。そのため、毎日こまめにブラッシングしてあげてください。

猫の換毛期は念入りにブラッシングする

猫には春と秋に換毛期があり、主に3月と11月です。

換毛期になると、長毛種以外の猫も抜け毛が非常に多くなります。そのため、いつも以上に丁寧で念入りなブラッシングを心がけてください。

毛根から毛先へ流れるようにブラッシングすると、上手く毛並みを整えられます。

ブラッシングが嫌いな猫を慣れさせる方法

ブラッシングが嫌いな猫の場合は、最初に人間が触れる状況に慣れさせましょう。

次に道具に慣れさせ、顔から体へとブラッシング範囲を広げていってください。静かにしながらブラッシングに慣れさせることが重要です。

とくに、年老いた猫はグルーミングをする体力もないため、飼い主様自らがブラッシングしなくてはなりません。

ブラッシングが嫌いな老猫の場合は、慣れさせる方法を日々試しておきましょう。

毛玉を出しやすいフードを食べさせる

毛玉対応のフードを活用することも毛玉を溜め込ませない対策のひとつです。

猫草やブラッシングに合わせて、食事も猫の消化に良いものへ変えてみましょう。

毛玉を出しやすいフードは食物繊維が豊富に含まれており、毛玉の排出を促してくれます。

ただし、栄養バランスが良く愛猫の年齢に合ったものを購入してください。

また、与えるときは含有量バランスを保つために他のフードと混ぜないようにしましょう。

毛玉除去剤を利用する

毛玉ケア用品として、サプリメントや毛玉除毛剤の利用も有効的です。毛玉除毛剤は、猫の体内での毛玉の生成を防止し、便と一緒に排出させる効果が期待できます。

そのため、ブラッシングが苦手な猫や毛玉を吐き出せない猫におすすめの毛玉対策方法です。

毛玉除毛剤は動物病院でも購入できることがあるため、かかりつけの動物病院に確認してみましょう。

スキンシップをとる

猫は暇なときやストレスを感じた際にグルーミングをします。

そのため、できるだけスキンシップを取って、一緒に遊んであげる時間を増やすと毛玉を吐く回数も減少するでしょう。

遊ぶ時間を取れない方の場合、猫が一人でも遊べるように部屋におもちゃを置いてあげることも効果的です。

また、遊ばなくてもそばにいてあげたり、優しくなでてあげる時間を増やしたりしても毛玉対策の効果があるでしょう。

毛玉をうまく処理して猫ちゃんの健康を守ろう

毛玉をうまく処理して猫ちゃんの健康を守ろう

本記事では、猫が毛玉を吐く原因や毛玉を上手に処理する対策方法を解説しました。

適度な頻度であれば、猫が毛玉を吐くことは単なる生理現象です。

しかし、毛玉を溜め込みすぎると、命に関わる病気になりかねません。

とくに、猫の中でも長毛の猫や老猫は要注意です。愛猫が健やかに過ごしていけるように、日々のブラッシングや食事に気をつけてください。