猫と生活している中で、突然死による別れは最も避けたいことですね。突然死の原因を知りたい飼い主様や、できる限りの予防をしたいと考える飼い主様も多いでしょう。猫の突然死の多くは「肥大型心筋症」によるものだと言われています。
今回の記事では肥大型心筋症について詳しく解説し、その他の突然死の原因や、突然死の予防方法、猫が亡くなる前の前兆やペットロスについても詳しくお伝えします。
目次
猫の突然死はなぜ起きる?その原因の多くは「肥大型心筋症 」
猫の突然死の原因として、「肥大型心筋症」という病気がよく挙げられます。はじめに肥大型心筋症とはどのようなものなのかを解説します。
「肥大型心筋症」とは
心筋症というのは、心臓の筋肉自体に異常が起こり、心臓の機能が低下する病気のことです。進行性の病気で、一度なってしまうと元に戻すことはできません。心筋症には「肥大型」「拘束型」「拡張型」の3つがあり、猫に多いのが「肥大型心筋症」です。
肥大型心筋症は、心臓の中で全身に血液を送る役割を持つ「左心室」の心筋が進行性に分厚くなる病気です。心筋が徐々に厚くなると、左心室自体は徐々に狭くなり、流入できる血液量が減り、全身に十分な血液を送れなくなります。
狭くなった左心室は、肺からの血液を受け取る役割を持つ「左心房」からの血液を十分に受け止めることができません。左心房や肺にも血液が溜まってしまうのです。猫の場合、溜まった血液によって血栓が発生し「動脈血栓塞栓症」という病態を引き起こし、これが猫の突然死の大きな原因となります。
猫の肥大型心筋症の原因は明らかではありません。メインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘアなどの種類では、遺伝的要素が関係することが知られています。ただし、品種に関係なく後発する病気で、若い猫でもリスクがあります。
肥大型心筋症でよく見られる症状
心筋症は、初期では症状がほとんど出ません。病気が進行し、心不全、肺水腫、胸水などの症状が出始めると、運動をしなくなったり、口呼吸をすることが増えますが、この時にはすでにかなり進行している可能性が高いです。
突然死の原因となる「動脈血栓塞栓症」は病気が末期にならなくても発生するため、なんの前触れもなく突然死してしまうこともあるのです。
そのほかに考えられる猫の突然死の原因
肥大型心筋症以外にも、猫の突然死の原因として考えられる病気がいくつかあります。ここでは、肥大型心筋症以外の突然死の原因についてもお伝えします。
フィラリア症
フィラリア症と聞くと、犬の病気というイメージが強いかもしれませんが、猫も感染します。フィラリア症は、蚊によって媒介されるフィラリアという寄生虫によって引き起こされる病気です。フィラリアが猫の肺動脈や心臓に寄生すると、肺や心臓へのダメージが大きく、突然死の原因となる可能性が指摘されています。
フィラリア症は、はっきりとした症状が出ないことも多く、発見が難しい病気のひとつですが、咳をしたり、吐いたり、食欲不振などの異変が見られることもあります。
心筋梗塞・脳梗塞
「梗塞」とは、血管が狭くなったり詰まったりすることです。心臓の血管が詰まると「心筋梗塞」、脳の血管が詰まると「脳梗塞」となります。猫の心筋梗塞は、はじめにお伝えした肥大型心筋症が引き金となることが多いです。
脳梗塞は、原因がはっきりとしないことも多いですが、何らかの基礎疾患を持つ猫に発生することが多いと言われています。脳梗塞では、体のどこかに麻痺がみられたり、吐き気や歩き方の異常が見られることがあります。
日常のなかにも突然死のリスクは潜んでいる
病気以外にも、猫の突然死の原因はあります。ネギ類や観葉植物などによる中毒や、トリミング中の落下などによる事故、シャンプーでのショック死なども起こりえます。洗濯機に入り込んでいたことに飼い主様が気づかずに洗濯機を回してしまったり、お風呂場の浴槽に落ちてしまうなど、水の事故が発生することもあります。日常のなかにも猫の突然死のリスクが潜んでいるのです。
猫の突然死を予防するには
恐ろしい猫の突然死は、できるだけ防ぎたいですね。ここでは、飼い主様にできる猫の突然死の予防方法についてお伝えします。
普段から猫の様子をよく観察しておく
もっとも大切なことは、普段から猫の様子をよく観察して、食欲や動きなど、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院を受診することです。
猫は自分の体調不調を上手に隠す動物です。多少の苦痛は、飼い主様にも察知させないように振る舞うことが多いのです。しかし、日頃からよく観察しおけば、猫のほんのわずかな異変にも気づくことができるでしょう。
健康的な生活をさせる
健康的な生活のために、猫がストレスを感じにくい環境を整えることも大切です。高所が好きな猫に合わせてキャットタワーを設置したりキャットウォークがあると良いでしょう。猫用の多頭飼いの場合は、それぞれの猫がひとりで安心してリラックスできるようなハウスも必要です。
肥満にならないような体調管理も徹底しましょう。良質な食事はもちろん、運動不足解消のために飼い主様がおもちゃで遊んであげたり、日常生活の中にも高低差をつけると良いでしょう。
室温や湿度など、住居の環境にも注意が必要です。特に、子猫や老猫がいる場合は、暑さ・寒さが大敵です。室温計などを利用して、室温を把握できるようにしましょう。
定期的に健康診断を受ける
定期的な健康診断で、猫の不調をいち早く見つけられる可能性があります。特に、猫の突然死の原因として最も多い肥大型心筋症は、一度発症すると完治はさせられないものの、薬によって病気の進行を遅らせることができます。早期の発見がなにより大切なのです。
健康診断の際には、心臓のエコー検査を行うことで、肥大型心筋症を発見できることも多いです。また、血液検査では、BNPという検査項目によって、心臓の異変がわかることがあります。ただ健康診断を受けるだけでなく、獣医師としっかりと話し合い、必要な検査項目を決めると良いでしょう。
猫が亡くなる前の前兆はある?
猫は亡くなる前になんらかの前兆をみせてくれるのでしょうか。注意深く観察して、次のような様子がみられた場合、猫がかなり深刻な体調不良をおこしている可能性が高いです。
- 突然後ろ足が麻痺したようになったり、後ろ足が冷たくなる
- 呼吸が乱れる、口呼吸をしている
- うまく歩けなかったり、歩こうとしてすぐにへたりこんでしまう
- 叫ぶように苦痛を訴える鳴き方をする
- 人目につかない場所に隠れたり、飼い主様の呼び方に反応しない
- 体調不良だったはずの猫が、突然活動的になり元気になったように見える
- 全く食事を取らず、水も飲まなくなる
- いつも以上に甘えたり、いつもと異なる甘え方をする
猫にこのような様子がみられた場合、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
愛する猫の突然死|ペットロスについて
愛猫を突然死で失った場合、ペットロスに陥り心身に不調が出る飼い主様も多いです。ペットロスは時間が解決してくれることも多いため、無理に元気を出そうとしたり、日常生活を送ろうとせず、ゆっくりと回復を待つと良いでしょう。
愛猫を供養してしっかりお見送りすることも、ペットロスを癒す一歩になることもあります。自分の気持ちを信頼できる人に話したり、猫の形見のアイテムを作ったりすることも良いでしょう。
防げる突然死もある。普段の観察をこまやかに。
突然死は飼い主様の心にも大きなダメージを与えます。突然死の原因には、どうしても防ぎきれない不慮の事故などもありますが、日常の観察によって早期発見をすれば、回避できるものもあります。恐ろしい肥大型心筋症も、早期発見によって病気の進行を上手にコントロールできている猫もたくさんいます。今回の記事も参考に、改めて愛猫が健康的な生活を送れているか、定期的に適切な健康診断を受けているかなどを振り返ってみるのも良いでしょう。