スコティッシュフォールドと生活している飼い主様や、これからスコティッシュフォールドをお迎えしたいと検討している方のなかには、「スコティッシュフォールドがどんな病気にかかりやすいのか知りたい」と考える方も多いでしょう。
スコティッシュフォールドだけでなく、猫やその他の動物を飼う際は、あらかじめ病気に関する知識を身につけておくことが大切です。
今回の記事では、スコティッシュフォールドの特徴や、かかりやすい病気と治療方法、健康を保つポイントなどをお伝えします。
目次
3つの観点から見るスコティッシュフォールドの特徴
はじめにスコティッシュフォールドがどのような猫なのか、「外見」「性格」「寿命」という3つの観点からお伝えします。
外見
スコティッシュフォールドは体長60cm程度で体重はおよそ3Kg~6Kgに成長します。スコティッシュフォールド最大の特徴といえば「折れ耳」でしょう。
しかし、すべてのスコティッシュフォールドが折れ耳になるわけではなく、耳が折れるのはおよそ30%の確率だといわれています。折れ耳の要因は遺伝子の突然変異で、この遺伝子変異は一般的に「軟骨異形成症」という病気を伴います。
性格
スコティッシュフォールドは穏やかでおとなしい性格です。激しく動き回ることは少ない猫であるため、それほど多くの運動量を必要としません。
飼い主様に対しては甘えん坊な一面があり、愛情深く人懐っこい猫で、ほかの猫や動物、赤ちゃんとも良好な関係を築きやすいといわれています。
寿命
寿命は平均して10~13歳です。猫全体の平均寿命はおよそ14~15歳とされているため、およそ1~2年は短いといえます。
寿命が短い要因は、はじめにお伝えした「軟骨異形成症」を代表とする遺伝的な病気や、その他の病気にかかりやすいことが要因です。スコティッシュフォールドは、健康面では飼い主様の配慮が必要な猫だとされています。
スコティッシュフォールドのスコ座りと病気の関係性
スコティッシュフォールドは、「スコ座り」と呼ばれる座り方をすることがあります。スコ座りとは、おしりを床について後ろ足を投げ出す座り方で、SNS上でも可愛い座り方だと度々話題になっています。
スコ座りはスコティッシュフォールド以外の猫にも見られる座り方ですが、スコティッシュフォールドが頻繁にする体勢であることから「スコ座り」と名付けられました。
しかし、スコ座りは通常の座り方では関節や骨に体重が乗って痛みが出ていることが関係しているといわれています。そのため、スコティッシュフォールドがスコ座りしている場合は、関節や骨に痛みを感じている可能性があるため注意が必要です。
また、すべてのスコティッシュフォールドがスコ座りをするわけではありません。かわいい姿勢だから愛猫にさせたいと思っても、無理にスコ座りはさせないようにしましょう。
スコティッシュフォールドがかかりやすい6つの病気と治療法
スコティッシュフォールドは、比較的病気になりやすく、寿命が短い傾向の猫だといえます。少しでも元気で長生きしてもらうためには、スコティッシュフォールドがかかりやすい病気について、あらかじめ知っておくことが必要です。
以下では、代表的な病気6つとその治療法をご紹介します。
肥大型心筋症
「肥大型心筋症」は、心臓の中の「左心室」という部屋の筋肉の壁が分厚くなり、心臓が正常なポンプ機能を果たさなくなる病気です。
血液の循環が低下し、進行すると疲れやすくなったり肺に水が溜まったり、血栓ができやすくなったりするなどの障害を引き起こします。
根本的に治療する方法はまだ確立されておらず、強心剤や血管拡張剤、利尿剤などを利用して心臓の機能を助ける治療を行います。
尿路結石症
「尿路結石症」は、スコティッシュフォールドだけでなく猫全般に発生しやすい病気です。結石ができるのは、「腎臓」、「膀胱」、腎臓と膀胱の間に位置する「尿管」、膀胱から尿を排泄する「尿道」などです。
結石のできる場所によって症状は異なりますが、痛みを伴うことも多く、膀胱炎や血尿があらわれることもあります。結石のできる場所によっては排尿ができなくなる「尿路閉塞」をおこすこともあり命に関わります。
結石の種類や場所によって治療方法は異なりますが、原則的には尿石を溶かすための食餌療法がメインとなります。
一方、溶けない種類の結石の場合や、結石が大きいとき、また尿路閉塞などをおこしている緊急事態では、外科手術が必要になる場合もあります。肥満を避け、十分に水分を取る、トイレを我慢させないことが予防につながります。
多発性嚢胞腎
「多発性嚢胞腎」とは、腎臓に「嚢胞」と呼ばれる液体を含んだ球状の袋がいくつもできて、正常な腎組織を圧迫し、腎不全を引き起こす病気です。
遺伝が関わるとされていて、特定の種類の猫に発症しやすいことがわかっています。多発性嚢胞腎そのものを治す治療法はなく、腎不全の症状に対する対症療を行なうことになります。
遺伝性の病気のため予防は難しく、定期的な健康診断で早期発見・早期治療が大切です。
軟骨異形成症(骨軟骨形成不全症)
「軟骨異形成症」はスコティッシュフォールドやマンチカンなどに発生する遺伝病で、折れ耳のスコティッシュフォールドは100%この病気を持っているともいわれています。
軟骨異形成症を持つ猫では軟骨が異常な形になり、「骨瘤」というこぶ状の塊を作ります。骨瘤は特に手首や足首の関節、指の骨や膝などにできやすく、進行すると痛みによって歩行困難など日常生活に支障がでます。
根本的な治療方法はなく、消炎鎮痛剤やサプリメントによって痛みを和らげる対症療法が中心となります。一度発症すると生涯治療が必要となるため、体重管理を行い、関節に負担をかける激しい運動は控えるよう心がけましょう。
外耳炎
「外耳炎」は、耳の外側から鼓膜までの「外耳道」という部分に炎症が起こる病気です。かゆみや耳だれ、悪臭などの症状が出ることが多く、放置すると中耳炎や内耳炎に進行することも珍しくありません。
折れ耳のスコティッシュフォールドは耳の通気性が悪く、細菌が繁殖しやすいために外耳炎にかかりやすいといえます。
治療の基本は、イヤークリーナーなどで外耳道を徹底的に洗浄し、雑菌の繁殖を抑え、抗炎症作用のある点耳薬などの薬も併用します。外耳炎の予防のためには、日頃から耳の汚れのチェックを行うことが重要です。
眼瞼内反症
「眼瞼内反症」は、まぶたが内側に巻き込まれる病気です。「さかさまつげ」のひとつで、まつげが目に入って角膜炎、結膜炎などを引き起こします。
スコティッシュフォールドやペルシャ猫、ヒマラヤンなどに好発するといわれており、遺伝や目の皮膚のたるみ、目の大きさなどが関わるとされています。
治療はさかさまつげの除去や、点眼薬による炎症の改善が基本ですが、根本治療のためには手術が必要となるケースもあるため注意が必要です。日頃から目の様子をこまめにチェックして、早期発見・早期治療につなげましょう。
スコティッシュフォールドの病気に対する医療費
スコティッシュフォールドは病気にかかりやすい傾向にありますが、実際に病気になると医療費がどれくらいかかるか心配な飼い主様もいらっしゃるでしょう。日本では動物病院での医療費は自由診療であるため、基本的に全額自己負担です。
以下では、スコティッシュフォールドが病気になった際にかかる医療費について解説します。
骨軟骨異形成症の医療費
遺伝性の骨軟骨異形成症が発症すると、痛み止め治療やサプリメントによる投薬が行われます。
医療費は症状や年齢、病院により異なりますが、投薬治療は1ヶ月あたり5,000円〜10,000円程度です。また、重度の症状で外科手術が必要な場合は1回につき20万〜40万円程度が目安です。
手術する場合は入院も必要であるため、追加で入院費と検査費が必要となります。入院費は一般的に1日あたり10,000円程度、検査費は15,000円〜40,000円程度です。
肥大型心筋症の医療費
肥大型心筋症はシニア期にかかりやすい病気ですが、若い頃に発症する可能性もあります。肥大型心筋症の場合、心臓への負担により医療費が変わります。
一般的に心臓の検査は1回につき10,000円〜30,000円程度です。また、抗血栓薬など投薬治療は1ヶ月あたり5,000円〜10,000円が目安です。
尿路結石症の医療費
尿路結石症は成猫のオスによく発症する病気で、症状の度合いにより治療法が異なります。尿石が膀胱内にある場合は、食餌療法で治療することが一般的です。1ヶ月あたり5,000円程度の尿石症専用フードで治療を進めます。
また、尿石が尿路に詰まっている場合はカテーテル治療や点滴治療などの入院が必要で、血液検査や処置に5,000円〜20,000円程度かかります。一方、症状が重症で外科手術が必要な場合は、1回10万〜30万円程度が目安でしょう。
その他の医療費
重大な病気にかからない場合でも、不妊手術やワクチンなどで医療費が必要になることがあります。
不妊手術の場合、オス猫は15,000円〜30,000円程度、メス猫は約20,000円〜40,000円程度かかります。また、混合ワクチンを接種する場合は1年に1回の接種で約5,000円です。
また、定期的な健康診断を1年に1回受けに行く場合は約10,000円〜30,000円程度かかります。そのため、重大な病気にかかっていない場合でも、生涯で30万〜50万円程度の医療費がかかることを理解しておきましょう。
スコティッシュフォールドの健康を保つためのポイント
ここまでお伝えしたように、スコティッシュフォールドは健康管理に最大限の配慮が必要な猫です。以下では健康維持のためのポイントを8点お伝えします。
バランスの良い食事を心がける
食事はどのような猫にとっても健康管理の要です。特にスコティッシュフォールドは運動不足による肥満になりやすい傾向があるため、たんぱく質やミネラル、ビタミンなどをバランス良く含んだフードを適正な量で与えることが重要です。
関節の負担にならない程度の適度な運動を取り入れることで、肥満の予防だけでなくストレスの軽減や筋肉の維持効果も期待できるといえるでしょう。
定期的に健康診断を受ける
スコティッシュフォールドは予防が難しい遺伝性の病気を持っていることが多い猫です。根本治療も確立されていない病気が多いため、できるだけ早い段階で治療を開始して進行を遅らせることがその後の生活の質に関わります。
早期発見のためには定期的な健康診断が欠かせません。最低でも年に1度は受診し、獣医師と相談しながら年齢や健康状態に応じた検査を受けるようにしましょう。
ワクチンを接種する
スコティッシュフォールドが感染症にかかる確率を軽減するためには、混合ワクチンの接種がおすすめです。感染症にかかる猫の多くは、ウイルスを持った猫の唾液や血液、排泄物に触れることが原因であるといわれています。
混合ワクチンは、何種類かの病気に対するワクチンを混ぜた予防注射のことです。すべての猫に接種が推奨されている「コアワクチン」と生活環境による感染リスクに応じて接種が必要である「ノンコアワクチン」があります。
コアワクチンの接種で予防できるのは猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症などです。このような病気は感染力が高く、重症化リスクもあるため、完全室内飼育でもワクチン接種が推奨されています。
一方、ノンコアワクチンでは、猫白血病ウイルス感染症やクラミジア感染症を予防できます。感染症から愛猫の病気を守るためにも、ワクチン接種は効果的でしょう。
折れ耳のケアをする
スコティッシュフォールドが折れ耳の場合は、通気性が悪いことにより耳に炎症が起こりやすいです。そのため、定期的に耳のケアをしてあげましょう。
定期的に耳の状態を確認し、コットンで拭き取るか洗浄液を利用して耳をきれいにします。洗浄液を使用する場合は、耳の中に直接洗浄液を垂らしてください。しばらくすると猫は頭を左右に振るため、頭を振り終わったらコットンで優しく拭き取ってあげましょう。
ただし、猫は耳を触られるのが苦手な子も多く、耳の掃除が難しい場合もあります。耳掃除が難しい場合は、動物病院で定期的に確認してもらいましょう。
大きな音でストレスを与えないようにする
スコティッシュフォールドは神経質な特性があるため、大きな音にストレスを感じることがあります。そのため、できるだけ大きな音をたてないように気をつけましょう。
猫は人間よりも聴力が優れているため、人間にとっては小さい音でも猫にとっては大きい音に聞こえてストレスを感じる場合があります。そのため、掃除機やドライヤーのような大きな音が鳴るようなものを使用する際は、猫を別の部屋に移動させるようにしてください。
誤飲に注意する
スコティッシュフォールドは好奇心旺盛な一面があるため、床に落ちているものを口に入れて誤飲する可能性があります。
特に、子猫の時期は好奇心が強く、床に落ちているものすべてに興味を示して口に入れてしまうことがあります。そのため、猫にとって危険なものや誤飲すると危ないものは猫の手が届かない場所で管理してください。
ブラッシングを定期的に行う
ブラッシングを定期的に行うことも重要なポイントです。スコティッシュフォールドは被毛の量が多く毛玉ができやすい体質であるため、毎日のブラッシングが大切です。
特に換毛期は多くの毛が抜けることから、自身の毛を飲み込んで体内に溜まる毛球症にならないためにも、1日1回はブラッシングをしてあげてください。
遊びに付き合ってあげる
スコティッシュフォールドは人とコミュニケーションを取ることを好むため、最低でも1日10分程度は一緒に遊んであげてください。
また、猫は高いところに登るのを好む動物であるため、屋内でも上下運動させてあげることが重要です。室内にキャットタワーを設置しておくと、猫も自由に活動できてストレス軽減につながるでしょう。
健康管理に気をつけてスコティッシュフォールドとの生活を楽しみましょう。
今回の記事では、スコティッシュフォールドがかかりやすい病気や治療法などを中心に、健康管理についてお伝えしました。
健康へのこまやかな気配りが必要な猫である一方、人懐っこく聞き分けも良いとされているため、一緒に生活するのが特別に難しいわけではありません。マンションなどでも比較的飼育しやすいというメリットもあります。
今回お伝えした内容もぜひ参考にして、スコティッシュフォールドとの生活を楽しんでみてください。