「老犬にトリミングは必要ない」と考えていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

足腰が弱くなり体力面でも不安がある、寝たきりになってしまい起き上がることができない、など年齢が若かった頃のように数ヵ月おきにトリミングをするということは難しくなってくるでしょう。

しかし、トリミングは衛生面や健康面に関わるため、大切なことです。本記事ではトリミングが必要な理由と重要性をご紹介いたします。

老犬をトリミングする目的

老犬をトリミングする目的

老犬にとってトリミングはおしゃれのためだけでなく、健康維持と衛生面に必要不可欠なものです。以下では、なぜ衛生面と健康面にトリミングが影響するのかを解説します。

健康維持

トリミングは、体毛をおしゃれにカットすることだけが目的ではありません。セルフカットする場合は難しいですが、トリマーさんにお願いする場合、犬の体調を考慮しながら負担の少ない施術を行ってもらえます。

また、体毛が伸びすぎて毛が目に入り眼球を傷つけてしまったり、長すぎる毛を踏んで転んでしまったりして骨折するなどのトラブルも防げるでしょう。

トリミングは、シャンプーやカットだけをしてもらえるというイメージを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、実際には歯磨きや耳の掃除、目やにのケア、肛門腺絞り、おむつかぶれや床ずれなどのケアも行ってもらえます。

さらに、老犬の場合はフケが出ないようにしたり、肌がベタつかないようにしたりするケアをしてくれるでしょう。

そのため、カットだけでなく健康維持のためにもトリミングは重要であるといえます。健康管理のためとはいえ、頻繁に動物病院に通うのは飼い主様も大変です。トリミングも健康管理の機会と考えて、通う頻度を調節することが大切です。

清潔を保つため

老犬になると、肌のターンオーバーが遅くなり皮膚トラブルを起こしやすくなります。目や汗など汚れも出やすくなり、体臭がきつくなったり、体毛に絡みついて毛玉になったりしてしまうでしょう。

定期的にトリミングすることで、蒸れを抑えて体臭対策ができるため、清潔に保つようにすると良いです。

怪我を防ぐため

犬の足の裏にある肉球には、足の負担を減らすクッションや滑り止め、汗をかいて体温調節する役割があります。

しかし、肉球の間からは毛が生えるため、毛が伸びてしまうと役割が果たされない可能性があります。自宅の床がフローリングである場合、足の裏の毛が伸びてしまうと転んで怪我してしまう可能性も高まり、老犬の場合は致命傷になるかもしれません。

重大な怪我を防ぐためにも、定期的なトリミングが重要です。

熱中症を防ぐため

夏場は、毛の影響により熱中症になりやすい犬もいます。夏に毛を短くするカットをサマーカットといい、毛の中の空気を入れ替えて体温が溜まりにくくするため、熱中症になるリスクを下げるといわれています。

ただし、毛を短くしすぎてしまうと皮膚に紫外線があたり、生えてくる被毛の質が変化するため注意が必要です。

美容のため

トリミングだけを行う場合、美容やおしゃれを目的とする方も多いでしょう。近年では、トリミングサロンの種類も増えているため、サロンごとにカットデザインが異なります。

飼い主様により好みのカットは異なるため、愛犬に合うサロンを見つけておしゃれを徹底するのも良いでしょう。

トリミングはすべての犬に必要?

トリミングはすべての犬に必要?

トリミングは基本的にほとんどの犬に必要ですが、トリミングの頻度が少なくてもいい犬も存在するのです。

犬種により、毛の生え方や被毛の種類は異なります。以下では、トリミングが必要な犬種と不必要な犬種を解説します。

トリミングが必要な犬種

トリミングが必要な犬種は以下のとおりです。

  • プードル
  • ヨークシャテリア
  • チワワ
  • ダックスフンド
  • コーギー
  • ポメラニアン

上記のような犬種は、被毛が長いです。なかでも、プードルやヨークシャテリアのような犬種はシングルコートの犬種です。

シングルコートとは、毛が抜けづらく伸びやすい特徴があり、放置してしまうと毛が絡まってしまうこともあります。

また、チワワやダックスフンドなどはダブルコートの犬種で、毛が上毛と下毛の2重になっていることが特徴です。主に下毛は換毛期に生え変わり、夏場になると抜けてしまうため、トリミングが必要になります。

トリミングが不要な犬種

基本的にトリミングの頻度が少なくてもいい犬種は以下のとおりです。

  • フレンチブルドッグ
  • パグ
  • ミニチュアダックスフンド

上記の犬種は、毛が短く毛足が短いことが特徴です。

トリミングでカットを行うほど被毛が長くなく、伸びることもないため、頻繁にサロンでトリミングをしてもらう必要はありません。

しかし、トリミングではカット以外にも口腔ケアや皮膚のケアも行ってくれるため、犬の健康を気遣うためにも、定期的にサロンに連れて行ってあげるといいでしょう。

老犬のトリミングは何歳までできる?

老犬のトリミングは何歳までできる?

何歳になってもトリミングはできますが、老犬の場合、体に負担がかかるため、頻度や方法を見直す必要があります。

老犬のトリミングの頻度

若い犬の場合、2ヵ月に1回が目安となっていますが、体毛が長い犬種は1ヵ月~1.5ヵ月と間隔は短くなり、特別に理由などがない限りは定期的にペットサロンに通うことになります。

老犬の場合は、1ヵ月に1回が目安になりますが、体調や持病などの理由により定期的にトリミングすることは難しいでしょう。

短い時間で数日かけてトリミングするか、飼い主様が自分でカットするなど、老犬に負担がかからないような配慮が必要です。また、プロのトリマーに任せれば、老犬の体調を考慮して素早くトリミングしてもらえます。

少ないストレスでカットしてもらい、皮膚炎など病気の早期発見もしてくれる場合もあるため、老犬のトリミングを行っているか事前に確認しておきましょう。

老犬が立てない場合のトリミング方法

トリミングは立って行うことが基本ですが、長い時間立てない・寝たきりなどの場合でもトリミング可能です。

バリカンを使うことが多いですが、大きい音に怖がったり怯えたりする場合は、ハサミを使って切ってあげられる場所を、できるだけ短くするという方法が良いでしょう。

老犬のトリミングを断られてしまう理由

老犬のトリミングを断られてしまう理由

老犬のトリミングを断られてしまった、という飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。老犬のトリミングがなぜ断られてしまうのかを解説します。

慎重さが求められるから

老犬のトリミングには、経験や知識といったいわゆる「トリマーの腕」が求められます。若い犬とは異なり、長時間の施術に耐えられないことも多く、スピード感の中にも細心の注意と慎重さが必要になってくるでしょう。

最近はトリミング中の死亡事故による裁判も多くなってきており、トリマーさんを取り巻く環境は変わってきています。上記のような背景から、トリマーさんを守るためにもお断りすることが多いようです。

ペットへの負担が大きいから

老犬は体力の衰えにより立つことができない、フラフラしてしまって長時間立てない、など時間がかかるトリミングをするには負担が大きい場合があります。

施術をしてもらい帰宅してから、いつもより元気がない、長時間寝てしまうときは体力を消耗しているのでトリミングの期間をもう少しあけるなど対策が必要です。

年齢を重ねて視力や聴覚も衰えはじめると、大きい音はもちろんのこと些細な音にもストレスを感じることもあるため注意しましょう。

体調不良に対応できないから

老犬は体力とともに免疫力も低下しています。持病を患っている場合も多く、突然体調を崩すことも考えられるでしょう。

ほとんどのサロンは動物病院が近くにあるわけではないため、緊急事態に対応できない場合を考慮しお断りするケースがあります。

老犬のトリミングができる場所

老犬のトリミングができる場所

老犬でもトリミングをしてくれる施設はどこでしょうか。以下では、老犬をトリミングできる3つを紹介します。

動物病院

動物病院が経営しているトリミングサロンです。トリミングサロン全体の3割程度あり、通常のサロンより料金が安い特徴があります。

メリットは、トリミング中に見つかる異常や突然の体調不良にも素早く対応できることです。また、病院へ行くついでにカットもしてもらえるため、外出が一度で済むというメリットもあります。

ただし、トリミング以外の処置には別途料金がかかり、動物病院でのトリミングは注意事項があるため、あらかじめ確認するようにしましょう。

出張サービス

自宅でトリミングをトリマーさんがしてくれる出張サービスです。寝たきりなどでトリミングに行けない場合、自宅で施術をしてもらえる特徴があります。

また、トリミングサロンに行くことが苦手なペットや、他の犬との接触が心配な場合でも安心してカットを任せられます。

メリットは、自宅でトリミングをするのでストレスが最もかかりにくい点です。出張サービスは自宅の中で施術する以外にもトリミングカーというものがあり、車の中でトリミングを行える特徴があります。

トリマーさんを自宅に招くことに抵抗がある飼い主様におすすめです。

セルフカット

飼い主様がご自分でトリミングするのも手段の一つです。出張サービス同様、老犬にとっては安心できる空間でトリミングできます。

メリットは、伸びたと感じたらすぐに切れること、体調等に合わせて毎日少しずつカットできることです。ただし、セルフカットはある程度の知識や技術が必要になります。

知識がないままカットしてしまうと、失敗したり、愛犬を怪我させたりする可能性が高まります。そのため、事前に講座を受講してからトリミングすると良いでしょう。

シニア料金の相場

シニア料金の相場

トリミングの料金は、中小型犬が5,000~10,000円、大型犬が10,000~16,000円です。もちろん地域差もありますし、犬種による細かい料金設定はサロンにより異なるため、お近くのサロンなどに事前確認をとることをおすすめします。

老犬のトリミングを安全に行うためには

老犬のトリミングを安全に行うためには

老犬のトリミングを安全に行うためには、負担の少なく済むように配慮する必要があります。以下では、老犬のトリミングを安全に行うための方法について解説します。

愛犬の体調を確認する

トリミングに行く際は、愛犬の体調に問題がないか確認しておきましょう。トリミングに行く当日だけでなく、体調確認は常日頃から行うことが大切です。

しかし、トリミングに行く日に、少しでもいつもと異なる様子が見られた場合、日にちを変更するか、トリミング内容を少なくして負担を軽減してあげましょう。

体調管理として確認すべきなのは、皮膚トラブルや痛がっている様子がないか、悪臭がないか、鼻水や目やにがついていないかなどです。

また、食欲や排便・排尿の状態も確認してください。とくに夏場はトリミングサロンに行くだけでも体力が消耗されるため、注意が必要です。

ストレスが少ない施術を選ぶ

老犬にとってストレスが少ない施術を選ぶことも重要です。施術時間を短縮するために、シャンプー後に高吸収タオルで拭き取り、ブローの時間を短縮してくれるなど工夫をしているサロンもあります。

また、足腰が悪い犬のために、専用の器具を準備してくれるサロンもいいでしょう。事前に、老犬に配慮されたメニューがあるか確認しておくと愛犬の負担も軽減できるはずです。

手入れしやすいカットにする

被毛が長く、毛が伸びやすい犬種の場合、老犬になっても定期的なカットが必要です。定期的にカットが必要な犬の場合は、手入れしやすいカットを選ぶようにしてください。

できるだけ短めにカットしておくと、自宅でも手入れがしやすいです。また、目やにが出やすい犬の場合は、目の周りの毛を短くカットしてもらうといいでしょう。

トリマーにカット方法を詳しく伝えられないという場合は、「手入れしやすいようにカットしてください」と伝えると、ご希望に合わせてカットしてもらえます。

老犬をトリミングする際の注意点

老犬をトリミングする際の注意点

老犬のトリミングを行う場合、注意点が4つあります。愛犬の健康を維持するためにも、注意点について確認しておきましょう。

体温調節が負担になる可能性がある

老犬にとって、暑さや寒さの温度差は大きなストレスとなります。シャンプーの温度を適切に調節してもらえないと、犬の体に大きな負担を与えるため、セルフカットを行う場合にも注意が必要です。

ハァハァと息が荒くなっている場合は温度が高いため、適切に温度調節してあげましょう。

持病が悪化する可能性がある

老犬は若い頃と比べると身体が鈍くなり、自由が効かなくなっているため、少しのことでもストレスを感じやすいです。

そのため、長時間かかるトリミングではストレスを感じて、持病が悪化する可能性があります。最悪の場合、命に関わる危険性もあるため、トリミングの際は獣医師に相談してから行いましょう。

時間がかかると負担がかかる

老犬は、体力や筋力が衰えていることから、長時間のトリミングは体への負担も大きくなります。足腰が弱い老犬の場合、長時間立ちっぱなしの施術は精神的にストレスを感じ、疲れてしまうこともあります。

そのため、できるだけ短時間でトリミングを終わらせられるか相談するか、日にちを分けて少しずつトリミングするなどの工夫をしましょう。

ストレスになる場合がある

老犬は腰や関節の痛みにより、トリミングにストレスを感じやすいです。身体に大きなストレスが掛かると、腎臓病や心臓病などの病気が現れたり、悪化したりする可能性があります。

ストレスを最小限に抑えるためにも、体調が悪いときは無理に行わず、老犬の体調に配慮した施術法があるサロンを利用しましょう。

老犬のトリミングは犬の状態をよく確認してから行おう

老犬のトリミングは、清潔を保ち健康維持につながるとても大切なものです。

しかし、トリミング中はトラブルが起きてしまうこともあるため十分に対策をして、行うようにしましょう。

大好きなペットにはいつまでも元気でいてほしいですが、いつか必ずお別れの時がやってきます。いざその時が来ると、急な悲しみで冷静な判断ができなくなることもあります。

そのため、ペットが元気なうちから、ペットの看取りや葬儀などをどうするのかを考えておくことで、後悔のない最期の時を過ごせるでしょう。また、悔いなくきちんとペットとお別れをすることは、その後のペットロスの緩和にもつながるはずです。