一人暮らしの飼い主様は、自分が先立ったら残されたこの子はどうなるのだろう・・・と不安になることがあるのではないでしょうか。愛するペットには、自分が亡くなったあとも幸せに暮らして欲しいですね。そのためには、ご自身の健康状態や交友関係、お別れの直前までペットとどう付き合いたいかを今のうちに考えることが必要です。今回は、飼い主様が亡くなったあとも、ペットが安心して暮らすため、事前にできる準備について解説します。
目次
一人暮らしでありえるペットとの別れのパターン
一人暮らしの飼い主様の場合、ペットが取り残されるのは、飼い主様が先立つケースのみとは限りません。飼い主様の健康上での問題が理由となり、やむを得ずペットとお別れしなくてはならないことがあります。はじめに、1人暮らしでありえるペットとのお別れのパターンについてお伝えします。
自宅で飼い主が最期を迎える
最後までペットと一緒に暮らすことを飼い主様が望む場合、ご自身の死後、ペットが取り残されます。元気なうちに、ペットの引き取り手を決めて遺言を残すなどの手配が必要です。飼い主様自身の安否状況の確認も含め、日常的にご家族やサポートしてくれる周囲の人との連絡をこまめにとるように心がけましょう。
飼い主が介護が必要になる
体に障害が出たり、寝たきりになるなど飼い主様がご自身の生活を一人で行えなくなる可能性もあります。自宅で介護を受けながら生活するのか、家族の家などにうつるのかなどによっても状況は異なりますが、多くの場合、飼い主様が今までのように一人でペットの面倒を見続けることができなくなるでしょう。元気なうちに、いざという時にペットの世話を手伝ってくれる人を探したり、ペットの引き取り手を探す必要があります。
飼い主が施設に入所してしまう
自宅やご家族の家での介護が難しいレベルの介護が必要になると、施設などに入所する可能性も考えられます。この場合、施設への入所なども色々な手続きが必要なので、これらの必要手続きと合せてペットの世話をしてくれる人を探す必要があるでしょう。
飼い主が子供や親族などとの同居を始める
飼い主様が高齢になると、子供や親族の家で同居する可能性もあります。ご自宅を離れる際には、引っ越し先の住宅環境や、住んでいる人のアレルギーなど健康上の問題でペットを連れて行けない場合があります。ご家族などとの話し合いも大切ですが、多くのケースではペットの引き取り手を探す必要があるでしょう。
一人暮らしの飼い主が死ぬ前にできる具体的な対策とは?
ここでは、1人暮らしの飼い主様が残されたペットのために、元気なうちにできること、しておくべきことについて具体的に解説します。
引き取り手・里親を探しておく
最も安心な方法は、元気なうちに、ペットの引き取り手や里親など新しい飼い主様を探しておくことです。ご家族や親しい友人など、身近で以前からペットのことをよく知っている人であればなお安心ですね。
引き取り手の金銭的な負担の緩和のために、飼育費を贈与する方法もあります。これらの贈与には、ペットの負担付遺贈と言って、ペットの飼育をしてもらう代わりに新しい飼い主様に財産を残すという手段があります。あらかじめ贈与についての契約を交わし、ペットの引き取りと贈与の拒否を防ぎたい場合には、負担付死因贈与という方法もあります。
これらは遺言書とも関わり、法的な効力を持ちますが一般的に手続き等が煩雑です。新しい飼い主様に目星がついたら、すぐに法律の専門家に相談すると良いでしょう。
遺産をペットに贈与するペット信託を利用する
新しい飼い主様や引き取り施設などが見つかった場合、ペットのためにご自身の遺産を使って欲しいというケースもあるでしょう。信託会社を挟み、ペット信託を行うことで実現できます。あらかじめペットのために使って欲しい遺産を信託会社に預け、信託会社が新しい飼い主様や施設などがきちんと世話をしてくれているかどうかを見守ります。
負担付遺贈などとも似ていますが、信託会社を利用することで履行に対する安心感・信頼感を得られます。一方で、費用が高額になることも多いため、事前によく相談し、説明を受けることが必要です。
ペット可の老人ホームに入居する
老人ホームの中には、ペット可のホームもあります。ただし、現在では人気に対して大変数が少ないです。ペット同伴入居においては、保証金や動物管理費が別途必要となるため、費用も高額になることが多いでしょう。また、ペット可の老人ホームだからと言って、必ずしも飼い主様の死後もペットの面倒をみてくれるわけではありません。ご自身で引き取り手などを探さなくてはならないホームもあるため、ご自身の死後ペットの面倒を見てもらいたい場合は、細かい点までしっかり説明を受ける必要があります。
老犬老猫ホームやNPO法人に引き取ってもらう
私営の老犬ホームや老猫ホームというものもあります。これらの施設では、デイケアサービスや1カ月滞在などの短期での預かりサービスが多いですが、終身プランのある施設もあります。ただし、終身プランでは、13歳以上などと年齢制限があったり、大型犬は受け入れ不可であったりと条件がさまざまです。
費用も高額になることが多いため、事前にインターネットなどを利用して、愛犬愛猫の年齢などの条件や飼い主様の予算感と見合うかどうかを確認したうえで、実際の施設に見学に行くのが良いでしょう。NPO法人のなかには、有償で犬猫の引き取りを行い、里親探しなどを行ってくれる団体もあります。老犬老猫ホームほど高額ではありませんが、これらの施設は常に犬猫でいっぱいです。簡単に受け入れはしてもらえないことを理解して、早めに相談することが大切です。
ペットの飼い主が注意しておきたい「やってはいけないこと」
さいごに、ペットを残して先立つ可能性について考えた飼い主様がやってしまいがちなNG行為についてお伝えします。
ペットを自然に還すのは法律違反
犬や猫を自然に還そうと考える飼い主様はいらっしゃらないと思いますが、鳥やリス、爬虫類などの小動物は、自然に還しても良いのではないかと勘違いされる方もいらっしゃいます。人が飼育している哺乳類、鳥類、爬虫類は法律で「愛護動物」と定められており「動物愛護管理法」で守られています。
これら愛護動物を自然に還す行為は、遺棄とみなされます。動物愛護管理法において、愛護動物の遺棄は、1年以下の懲役や100万円以下の罰金がつく「犯罪」となります。どのような動物であっても自然に還すという選択を行うことは適切ではありません。もともと野生で生きていたペットでも、一度人に飼育された場合、ふたたび野生で生き延びるのは大変難しいです。
犬猫以外の動物に関しても、インターネットなどで里親探しが可能です。必ず新しい飼い主を探しましょう。
(参考:https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/aigo.html)
里親募集は虐待や転売詐欺に注意
残念ながら、里親に名乗りをあげる人や団体の中には、虐待目的や転売目的の里親詐欺が紛れています。これらの詐欺は無償で譲渡される犬猫の場合に特に多いと言えます。愛護団体などの里親募集では、最低でもワクチン費用などが必要となるため、血統書付きなど転売などで利益を得られる動物に注意が必要です。
一方、個人の飼い主様がインターネットなどを通じて無償で里親探しを行う場合、どのような動物でも里親詐欺にあいやすいため、注意が必要です。里親候補者が、直接会うことを拒んだり、連絡先を明かさない、引き取りを急ぐなどのケースは不適切な目的での応募の可能性があります。
飼い主様がご自身で犬猫の新しい飼い主様探しを行う場合は、必ず里親候補者と連絡をこまめにとり、居住地なども把握しましょう。里親契約の文書などを作成して取り交わすことも必要な場合があります。
ペットへの最後の贈り物としてしっかり準備を
飼い主様自身の体調が思わしくなかったり、高齢になると、つい先のことを考えるのが億劫になってしまいますね。愛するペットをお別れするという現実から目を背けたくなることも多いでしょう。しかし、ペットのその後の生活を守れるのは飼い主様だけです。ペットが与えてくれた幸福を思いながら、飼い主様からの最後の贈り物として、ご自身が先立ってもペットが引き続き幸せに生き続けることができるようにしっかり準備を行いましょう。