猫に黄疸が出てしまったら、飼い主様としてはどのようなことが原因として考えられるのか気になりますね。
「すでに重い病気にかかっているのかもしれない。」と心配になったり、万が一のために余命を知りたい方も多いでしょう。

黄疸はさまざまな病気が原因となるため、余命に関して明確にお伝えすることは難しいと言えます。
まずは原因を特定し、適切な対応を実施することが大切です。今回の記事では、猫の黄疸の症状や考えられる病気などを詳しくお伝えします。ぜひ参考にしてみてください。

猫に見られる黄疸とはどのような症状?

黄疸は、血液中の「ビリルビン」とう物質が多すぎる場合にみられます。ビリルビンは黄色いため、血液中の黄色の物質が多すぎることで目に見えて皮膚などが黄色くなるのです。

猫の場合、皮膚は毛に覆われているため、かきわけないと気づくのが難しいですが、わかりやすい部分としては目の白目の部分が普段より黄色っぽく見えたり、口の中などの粘膜や耳の内側の毛が薄い部分、爪などが黄色になります。また、尿の色が普段より黄色くなったりオレンジになったりします。

猫に黄疸の症状があるときに考えられる6つの病気

上でお伝えした「ビリルビン」は、本来であれば血流に乗って肝臓に運ばれ、胆汁と一緒に「胆管」という管を通って腸に移動し、排泄されます。よって、ビリルビンが増えすぎて黄疸になる主な原因は肝臓、もしくは胆管にあることが多いと言えます。

肝リピドーシス

肝リピドーシスとは、猫に特徴的に発生する肝臓の疾患で、肝臓の細胞に過剰な脂肪が蓄積する状態です。肝臓はいわゆる「脂肪肝」となり機能の低下がおこります。その結果ビリルビンの代謝が進まず黄疸になるのです。

脂肪肝と聞くと、肥満によるものだと思いがちですが、実際には「飢餓」の状態でおこります。飢餓によって体内のエネルギーがなくなると、脂肪組織が分解されて脂肪酸が放出されます。この脂肪酸が肝臓に運ばれて細胞に蓄積されてしまうのが肝リピドーシスなのです。

猫の場合、なんらかの原因で絶食や食欲の低下が続くと肝リピドーシスを発症することが多いです。肥満の猫の場合、2日~3日程度の絶食でも発症すると言われているため注意が必要です。また、肝リピドーシスはこれから解説する胆管炎、膵炎などを発症している時にもみられることの多い病態です。

胆管炎

胆管は、肝臓で作られた胆汁の通り道となる管です。胆管は胆嚢につながり、胆汁は一時的に胆嚢に貯蔵され、総胆管という管を通って腸に分泌されます。

胆管炎は、胆管に炎症がおこる病気です。炎症がおこる要因には、細菌感染や免疫異常、胆管癌や胆石などが挙げられます。
また、腸炎や、上でお伝えした肝リピドーシス、あとから解説する膵炎などの影響で胆管に炎症がおこることもあります。胆管炎になると、ビリルビンが肝臓から出ていかなくなるため増えすぎる結果黄疸になるのです。

肝不全

肝臓の機能が低下した状態を肝不全と呼びます。
肝不全の原因はさまざまで、あとからお伝えするリンパ腫など肝臓そのものの病気もありますが、猫の場合は猫伝染性腹膜炎などの感染症や、膵炎などの影響を受けることが多いと言えます。肝不全の原因によっては黄疸があらわれることも少なくありません。

膵炎

膵臓に炎症がおきる状態が膵炎で、急性膵炎と慢性膵炎に分類されます。
膵臓には多くの消化酵素が含まれ、この消化酵素が何らかの原因で膵臓自身を消化しはじめるのが急性膵炎です。

急性膵炎が長引いたり、治りきらずに再燃を繰り返すと慢性膵炎となります。急性膵炎は激しい痛みや嘔吐を伴うことが多いですが、高齢猫に比較的多い慢性膵炎の場合、あまり症状がみられないこともあります。

膵臓からの消化酵素が腸に出ていく管である膵管は、猫の場合、胆管と出口付近で合流します。そのため、膵炎がおこると胆管炎もおこり、黄疸になりやすいのです。

慢性肝炎

肝臓になんらかの原因で炎症が起こる状態が続くことを慢性肝炎と呼びます。原因としては、細菌やウイルスなどの感染症や、免疫異常、薬剤、中毒などが関係することが多いと言えます。

また、胆管炎によって胆汁が貯まり過ぎることが原因となることもあります。慢性肝炎は継続して肝臓のダメージが進行すると肝臓が線維化して最終的に肝硬変になり、黄疸があらわれるようになります。

肝臓のリンパ腫

リンパ腫は猫では比較的多い腫瘍性疾患のひとつです。リンパ腫はからだのあらゆる部分に発症する可能性があり、腸や肝臓などの消化器に発生すると「消化管型リンパ腫」と呼ばれます。肝臓が腫瘍化すると肝不全となり、黄疸につながることがあります。

猫に黄疸が見られたら|病院での対応

猫に黄疸が見られた場合、動物病院ではそのような検査や治療を行うのでしょうか。ここでは黄疸に対する検査方法や治療方法についてお伝えします。

検査方法

黄疸の診断は、目の白目を確認したり口の中の粘膜部を見ることで判断します。また、血液検査では直接ビリルビンの数値を確認することができるため、この値が高値であることも診断の決め手のひとつとなります。

黄疸が出る原因について診断を行なうためには、血液検査や超音波検査、レントゲン検査などを組み合わせる必要があります。

感染症などが疑われる場合は、ウイルス検査などが追加されることもあります。血液検査では肝臓自体が障害を受けているかどうかや、肝臓の機能が落ちているかどうかがわかります。超音波検査やレントゲン検査などでは肝臓の構造や大きさに異常がないかどうかを確認することができます。

治療方法

原因が何であれ、黄疸が出ている場合には点滴をすることが多いと言えます。その他の治療は、原因となる疾患によって異なります。

例えば猫に多い肝リピドーシスの場合、点滴をしながら口からの栄養補給を行うことが一般的です。血液中のカリウムやリンなどの電解質と呼ばれる物質が乱れていることも多いため、これらを是正するための薬を使うこともあります。

肝リピドーシスの場合、一定期間入院してしっかり栄養補給をさせて肝臓の機能を取り戻す必要があります。

猫に黄疸の症状が見られる場合の余命はどれくらい?

愛猫に黄疸が出た場合、飼い主様としては余命が気になることでしょう。

黄疸の原因は様々であるため、余命に関して一概には言えません。原因によっては、動物病院を受診しても救命が難しいケースもあります。一方で、黄疸が出ても適切な治療を受ければその後も長期間生活の質を落とすことなく生きられることもあります。

今回の記事でご紹介した肝リピドーシスや膵炎の場合、速やかに治療を受けないと比較的短期間で命に関わる可能性が高いと言えます。また、黄疸につながる病気の多くは長期的な治療が必要になることも多いです。できるだけ早い段階で動物病院を受診し治療につなげることで余命を延ばすことが可能だと言えます。

猫の黄疸を見逃さないための対策

上でお伝えした通り、黄疸に関しては早期発見と早期治療がその後の余命に関わります。そのため、猫の黄疸を見逃さないことが重要だと言えます。

黄疸を見逃さないためには、まずは普段の正常な状態を知っておくことが大切です。愛猫の白目の輝きや、口の中の粘膜の薄ピンクの色などをしっかり把握しておきましょう。

わずかな異変でも気づけるように、スキンシップを兼ねて全身を確認する習慣をつけましょう。普段から顔まわりなどを触ることに慣れてもらい、目や口の中もこまめに確認すると良いでしょう。

黄疸が出たらすぐに動物病院へ!

今回の記事では猫の黄疸に着目し、原因となる病気や黄疸を見逃さないためにできることなどをお伝えしました。

黄疸が出る原因はさまざまですが、どのような原因であれ、すぐに動物病院を受診することが大切です。少しの様子見が愛猫の命に関わることも少なくありません。

普段から猫の目や口の中の様子もしっかり観察し、少しでも異常が見られたらすぐに動物病院に相談しましょう。