野良猫を家庭にお迎えした際、猫が外に出たがったり、生活に慣れずにストレスが溜まっている様子に気づくことがあるでしょう。「室内飼いはかわいそうだ」と聞き、悩む飼い主様もいるかもしれません。健康面を考えると、完全室内飼いがベストです。一方で、室内飼いではストレスが溜まることもあります。今回の記事では、猫の外飼いのリスクや、お迎えした野良猫が外に出たがる理由、室内飼いでのストレスや、ストレス解消法などをお伝えします。

猫は外飼いと室内飼いのどちらが幸せ?

猫は外飼いと室内飼いのどちらが幸せ?

環境省をはじめ、各自治体でも猫 の飼育は完全室内飼いを推奨しています。野良猫を保護して家庭猫にする場合も、完全室内飼いが良いとされます。一方で「自由に外に出られないのはかわいそう」という意見もありますね。猫にとって外飼いと室内飼いのどちらが過ごしやすいのでしょうか。

外飼いは自由もあるが寿命が短い

猫は独立心が強く、単独行動を好む動物です。野良猫は、自分のなわばりの中を自由にのびのびと歩き回るため、ストレスが溜まったり、運動不足になることはありません。一方で、屋外での暮らしには多くのリスクがあります。ほかの猫との接触による感染症(猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルス)や、ほかの猫との闘争での怪我、交通事故など危険はさまざまです。

外に出る猫と出ない猫では、平均寿命にも差があります。日本ペットフード協会の「令和4年 全国犬猫飼育実態調査」によると、「外に出る」猫の平均寿命は14.24歳、「外に出ない」猫の平均寿命は16.02歳でした。外に出ない猫の方が長生きなのです。

完全室内飼いのデメリットは?

完全室内飼いにすることで、猫を病気やケガから守り、長生きさせられる可能性が高いと言えます。一方で、でデメリットとしては、運動不足になりやすいことが挙げられます。また、本来の狩猟欲求を満たすことができないことや、飼い主様や同居猫、他のペットなどとの関わりの中でストレスが溜まります。こうしたデメリットを解消するためには、猫がしっかり運動でき、できるだけストレスフリーに暮らせる環境の工夫が必要です。

野良猫が外に出たがるのはなぜ?室内飼いによるストレスはある?

野良猫が外に出たがるのはなぜ?室内飼いによるストレスはある?

野良猫を家庭猫にしようとしても、外に出たがって困るという飼い主様も多いでしょう。ここでは、野良猫が外に出たがる理由や、室内飼いによるストレスについてお伝えします。

猫には強いなわばり(テリトリー)意識があるから

ライオンは別ですが、一般的に猫科動物の特性は、単独行動で自分のなわばりを作ることです。野良猫や外飼いの猫は、自分のなわばりに他の猫が入ってこないように、見回りや点検を欠かしません。そのため外での生活から完全室内飼いに移行した際は、自分の外のなわばりの様子が気になって鳴いたり、外に出たがったりすることがあるのです。

ほとんどの猫は、家庭で暮らすうちに自分のなわばりは家の中だと認識します。猫の性格にもよりますが、なわばりの外である屋外などには出たいとは思わなくなり、家のなかでだけで満足して暮らせるようになると言われています。

室内飼いでのストレスが生まれる場合もある

上でもお伝えした通り、室内飼いではストレスが生まれることもあります。猫のストレスサインは、主に「表情やしぐさ」・「行動」・「体の症状」という3つに分かれます。目を見開き、瞳孔が開くのは表情に出るストレスサインです。過剰なグルーミング、トイレの外で排尿排便をする、激しく鳴く、などは行動に出るストレスサインです。食欲低下、下痢や便秘、嘔吐、被毛や皮膚トラブルは体の症状に出るストレスサインです。

ストレスサインは、病気や怪我との区別が難しいこともあります。まずは動物病院を受診し、病気や怪我がないことを確認しましょう。体に問題がないにも関わらずこのような状態が続く場合、放置すると命に関わる病気につながる可能性もあります。環境の改善で猫のストレスを取り除きましょう。

野良猫を室内で飼う場合の注意点

野良猫を室内で飼う場合の注意点

野良猫を保護して家庭猫としてお迎えする際は、猫と飼い主様双方が安心して暮らせるように注意すべき点があります。ここでは野良猫をお迎えした際に飼い主様がすべきことを詳しく解説します。

ノミやダニ、感染症などのチェックをする

保護団体などを経た猫の場合、健康状態はすでに確認されています。個人で野良猫を保護した場合、まずは動物病院に行きましょう。野良猫は、ノミ・ダニなどの外部寄生虫に寄生されていることが多く、感染症に感染している可能性も高いです。わかりづらい場所に怪我をしている可能性もあります。

マダニに感染した猫は、人にも致死的なダメージを与えるSFTSという恐ろしい感染症 にかかっている可能性もあります。マダニ寄生を受けている猫や、体調が悪そうな猫を保護する際は、保護団体などの専門機関を頼りましょう。保護した猫が落ち着いたら、獣医師と相談して、不妊手術や予防接種などを行うことも大切です。

野良猫が慣れるまでは環境に配慮する

自宅でほかにも猫を飼っている場合、感染症の有無や先住猫との相性が分かるまでは、スペースを分けて生活させましょう。慣れるまでケージに入れておくと、猫本人も安心できますし、危険な場所に入り込む事故も防げます。脱走の予防も重要です。玄関にゲートを設置したり、網戸専用の柵を設置するなどの工夫を行いましょう。

シャンプーや来客、大きな音(音楽)などの刺激は、人間との暮らしに慣れていない野良猫にとって大きなストレスになります。猫が生活に慣れるまではできるだけ家の中を静かに保ちましょう。

野良猫を室内で飼う場合のストレス解消法

野良猫を室内で飼う場合のストレス解消法

上でもお伝えした通り、野良猫を室内で飼育するとストレスが発生することもあります。ここでは、猫のストレスを解消する方法をご紹介します。

ストレス解消の方法

猫のストレス解消のためには、猫の習性を理解した環境作りが重要です。たとえば、猫は高い場所が安心します。キャットタワーなどは、上下運動ができて運動不足の解消にもなるため最適です。窓の外を見ることで刺激を受けて退屈を感じにくくなるため、窓際にキャットタワーを置くと猫にとってはより良い環境となるでしょう。

猫は狭くて暗い場所に隠れることも好きです。キャットハウスや猫ちぐら、段ボールをトンネル状に置いたものなどを設置して、いつでも隠れられるようにしましょう。爪とぎも猫のストレス解消のために大切な習性です。適切な爪とぎを用意しましょう。狩猟本能欲求を満たすために、おやつや餌を投げて与えることも猫のストレスが緩和されます。猫じゃらしなどを使って飼い主様が疑似狩猟を体験させてあげることもストレス解消に有効です。

慣れるまでには時間が必要

猫の性格や年齢にもよりますが、一般的に屋外での生活が長い成猫の場合、家庭にお迎えしたあとは、慣れるまでに時間がかかることが多いです。できるだけ静かで暗い場所に猫の居場所を作り、気が済むまでひとりにさせておくことが望ましいでしょう。コミュニケーションは、猫が求めてきた時のみにとどめることが大切です。

気長に待っていれば、必ず猫は飼い主様に心をひらく日がきます。なかなか触らせてくれなかったり、ストレスが溜まっていそうだからといって「かわいそうだから外に戻そう」という考えは、猫の環境をジェットコースターのように変化させます。猫にとって大きなストレスとなるため避けましょう。

まとめ

飼い猫を外に出すかどうかについては、色々な考え方があります。猫の健康を考えると、外でのさまざまな危険から猫を守ることができる完全室内飼いがベストだと言えるでしょう。一方で、完全室内飼いではストレスが溜まることも解説しました。猫の体の健康を守るだけでなく、精神的なストレスも取り除くためには、飼い主様の配慮が欠かせません。猫本来の習性についてよく知り、今回の記事も参考にして、より良い環境を提供できるように工夫しましょう。