猫が後ろ足をひきずっていたり、後ろ足がふらついている時、飼い主様は怪我なのか、加齢による筋力低下によるものなのかと心配になりますね。猫の後ろ足の異常の原因としては、主に筋力低下、心臓や脳などの病気、足腰の疾患や怪我、という3つの可能性が挙げられます。自己判断をせずに、まずは動物病院を受診しましょう。今回の記事では、猫の後ろ足に異常がある場合の原因を細かくお伝えします。異常に気づいた時の対処法や、筋力低下の予防など飼い主様にできることも解説します。

原因①老化などによる筋力低下

老化などによる筋力低下

猫の後ろ足のふらつきの原因としては、筋力低下が挙げられます。筋力低下は猫の老化や運動不足などが原因でおこります。ここではそれぞれについて解説します。

老化

猫も人間と同様、老化による筋力の低下で足腰が弱くなることがあります。関節痛などを患うこともあります。精神的にも周囲への好奇心が減るため、全体的に活動量が落ちる傾向があります。そのため、若い時ほど動かない日が続くことで、さらに筋力が落ちていきます。一般的に、猫は10歳~11歳頃からがシニア期です。シニア期以降の猫の後ろ足がふらついている場合、まずは老化による筋力低下の可能性を考えると良いでしょう。

運動不足

若い猫でも、著しい運動不足によって、筋力が低下する可能性があります。特に、肥満の猫は運動量が減ります。運動量が減ると筋力が減少し、動くことが億劫になるためさらに運動をしなくなるという悪循環に陥る可能性があります。ペットの猫は肥満になりやすい傾向があるため、猫を肥満にさせないような飼い主様の注意が必要です。

原因②心臓や脳の病気

原因②心臓や脳の病気

後ろ足の異常の原因としては、心臓や脳などの病気の可能性もあります。命にかかわるケースもあるため、これからお伝えするような異常がみられた場合には、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

肥大型心筋症による血栓塞栓症

肥大型心筋症は、猫に多くみられる心臓の病気です。この病気では、心臓で発生した血栓が血流に乗って、後ろ足に通じる血管に詰まり、血栓塞栓症を発症することがあります。後ろ足には麻痺のような症状が出て、触ってみると冷たさを感じます。

血栓塞栓症では、緊急の手術などが必要になります。猫の後ろ足が急に動かなくなり、触った時に冷たい場合は一刻も早く動物病院を受診しましょう。肥大型心筋症は、メイン・クーン、ラグドール、アメリカンショートヘアなどでは遺伝的に発症することが知られていますが、どんな品種の猫でも発症します。

脳腫瘍

脳に腫瘍ができると、後ろ足がふらつくことがあります。脳の腫瘍には良性と悪性がありますが、良性でも多くの場合で深刻な症状を呈します。脳の腫瘍の中でも比較的多いのは髄膜種ですが、他にも神経細胞腫、脳室上衣細胞腫などがあり、それぞれ発生する部位や大きさによって症状は様々です。

糖尿病

猫は本来、後ろ足のかかとを地面から浮かせて歩いています。糖尿病の猫の中には、かかとを地面にペタリとつけて、すり足のように歩く症状がみられることがあります。これは、糖尿病性神経障害という病態によるもので、糖尿病によって神経の働きが低下してあらわれる症状のひとつです。

原因③足や腰の骨の疾患、怪我

足や腰の骨の疾患、怪我

後ろ足に異常がみられる場合、足自体や腰などを痛めている可能性があります。ここでは、後ろ足の異常や歩行異常がみられる代表的な疾患をお伝えします。

骨折や脱臼

高いところから落下したり、飼い主様など家族が踏んでしまうなどで、骨折や脱臼をすることがあります。特に高齢猫の場合、運動能力が低下しているため注意が必要です。突然足をかばって引きずるように歩いたり、触られるのを異常に嫌がるなどの場合は、動物病院で検査をしてもらうことをおすすめします。

関節炎

関節炎には、細菌感染によるものと、変形性関節炎など感染以外の原因で発症するものがあります。細菌感染は外傷などが原因で発生します。変形性関節炎は、加齢によって発症します。いずれも関節内に炎症がおこるため、痛みを伴い歩行に異常が出ます。感染性の関節炎の場合、患部が激しく腫れ、足を着地できずに挙げたままにすることもあります。

変形性関節症

関節軟骨が変形し、周辺組織が線維化することで、変形性関節症を発症することがあります。高齢猫や、もともと関節などに異常のある猫に発生することが多いです。この病態になると、跛行したり、飛び下りた時の着地に失敗するなど歩き方に異常が出ます。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアになると、椎間板の髄核という組織が飛び出します。髄核が脊髄の神経を圧迫することで様々な神経症状を呈し、重症化するとふらつきなど歩行の異常が出ることもあります。椎間板ヘルニアの症状が悪化した場合、歩行だけでなく、排尿困難なども伴うようになり、外科的な手術が必要になることも多いです。

マンチカンは遺伝的に椎間板ヘルニアになりやすいことが知られていますが、どんな猫でも肥満や外傷などが引き金で発症することがあります。

足の裏の怪我

猫の歩行異常の場合、足の裏の怪我というケースもあります。まずは足裏を確認してみましょう。外傷はなくても、伸び過ぎた自分の爪が肉球に刺さり、それがもとで炎症をおこしていることもあります。多くの場合、猫自身が足裏を気にして舐めているので、よく観察しましょう。

後ろ足に異常があったらまずは動物病院へ

後ろ足に異常があったらまずは動物病院へ

ここまで解説した通り、猫の後ろ足の異常の原因には様々なことが考えられます。なかには命に関わる重篤な状態の場合もあるため、猫の後ろ足の異常に気づいたら、まずは動物病院を受診しましょう。

動物病院で原因を明らかにする

猫の後ろ足の異常の場合、明らかな外傷以外のケースでは原因がわかりづらいでしょう。飼い主様自身の判断で放置すると危険な状況になる可能性があるため、動物病院で検査してもらう必要があります。特に上でお伝えした肥大型心筋症による血栓塞栓症や、脳腫瘍はすぐに命に関わる病気です。できる限り早めに受診しましょう。

無理な運動は悪化の原因になるので注意

猫に歩行異常がみられた際は、動物病院で正しい診断を受けるまで、できるだけ安静にしておくのが良いでしょう。関節炎など骨や関節に異常がある場合は、運動によって悪化する可能性もあります。それぞれの病態に対して、猫自身の年齢や体力などに応じた治療方法があるため、獣医師と相談しながら対処しましょう。

適切な運動と食事で筋力低下を予防しよう

適切な運動と食事で筋力低下を予防しよう

上でお伝えした通り、猫の歩行異常の原因のひとつには、筋力低下が挙げられます。筋力低下は飼い主様のケアによって、予防したり、リハビリによって改善がみられる可能性があります。ここでは飼い主様が自宅でできることをお伝えします。

適度な運動やマッサージ

室内でも、猫が適度に運動できる環境を作ってあげましょう。猫は垂直方向の動きを好みますが、筋力が低下した猫の場合、怪我につながるため、避ける方が無難です。地面で遊べる猫じゃらしやネズミのおもちゃなどで、飼い主様が一緒に遊んであげると良いでしょう。骨や関節に異常のない猫には、マッサージをしてあげると血流もよくなります。

栄養バランスを意識した食事

偏りすぎた食事や、エネルギー不足も筋力低下の原因になる可能性があります。猫が必要とするたんぱく質を中心とした、バランスの良い食事を心がけましょう。猫用の総合栄養食を与えていれば心配はありませんが、猫に犬用のフードを与えたり、手作り食を与えている場合は注意が必要です。

猫の健康のために後ろ足の異常には早めの対処を

今回は、猫の後ろ足の異常についてお伝えしました。心筋症や糖尿病によって後ろ足に異常が出るというのは意外だったのではないでしょうか。猫の後ろ足の異常には様々な原因が潜んでいるため、早めに動物病院を受診して対処することをおすすめします。また、若い健康な猫の場合、日常の運動が将来の筋力低下の予防にもなるため、しっかりと遊べる環境を整えてあげましょう。猫の健康のためにも、飼い主様のこまやかな配慮が必要です。