犬が口をパクパクしていることに気づいたとき、理由や対処法を知りたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

犬が口をパクパクさせる原因には、何らかの病気や誤飲、歯の生え変わりなど体の異変に起因するものと、ストレスや興奮、犬同士のコミュニケーションなど心理的なものがあります。

今回の記事では、犬が口をパクパクさせる原因を解説し、予防法や対処法についてもご紹介します。

犬が口をパクパクする9つの原因

犬が口をパクパクする9つの原因

犬が口をパクパクする原因としては、大きく分けると

  1. 病気や誤飲、歯の生え変わりなど体の異変に起因するもの
  2. 心理的なもの

の2つに分けられます。

以下では、犬が口をパクパクする主な原因を9つ解説します。

誤飲や誤食をしている

犬が異物を食べてしまった場合、口をパクパクさせることがあります。

おもちゃや毛糸など本来食べられないものの誤飲・誤食だけでなく、犬は食べ慣れたものでも誤飲・誤食しやすい動物です。

誤飲・誤食の場合は、大量のよだれや、吐く仕草、呼吸困難などの様子がみられることが多いでしょう。

誤飲・誤食は命に関わる場合もあります。

誤飲・誤食の可能性がある際は、飼い主様自身が吐かせるなどの対処をする前に、迅速に動物病院に連絡して指示を受けましょう。

誤飲・誤食したものがはっきりしている場合は、成分がわかりやすいように、パッケージなどを動物病院に持って行くと良いでしょう。

歯の生え変わりの時期である

歯の生え変わり

犬は生後4~6ヵ月頃から乳歯の生え変わりが起こります。

乳歯が生えかけている時期の子犬が口をしきりにパクパクさせたり、おもちゃなどを執拗に噛んだりする場合は、歯の生え変わりに伴って口内に違和感を持っている可能性があります。

歯の生え変わりの時期は、フードが食べづらいなど普段と異なる様子がみられるかもしれません。

歯の生え変わりの時期は、抜けるべき乳歯が残る「乳歯遺残」などのトラブルが起こる場合もあります。

歯の生え変わりの時期は、とくに子犬の様子をこまめに観察し、異常がみられた場合は動物病院に相談しましょう。

興奮している

犬は興奮したり、ストレスや不安を感じたりした場合に口をパクパクさせることがあります。

たとえば、飼い主様がご飯やおやつの準備をしたり、散歩に行く素振りを見せたりすると、「早く食べたい!」「早く遊びに行きたい!」という気持ちが高まり、口をパクパクさせるかもしれません。

ストレスや不安を感じた場合は、自分を落ち着かせるためのカーミングシグナルとして、口をパクパクさせることがあります。

上記のような場合、同時にあくびをしたり、伸びをしたりするなどのしぐさもみられることが多いでしょう。

敵意がないことを伝えている

犬同士は、色々な方法でコミュニケーションを取ります。

相手に敵意がないことを伝えるために口をパクパクさせたり、相手が興奮している場合に落ちつかせるカーミングシグナルとして口をパクパクさせたりすることもあるでしょう。

たとえば、散歩している途中で他の犬に会った場合や自宅に来客があった場合などに、相手に向けて口をパクパクしていれば「仲良くしたい」と敵意がないことを伝えています。

犬同士のコミュニケーションの場合は、口をパクパクさせるだけでなく、鼻にしわを寄せて歯をかちかち鳴らしたり、ゆっくりまばたきをしたり、耳を寝かせるなどのサインも相手に送ります。

発情期の影響している

雌犬が発情すると、フェロモンにより雄犬が興奮することがあります。

フェロモンは遠く離れた場所にも届くため、雌犬の姿が見えなくても、雄犬が影響を受けるかもしれません。

雌犬の発情の影響を受けた際、雄犬は自分を落ち着かせるために口をパクパクすることがあります。また、発情期の雌犬自身が発情のストレスにより口をパクパクすることもあります。

雌犬自身の発情期のストレスや、雌犬の発情の影響による雄犬のストレス軽減のため、犬をお迎えしたら避妊・去勢手術を検討するのも良いでしょう。

食後のフードが口内に残っている

食後に口をパクパクしている場合は、歯の周りや口の中にあるフードが気になっており、口をパクパクすることにより食べカスを取り除こうとしています。

また、フードだけでなく、口の中に毛が入っていたり異物が入ったりしていると口をパクパク動かすでしょう。

口の周りの毛が長い犬はとくにフードを食べる際に口の中に入りやすいため、口の周りは短くカットするか、口の中に異物が入っていないか定期的に確認してあげてください。

気持ちを落ち着かせようとしている

物理的に口の中が気になる以外にも、カーミングシグナルとして気持ちを落ち着かせようと口をパクパク動かす場合があります。カーミングシグナルは、動物のボディランゲージのことです。

犬は自分を落ち着かせようとするために、また他の犬や人間に対して攻撃的でないことを示すためにあらゆるカーミングシグナルを出します。

カーミングシグナルの一種として口をパクパクさせることがあるため、愛犬に問題がなければリラックスしている証拠といえるでしょう。

リラックスしている

犬が口をパクパクする行動は、寝る前やリラックスしているときに見られる行動の一つです。口をパクパクしている様子は自己満足であり、リラックスして安心感を得る行動でしょう。

上記のような行動は基本的に問題ないはなく、犬がリラックスして心地良い状態であることを示しています。

ただし、口をパクパクさせるような行動が過度になったり、体重の変化や食欲不振、異常な排便・排尿があったりする場合は獣医師に相談しましょう。

夢を見ている

寝ている間に口をパクパクする様子が見られる場合は、夢を見ている可能性があります。犬は人間と同じようにレム睡眠(急速眼球運動睡眠)が起こり、レム睡眠の間は夢を見やすい状態です。

そのため、寝ている間に犬が走ったり、吠えたり、口をパクパクさせていたりする場合は、夢の中で何かを食べている、追いかけている、遊んでいるなどの可能性が考えられます。

ただし、寝ているときに異常な行動があり、夢を見ていると断定できない場合は、事前に動画を撮って獣医師に診てもらうようにしましょう。

犬が口をパクパクする3つの病気

犬が口をパクパクする3つの病気

犬が口をパクパクする際は、心理的な原因の他に病気が隠れている可能性があります。

口をパクパクさせる行動に対する病気を理解していなければ、病気の発見に遅れることも考えられるため注意が必要です。以下では、犬が口をパクパクさせる際に考えられる3つの病気について解説します。

てんかん

脳の神経細胞が異常な電気信号を繰り返し発し、それが痙攣発作などの症状として現れる脳の慢性的な病気のことを「てんかん」といいます。

てんかんの症状は、全身に痙攣や硬直が起こる「全般発作」だけでなく、口をパクパクさせるなどの「部分発作(焦点性発作)」も含まれます。

部分発作は脳の一部が異常興奮することで起こるため、全身発作よりも判断が難しいかもしれません。

そのため、愛犬が口をパクパクさせる様子でてんかんの疑いがある症状が見られた場合は、事前に症状の動画を撮ったうえで動物病院を受診して獣医師に相談することが大切です。

気管支炎

口をパクパクさせ、呼吸困難の症状が見られたら気管支炎の可能性があります。

呼吸困難の症状として、ゼーゼーと息苦しそうな咳やカッカッと吐き出すような咳が見られた場合、気管支炎である可能性が高いといえます。

気管支炎を放置すると肺炎となり、入院治療や命の危険にもつながるでしょう。気管支炎は早期に治療すると内服薬のみで完治することが多いため、早めに動物病院を受診すると良いです。

フィラリア症

フィラリア症は、蚊を通して犬の心臓や肺動脈に寄生する寄生虫により引き起こる病気です。

フィラリアは成虫になると30cm以上の糸状の寄生虫で、フィラリアが寄生すると血流が悪くなり、身体に悪影響を与えます。

フィラリア症の症状は、元気や食欲がなくなり、咳をする、痩せる、息苦しそうにしている、口をパクパクするなどです。

また、症状が進むとお腹が膨らんだり、赤い尿をするようになったりすることもあります。

フィラリア症の症状は、初期症状であれば気づきにくく、見過ごしてしまうこともあるでしょう。

しかし、放置してしまうと死に至ることもある恐ろしい病気で、突然死の可能性も考えられます。

口をパクパクしている様子を見かけたら、フィラリア症の初期症状の可能性もあるため、他の症状も当てはまるかどうか確認してみて獣医師に相談してみましょう。

口内の病気

口内炎や歯周病など、口内に何らかの病気があると、違和感や痛みのために口をパクパクさせることがあります。

口内の病気の場合、犬がフードを食べづらそうにしたり、食べるのに時間がかかったり、食欲が落ちることがあります。

口臭が気になったり、よだれが増えたりするなどの異変に気づくことも多いでしょう。

また、犬の口の中は、良性の腫瘍、悪性腫瘍、炎症に伴う腫瘤などが起こりやすいです。とくに、悪性メラノーマ、扁平上皮癌、線維肉腫などの悪性腫瘍などは、気をつけなければいけません。

なかでも発症しやすい悪性腫瘍はメラノーマで、メラニン色素を作る細胞がガンになったもので口の中で発症しやすいです。

また、歯周病も犬の中では多い病気で、3歳以上の犬の約80%がかかっているといわれている病気です。

歯周病は、歯垢で繁殖した歯周病菌により歯茎に炎症が起こる病気を指します。歯周病が進行すると歯が抜け落ちることもあるため、注意が必要です。

犬は歯垢が溜まりやすく、3日程度で歯石が形成されるため、普段から歯のケアを徹底することで口の中の病気を防げるでしょう。

口をパクパクするだけでなく、体に何らかの異常がみられる場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

口をパクパクさせやすい犬の特徴

口をパクパクさせやすい犬の特徴

口をパクパクする仕草が出やすい犬は、以下の特徴があります。

好奇心旺盛な犬

好奇心旺盛な犬は散歩中や地面に落ちているものに興味を持ち、口に入れる可能性があります。

落ちているものを食べる癖がある犬は、雑草や土がついた小石を口にして、不快感から口を動かすかもしれません。

そのため、犬にはものを拾わない訓練をすると良いでしょう。口をパクパクさせること自体に問題はありませんが、散歩中に害のあるものを誤飲してしまう可能性があります。

命に関わるものを誤飲しないためにも、普段から訓練して注意するようにしましょう。

永久歯が生える前の子犬

子犬の歯の生え変わり時期に口をパクパクと動かす行動は、歯茎のかゆみや痛みを和らげるためのものです。

子犬は約3〜7ヶ月の間に永久歯に生え変わりがあり、生え変わりの時期は不快感や痛みが現れます。

子犬にとって適切な噛む玩具やガムを与えると、不快感を軽減できるかもしれません。また、口をパクパクと動かす行動は犬からのサインでもあります。

飼い主様は、愛犬の背景を理解し、必要に応じて歯のケアを行ってあげましょう。

歯周病のある犬

歯周病はほとんどが犬の口腔環境の悪化から引き起こされます。

とくに以下の犬は歯周病のリスクが高まります。

  • 小型犬
  • 乳歯が残存している犬
  • 高齢の犬
  • 免疫力が低くなっている犬

また、定期的な歯磨きがされていない犬も、口内のトラブルが生じやすい状態です。

腫瘍のリスクがある犬

犬の口腔内には、以下の部位にさまざまな種類の腫瘍が発生する可能性があります。

  • 歯肉
  • 口蓋などの粘膜
  • 唾液腺
  • 歯槽骨
  • 軟骨組織

腫瘍のリスクがある犬は、中高齢犬や口腔内に傷や炎症を起こしている犬が挙げられます。犬の口腔内腫瘍の多くは悪性腫瘍であり、早期発見・早期治療が重要です。

犬が口をパクパクさせている際の緊急を要する症状は?

犬が口をパクパクさせている際の緊急を要する症状は?

犬が口をパクパクさせる場合、緊急な対応が必要となる状態が隠れているかもしれません。

たとえば、異物や薬品を誤飲して中毒症状を起こしている場合、口をパクパクさせるだけでなく、以下の症状が出ている可能性があります。

  • 意識低下
  • よだれ
  • 痙攣
  • 嘔吐

また、元気がない、食欲がないなどの症状も見られたら、異物を誤飲して吐き出そうとしているかもしれません。

明らかに異常な状態が継続して見られた場合は、夜間でも対応してくれる動物病院へ受診することをおすすめします。

犬の口をパクパクさせる動作に似たハエ噛み行動とは?

犬が空中を向いて、口をパクパクさせている時はありませんか。

空中に何も飛んでいないのにもかかわらず、犬が空中に向かってハエや小さな虫を噛んだり追いかけたりする様子を「ハエ噛み行動(フライバイト)」といいます。

犬は強いストレスを継続的に感じた場合に、同じ動きを何度も繰り返す行動障害が見られることがあります。

人間でいうと、イライラすると舌打ちをしたり、物に八つ当たりしたりするような行動と同じです。

ハエ噛み行動は「常同行動」または「強迫性障害」と呼ばれます。ハエ噛み行動も行動障害の一つとされており、愛犬が強いストレスを感じている可能性があるかもしれません。

瞬間的に行われている転移行動であれば問題ありませんが、行動を止めることなく継続的に行っている場合は注意が必要です。

また、脳の病気でもハエ噛み行動が見られることがあるため、ハエ噛み行動の様子を録画した動画を動物病院へ持って行くと良いでしょう。

犬が口をパクパクしないための予防法

犬が口をパクパクしないための予防法

上記で犬が口をパクパクする原因として、体調に起因するものと、心理的なものがあることをお伝えしました。

以下では、原因に対する各予防法を解説します。

口内の病気は、多くは日頃の口のケアで予防できることです。とくに歯磨きは大変有効な予防になります。

歯周病は歯磨きガムなどでは予防できず、ブラシによる歯磨きでしか予防できないため、犬をお迎えしたらすぐに歯ブラシに慣れてもらいましょう。その他の病気は、定期的な健康診断により、早期発見することが大切です。

ストレスなど心理的なことが原因で口をパクパクさせる場合、犬に日常的に大きなストレスがかかり続けると重篤な病気につながる場合があります。

普段の様子を観察して、犬が何に対してストレスを感じているかをしっかり把握しましょう。

たとえば、毎日の散歩で他の犬と出会うたびにストレスを感じるなら、散歩の時間帯やコースを変えるなど、できるだけ原因を取り除く工夫をすることが大切です。

犬が口をパクパクする際の対処法

犬が口をパクパクする際の対処法

犬が口をパクパクすることに気づいたら、まずは様子を確認することが大切です。確認するうえで、必要な場合は迅速に動物病院を受診しなければいけません。

以下では、犬が口をパクパクする際の対処法を解説します。

動物病院へ連れていく

犬がしきりに口をパクパクさせてよだれが大量に出ていたり、呼吸に異音が混じったりしている場合は、誤飲・誤食など緊急の対応が必要な場合があります。

動物病院に連絡し、応急処置の指示を受けたうえで受診しましょう。

下痢や発熱など、なんらかの症状を伴う場合はメモしておくと受診の際に有用です。

緊急性がない場合でも、口内の違和感などは放置すると重篤な症状につながる可能性があります。

犬がいつも口をパクパクさせる場合は、動物病院で口内などをしっかり検査してもらうと安心でしょう。

落ち着かせる

犬が興奮している場合、犬を落ち着かせるためにおすわりや伏せなどの指示を出してみましょう。

適度な運動も犬の気分転換になります。

発情期の雌は、興奮した雄犬が走ってきてトラブルになるなどの事態を避けるため、できるだけ他の犬と接触させないように散歩の時間やルートを工夫すると良いでしょう。

ストレスが溜まらないようにする

犬がストレスを感じた場合、口をパクパクさせることがあります。

環境の変化や家族構成の変化、他のペットとの対立など、変化は犬にとってストレスの原因になる可能性があります。

そのため、ストレスが溜まらないように、ストレス軽減をさせるような対策が必要です。

日常生活において一貫性を保ったり、適度に運動したり、コミュニケーションを取ってあげたりすることは、ストレス軽減に効果的でしょう。

口の中に異物がないか確認する

犬が口をパクパクする場合、まずは口の中に異物がないか確認することが重要です。歯や舌に食べ物のかけらや小さな玩具などが挟まっており、不快感から口をパクパクさせている可能性があります。

また、歯茎の腫れや出血、歯石など口腔内の病気の可能性もあるため、異物がある場合は即急かつ安全に取り除くことが必要です。

しかし、犬が不安そうにしている場合や自分で異物を取り除けない場合は、獣医師に相談しましょう。

無理に異物を取ろうとすると、犬にストレスを与え、怪我を引き起こすケースもあるため注意が必要です。

犬の口のパクパクは飼い主様へのサインを見逃さないようにしよう

今回は、犬が口をパクパクする原因や予防、対処法についてお伝えしました。犬が口をパクパクするのは、何らかの病気やストレスや心理的な可能性があります。

いずれにしても、これらのサインを見逃すと犬の健康に関わる可能性もあるため、飼い主様の日々の細やかな観察が大切です。

犬が口をパクパクする様子に気づいた場合はできるだけ早めに対応しましょう。愛犬が口をパクパクさせていた場合、ぜひ本記事を参考にしてみてください。