大切な家族の一員である愛猫にはいつまでも元気で健康に過ごしてもらいたいですね。猫は体調不良を隠す動物です。飼い主様の目には普通に見えても、実は病気を抱えていることもあります。飼い主様が異変に気づいた時にはかなり進行していて治療が難しいということもあります。

そこでおすすめしたいのが猫の健康診断、キャットドックです。今回は、キャットドックではどのような検査を受けられるのかを解説します。受けるべき頻度や、気になる費用についてもお伝えします。連れて行く時の注意点や、具体的な申し込み方法から当日の流れについても詳細に解説しますので、是非参考にしてみてください。

猫の健康診断 キャットドックとは?

キャットドックとは、猫の定期的な総合健康診断のことです。人間でも「人間ドック」がありますね。キャットドックでどのような検査を行うかは、動物病院ごとに異なりますが、ほとんどの病院で下記の検査を実施します。

問診

猫のフードや生活環境などを飼い主様から聞き取ります。愛猫に何か気になることがあったり、相談したいことがあればこの時に伝えましょう。

視診・触診・聴診

獣医師が猫を目で見て、手で触り、聴診器で聞きます。目ヤニの有無、歩き方の違和感や、リンパ節などの腫れ、肺の雑音などを確認できます。

尿検査・便検査

尿検査では、尿のPHや尿糖、尿比重などの確認をしたり、尿中の細菌や結晶の有無をチェックします。便検査では、寄生虫の有無や血液が混ざっていないかなどを検査します。

血液検査

血液を採取し、遠心分離機で血球成分と上澄みの部分に分離します。血球成分では赤血球や白血球の数などから貧血や感染の有無を確認します。上澄み成分では「血液生化学検査」という検査を行い肝臓や腎臓などの各臓器の数値を確認します。

レントゲン検査

レントゲン検査は、骨や関節の異常を早期に発見できます。その他心臓、肺、胃、肝臓、腎臓などの各臓器の大きさや形、位置を確認します。腹水や胸水、消化管内のガス貯留の多さも見ることができます。誤飲してしまった異物や結石などが見つかることもあります。

エコー検査

各臓器の状態を確認するために行います。レントゲン検査では他の臓器に隠れて見えなかった異変を見つけることができたり、レントゲンにうつらない結石も確認できます。腫瘍の有無や性状、膀胱内の様子も詳細に確認することができます。

猫の健康診断は定期的に必要?

そもそも猫に定期的な健康診断であるキャットドックは必要なのでしょうか?答えは「必要」です。動物は言葉にして自分の体調の異変を伝えられません。特に猫は野生動物としての一面を残しており自分の不調を隠すのが上手です。検査によって数値で健康状態を確認することは猫の健康にとって大切です。ここでは猫の健康診断の必要性と、何歳からどのくらいの頻度で受診すれば良いのかについてお伝えします。

何歳から?|どのくらいの頻度がベストか

子猫をお迎えしたら、まず避妊去勢を考える生後6か月ごろに健康診断を受けましょう。子猫期は体調を崩しやすい時期でもありますし、飼い主様の不安も大きい時なので、心配なことがあればタイミングには特にこだわらず、こまめに受診する方が良いでしょう。子猫の時から動物病院に慣れてもらうことも大切です。動物病院では、できるだけ獣医師やスタッフに頼んでおやつをあげてもらうと動物病院嫌いにならずに成長します。

1歳を過ぎたら年に1度の頻度で健康診断を受けましょう。シニア期になる7歳を過ぎたら半年に1回がベストです。シニア期になると、猫も各臓器の機能が落ちてきます。猫では特に腎臓などの尿路系の疾患が増えてきますので、成猫の時期よりも多めの健康診断が安心です。健康診断を受けるタイミングや回数は、愛猫の健康状態の変化を気にしながら決めましょう。

定期的に受診したほうがいい理由

猫の健康診断を定期的に受診した方が良い理由は本章の冒頭でもお伝えしましたが、その他初期症状が少なく本人も気づかないうちに病気が進行してしまうケースもあるため必要です。例えば、保険会社アニコムの出している統計(book_202012_2_1.pdf (anicom-page.com))では、猫がかかりやすい疾患のランキングは下記のようになっています。

  • 1位 消化器疾患(15.5%)
  • 2位 泌尿器疾患(14.0%)
  • 3位 皮膚疾患(9.4)%

中でも、2位の泌尿器疾患は、腎臓の病気や尿石症、膀胱炎などが代表です。これらは初期の頃はほとんど症状がないことが多く、飼い主様が異変に気づいた時にはすでに深刻な状況になっている場合があります。

しかし、尿検査や血液検査には如実に異変が出るため、重症化する前に対策を取ることができます。高齢猫に多い甲状腺機能亢進症や糖尿病などの病気も、初期での症状が少なく外からは気づきにくい病気です。これらも血液検査などでは判明します。初期症状がわかりにくい病気の早期発見のためにも、定期的な健康診断が必須なのです。

検査内容や費用について

ここでは健康診断の具体的な検査内容と費用についてお伝えします。検査内容や費用については各動物病院ごとの設定があるため、詳細は動物病院に直接聞くのが良いでしょう。

検査内容

上でもお伝えしましたが、健康診断の主な検査内容は「問診」「視診・触診・聴診」「尿検査・便検査」「血液検査」「レントゲン検査」「エコ―検査」などです。検査は項目が多ければ多いほど安心だと捉えがちですが、そうではありません。例えばエコー検査はお腹にジェルを塗り比較的長時間押さえつけられるため、猫にとってはストレスです。必ずしも毎年受ける必要はありません。

「血液検査」にはオプションでホルモン測定などを加えることができますが、特に異常がなければ7歳までは必要ないでしょう。一方、尿検査・便検査、血液検査、レントゲン検査などは猫への負担も小さいうえに、病気の早期発見にとても有用なため、特に成猫では必ず受けることをおすすめします。年齢や愛猫の健康状態に応じた検査内容を獣医師と相談して決めるのがベストです。

費用について

費用は動物病院ごとに設定が異なります。参考として平成27年に日本獣医師会が出した「家庭飼育動物(犬・猫)の診療科実態調査 調査結果」をご紹介します。

この調査では、健康診断の診察料で最も多い順に

  • 1位 10,000円~12,500円未満
  • 2位 7500円~10,000円未満
  • 3位 12,500円~17,500円未満

となりました。

多くの病院では下記のような料金設定が多いと言えるでしょう。

  • 診・触診・一般血液検査・尿検査などの一般的な健康診断:5,000円~10,000円未満程度
  • 上記に加え、レントゲン検査を行う場合:20,000円未満程度
  • さらにホルモン測定やエコー検査を行う場合3,0000円~50,000円程度

猫を健康診断に連れていく上での注意点

猫を健康診断に連れていく場合、当日の朝は食事を与えないなど、予約時の指示を必ず守りましょう。予約時から当日まで時間があくと忘れてしまうことも多いので、目につくところにメモを貼っておくと良いでしょう。持病で薬を飲んでいる場合は予約時に普段通り飲ませて良いかどうかを確認する方が安心です。愛猫の体調に異変がある場合、事前に獣医師に伝えたいことをメモにまとめておくことをおすすめします。写真や動画で説明した方がわかりやすそうな場合、写真や動画もすぐに見せられるように準備しましょう。愛猫は必ずケージに入れて連れて行きます。ケージに入れるのに時間がかかる場合もあるので、予約の時間に余裕をもって準備しましょう。

動物病院に行く際に感じる猫のストレスについて

移動中のストレス緩和方法

車や徒歩での移動時のストレスは「安全毛布」をキャリーバッグに入れることで緩和させましょう。「安全毛布」とは子猫の頃から使っていたり、お気に入りで臭いを嗅ぐだけで安心できるような毛布やタオルのことです。飼い主様の臭いで落ち着く猫には、飼い主様の服を入れてあげても良いでしょう。

キャリーバックは受診の際に必須です。狭くて暗い場所が安心する猫にとって移動中はできるだけ外を見ないことがベストです。キャリーバックの中に安全毛布を入れ、さらに外から軽めのタオルをかけるなどの目隠しを行うことでストレスを緩和させられます。

キャリーバックには色々なタイプがありますが、外が見えすぎる窓付きのものはおすすめできません。キャリーバックではなく、段ボールで代用したりハーネスを付けて抱っこというのもNGです。

普段は落ち着いている愛猫でも、一歩外に出ると何かに驚いて飛び出してしまったり、上から物が落ちてくるなど危険がいっぱいです。必ず強度のある専用のキャリーバックを使いましょう。

病院内でのストレス緩和方法

動物病院に着いたら、待合室ではできるだけ他の飼い主様との距離を取りましょう。キャリーバックにはタオルをかけたままにします。キャリーケースを置く場所は、扉側を壁や椅子など重いものに密着させるのがおすすめです。万一誰かがキャリーケースを蹴ってしまうなどのトラブルがあっても、簡単に扉が開かないからです。

飼い主様が座っている足元でも良いでしょう。置く場所がなく、膝の上に置く場合は、つい何度もタオルをめくって愛猫の様子を見てしまうことがありますが、猫にとって普段と異なる環境でじろじろみられることはストレスです。できるだけそっとしておきましょう。専用の置き場所が指定されている病院もあるので、病院の案内に従いましょう。

帰宅後のストレス管理

健康診断は、普段慣れないことをたくさんされるため、愛猫はぐったり疲れています。帰宅後は濡れタオルで体を拭き、病院や他の動物の臭いを消してあげましょう。飼い主様自身もシャワーを浴びて着替えるとより良いでしょう。帰宅後しばらくは、猫は飼い主様を避けたり、反対にそばを離れなくなることもあります。どちらも一過性のものなので、神経質になりすぎなくて大丈夫です。長くても2~3日で元の様子に戻るでしょう。

申し込みから結果報告までの流れ

ここではキャットドックを受ける時の、一般的な申し込みから結果報告までの流れを具体的にお伝えします。

申し込み

かかりつけの病院や健康診断(キャットドック)を行っている動物病院に連絡をしましょう。希望の日時と検査内容を伝えて申し込みします。受けさせるべき検査がわからない時はその旨を伝えて相談しましょう。費用に関しても申し込み時に聞いておくと安心です。

通院

申し込み時の注意事項に従い、当日は朝ごはんを食べさせないなどに気を付けましょう。当日の便や尿を持参するように指示された場合も忘れないように準備しましょう。

検査

問診、視診・触診・聴診のあいだは飼い主様が付き添います。その後は猫を預けます。多くの病院では、検査に約4~5時間かかるため、午前に預けて午後に迎えに行くことになるでしょう。

結果報告

迎えに行った時に、その場でわかる検査結果を聞くことができます。検査項目によっては当日中に結果が出ず、後日になる場合もあります。検査の結果、再検査が必要だったり治療が必要な場合は獣医師から詳細な説明を受けます。

まとめ

不調を隠すのが上手な猫の体調の異変に飼い主様ひとりで気づくことは大変難しいです。定期的な健康診断、キャットドックを受けることで、数値という客観的なデータとプロである獣医師の目で診断を受けることが大切です。病気は早期発見すれば治療もスムーズなことが多いです。1年に1度は、愛猫に少し我慢してもらってぜひ健康診断、キャットドックを受けましょう。