猫と暮らす飼い主様の中には「最近愛猫が痩せてきたのではないか?」と心配な方もいらっしゃるでしょう。

ダイエットなどをしていないのに猫が痩せる時には、考えられる原因が複数挙げられます。加齢など心配のいらない生理現象の場合もありますが、もしかすると病気が潜んでいるのかもしれません。

今回の記事では、猫が痩せる原因や、食欲の有無でわかる病気、痩せてきた老猫のケア方法などをご紹介します。

猫が痩せる3つの原因

猫が痩せる3つの原因

老猫が痩せている場合、何が原因か突き止めて対処する必要があります。はじめに、猫が痩せる3つの代表的な原因をご紹介します。

加齢による食欲の低下

猫が年齢を重ねるごとに、徐々に食欲が落ちてくるのは自然なことです。老猫になると筋肉量が落ちて活動も減るため、若い時ほどエネルギーを必要としません。

キャットタワーに上らなくなったり、おもちゃで遊ぼうとしなかったり活動量は自然と減っていきます。消化機能が徐々に衰えるため食欲も低下する傾向にあります。

また、嗅覚が衰えていたり、味覚が変化したことにより食事に興味がなくなっていたり、足腰が弱って若い頃の耐性でご飯を食べるながつらくなっていたりする可能性も考えられるでしょう。

加齢によって少しずつ痩せる場合は、大きな心配はありません。

ストレスによる食欲の低下

猫は繊細な動物なので、ストレスを感じると食欲が低下します。ストレスによって消化機能も低下することが多く、下痢や便秘、嘔吐などがおこることもあります。

ストレスの原因として、体の痛みや体の変化、生活環境の変化などです。ストレスによる食欲の低下や消化不良が続くと猫が痩せてくることがあります。

運動量の増加で消費カロリーが多くなる

運動によってカロリーは消費されます。さらに運動によって筋力が増え、基礎代謝量が多くなる傾向があります。

運動をよくする活発な猫は、充分なカロリーを与えないと徐々に痩せることがあります。また、日々の運動量や基礎代謝量に合ったカロリーを摂取できていない可能性も考えられます。

そのため、愛猫の運動量が多い場合は多めにカロリー摂取できるようにしましょう。

猫が病気で痩せる場合は「食欲」に注意!

猫が病気で痩せる場合は「食欲」に注意!

猫がなんらかの病気で痩せることもあります。

猫が痩せる原因に病気が潜んでいる場合、「食欲があるのに痩せる病気」と「食欲がなくなって痩せる病気」の2つのパターンが考えられるでしょう。以下では、それぞれの病気について解説します。

食欲があるのに痩せる病気

食欲があるのに痩せる病気には下記が挙げられます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、首にある「甲状腺」というホルモン分泌器官が腫瘍化して、サイロキシン(T4)という体を活発にするためのホルモンが過剰に分泌される病気です。

10歳以上の高齢猫に発生しやすい病気のひとつで、猫は食欲が亢進してガツガツと食べるにも関わらず痩せてきます。水もがぶがぶと飲み、多量の尿をします。鳴き声が異常に大きくなったり、性格や顔つきが変わったりすることもあります。

糖尿病

食事から吸収した血液中の糖は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの作用で、細胞内に引き込まれてエネルギーに変換されます。

糖尿病はインスリンが不足し、正常に働かなくなることによって、糖が細胞に取り込まれず血液中を漂い続けて高血糖となる病気です。

糖尿病になると、細胞にエネルギーが行き渡らないため、体が栄養を摂取しようとして食欲が増しますが、糖が細胞に取り込まれないため痩せはじめます。糖尿病の場合、痩せる他にも多飲多尿や毛艶の悪化などの症状が現れます。

進行して「ケトアシドーシス」という状態に陥ると、元気食欲が低下し、緊急の治療が必要であるため、早期発見が重要です。

寄生虫の感染

回虫などの消化管寄生の寄生虫がいると、消化管からの栄養が吸収できなくなり、食べても痩せてきます。

寄生虫の寄生数が多いと、痩せる他にも下痢や嘔吐などの症状が出ることもあります。寄生虫感染の場合、比較的急に痩せるのも特徴のひとつです。

寄生虫は糞の中に出てくることもあるため、保護猫や外によく出る猫が急に痩せたら糞をよく観察するようにしましょう。

食欲がなくなり痩せる病気

食欲が低下して痩せる病気にはたくさんのものがありますが、以下ではとくに猫に多い病気についてご紹介します。

腎臓病

腎臓病は猫に多い病気のひとつです。初期では症状があまり出ませんが、進行すると、体内の電解質のバランスが崩れることなどが原因で食欲が低下し、痩せてきます。

腎臓病には急性腎臓病と慢性腎臓病があります。急性腎臓病の場合、原因を解消できれば腎臓の機能が元に戻ることがありますが、慢性腎臓病は進行性で一度衰えた腎機能は元には戻りません。

慢性腎臓病で痩せてきたら、すでに病気が進行している段階だといえるでしょう。

口腔疾患

日々の歯ブラシなどのデンタルケアを怠ると、歯茎に歯垢がついて歯肉炎になります。歯肉炎は放置すると進行して歯周病になります。

歯周病になると、感染はどんどんと歯の奥の方まで広がり、歯茎から膿が出たり歯が抜けたり、顎の骨にまで感染が及ぶと顎の骨が折れることもあります。歯周病になると、猫は口の中に痛みや違和感を持ち、食べたくても食べられないために痩せてきます。

消化器系の疾患

食道、胃、腸などの消化器官のどこかに疾患があると、栄養の消化と吸収が上手にできず、痩せてくることがあります。病気によっては突然痩せることもあります。

消化器系の疾患の場合、消化器そのものの病気が原因であることの他に、上記で解説した腎臓病などの影響で胃炎や胃潰瘍などが発生して消化器の働きが低下することもあります。

痩せた高齢猫に必要な4つのケア

痩せた高齢猫に必要な4つのケア

上記では、高齢猫が痩せることは自然だということをお伝えしました。しかし、高齢になると病気のリスクが増えるため、特別なケアが必要になってきます。

以下では、痩せた高齢猫に必要なケアを4つご紹介します。

体調の変化をチェックする

猫10歳以上の高齢猫は、自然と痩せやすい状態になりますが、病気が潜んでいる可能性もあります。体重や体調は日々しっかり確認して、病気の可能性があればできるだけ早めに動物病院を受診しましょう。

体重は1カ月で10%程度減少したら注意が必要です。1カ月で20%減少した場合、なんらかの病気の可能性もあるため動物病院を受診することをおすすめします。病気の確認のためには、普段から猫が食事をする様子をしっかり見てください。

口から不自然にフードがこぼれていないかをチェックし、水を飲む量、糞や尿をする回数や糞や尿の色や量、におい、歩き方や動き方などもよく観察するようにしましょう。

年齢に合わせた食事を与える

高齢猫は一度に食べられる量が減ってくる傾向があります。栄養を摂取するためには、少量を複数回に分けて与えると良いでしょう。

歯周病など口内トラブルがあって食べにくい場合は、フードをお湯などでふやかして与えるか、ウェットフードを利用すると良いでしょう。食事だけでなく、新鮮な水をたっぷり与えることも腎臓病や脱水などの予防のために大切です。

快適に過ごせる環境を整える

老猫は関節が衰え、関節炎を発症しやすくなります。

関節炎など足腰の病気になると猫は動きにくくなるため、できるだけ足腰に負担がかからないように配慮してあげることが重要です。トイレやベッドなどを出入りしやすい高さや位置にすることが大切です。

適度に運動する

老猫は自発的に身体を動かす機会が減るため、飼い主様がおもちゃで遊ぶなどで適度に運動させるようにしましょう。

運動によって適正体重を保つことができ、疲れることで睡眠が十分に取れるようにもなります。高いところに上りにくくなった場合は、高さが低いキャットタワーを利用し、おやつをキャットタワーに設置すると自然に運動してくれるようになるでしょう。

老猫が痩せているか確認する方法

老猫が痩せているか確認する方法

老猫が痩せてきたかもしれないと感じた場合、飼い主様が普段からの行いで診察の手助けになる場合があります。猫が痩せているか確認するためにも役立つため、ぜひ以下の方法を実践してみましょう。

日々体重を確認する

痩せているかどうか判断するためには、見た目だけでなく、日頃から体重を計測して数字を確認しておくことが重要です。

老猫の体重を測る際は、飼い主様が抱っこして体重計に乗り、後から飼い主様の体重を差し引くと愛猫の体重がわかります。

朝の食事前や食後など、同じ時間に毎日確認しておくと良いでしょう。また、測定した体重は必ずメモしてください。同時に食欲や運動量や排泄の状況を確認しておくことをおすすめします。

食欲があるか確認する

日頃から食欲があるかの確認も重要です。なんとなく食欲が減っている気がするというだけでなく、しっかり量を測って与え、食欲を確認しましょう。

ドライフードの場合はカップで測り、ウェットフードはグラム数で測定してください。また、ペットがエサを残している場合は、量を差し引きましょう。

老猫の体調を確認する

老猫の排尿や排便のチェックも非常に重要です。尿の量がいつもより多かったり、尿や便に血が混ざっていたり、排尿の際に痛がっている、下痢、便秘など、いつもの便の状態と異なるようであれば要注意です。

また、老猫が部屋の端や暗い場所でうずくまっていたり、見るからに元気がなかったりする場合にも注意が必要です。

動物病院を受診する

愛猫に上記のような変化が見られた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。動物病院へ連れて行く場合は、日々の体調や排便・排尿の様子などをチェックしたものを持って行くと診察の際に役立つでしょう。

とくに、ぐったりしている様子があったり、食事量が少なかったり、下痢、嘔吐や便秘などの症状が見られる場合は、すぐに動物病院に連れていってください。

老猫の食事で気をつけるべきこと

老猫の食事で気をつけるべきこと

老猫の食事では、バランスよく栄養素を摂取することが重要です。以下では、老猫の食事で気をつけることについて解説します。

タンパク質

老猫にはタンパク質が含まれた食事を与えることが大切です。猫が慢性腎臓病になると、タンパク質から作られる老廃物が体外に排出しにくくなります。

そのため、猫が高齢になれば、健康でもタンパク質を控えなければいけないとお考えの飼い主様もいらっしゃるでしょう。しかし、タンパク質を減らしてエサを与えても、慢性腎臓病を防ぐことはできません。

また、慢性腎臓病の初期症状には筋肉を維持するためにタンパク質を摂取することが重要なのです。タンパク質を控えるのは、慢性腎臓病がかなり進行してからであるため、元気な状態でタンパク質を大きく控えるようなことは避けてください。

エネルギー

老猫にエサを与える場合は、エネルギーがあるか確認することが重要です。猫は年を取ると活動量が減って、筋肉量が低下し、基礎代謝も自然と減少していきます。

そのため、7歳から10歳くらいまでは肥満のリスクが高まるでしょう。しかし、12歳を超えると肥満の猫でも徐々に体重が減り、痩せ気味になるかもしれません。

猫が痩せてしまう理由としては、食欲の低下や病気の影響、消化吸収が悪くなることが考えられます。また、シニア猫のキャットフードは低カロリーであることが多いため、痩せている猫には向いていません。

痩せた老猫にどのようなフードを与えるべきかわからない場合は、医師に相談してみましょう。

老猫の健康を維持するためには、水分を与えることも大切です。元々、猫は乾燥した地域で暮らしていたため、喉の乾きには鈍感ですが、加齢に伴いさらに鈍感になります。

多くの高齢猫は腎臓の機能が低下しますが、水分が足りない場合は症状が悪化してしまうかもしれません。そのため、猫が積極的に水分補給できるように、水飲み場の数を増やしたり、ウェットフードを利用したりして、水分を取りやすい状態に工夫してあげましょう。

老猫が痩せないエサの与え方

老猫が痩せないエサの与え方

老猫が痩せないようにするためには、食事の与え方を工夫してみましょう。

猫が痩せている場合、病気が原因でなければ、しっかり食事を摂取すると改善する可能性が高まります。以下では、老猫が痩せないエサの与え方について解説します。

温めて香りをつける

猫の食欲を促進させるためには、温めて香りをつけてみましょう。食欲には嗅覚が影響しています。

高齢猫は若い猫と比べると嗅覚が衰えてしまうため、香りを立ててあげると嗅覚が刺激されて食欲も増進するでしょう。ただし、猫は高温のフードは食べられません。

口の中やのどをやけどしないように、人肌程度の温かさにしてあげてください。カリカリのドライフードにお湯や温かい猫用ミルクをかけてみるのも効果的です。

エサをふやかしてあげると、食欲を増進させるだけでなく、噛む力が衰えてきた猫もフードを食べやすくなるでしょう。

小分けにして与える

エサを小分けにするとよりご飯が食べやすくなるでしょう。猫は少量をこまめに食べる習性があるため、小分けの食事のほうが食べやすいといわれています。

また、食事を小分けにすると、猫も美味しいと感じやすく食欲増進に役立つでしょう。置きエサで食欲がない状態が続いている場合は、小分けで食事を与えてみましょう。

細かく砕く

カリカリのドライフードを細かく砕くことも、猫の食欲を増進させるでしょう。胃などの消化器官に衰えがある猫の場合、粒を小さくすると胃への負担が減って食欲が進みやすいです。

しかし、フードを細かくしすぎると、一度に大量のフードを飲み込んでしまい、吐き出してしまう可能性があります。

そのため、愛猫の食べるスピードや様子を確認して、細かく砕いてあげましょう。猫は食感でご飯を選ぶこともあるため、ウェットフードやドライフードをふやかしてもご飯を食べない場合は、フードを砕いてみてください。

カロリーの高いものを選ぶ

老猫にいつもよりカロリーの高いご飯を与えることも食欲増進につながります。栄養価の高いご飯を効率よく摂取すると、体重の減少を抑えることができます。

ただし、高齢猫の場合は、バランスを考えて与えることが重要です。高カロリーなフードは猫の消化器官に負担になる可能性があり、フードの種類により嘔吐や下痢をする可能性もあるでしょう。

そのため、年齢と体調に合わせてフードを選ぶようにしてください。

食いつきが良いご飯を選ぶ

カロリーが高いフードを与えても、猫が摂取しなければ意味がないため、積極的に食べてもらうためにも食いつきがいいご飯を与えるようにしてください。

高齢猫の食いつきは、香りや栄養バランスなどが重要ですが、実際に食べてみなければ食いつきの良し悪しは判断しにくいです。そのため、食いつきの良さそうなフードを選び、良ければフードを継続して与えると良いでしょう。

与え方を工夫する

老猫へのフードの与え方も工夫してみましょう。たとえば、食事の回数を1日3回以上に増やすと、消化しやすく胃にも優しいです。

また、食事の前後には激しい運動や遊びを避け、穏やかな環境でフードを与えましょう。フードの上に香りがあるものをトッピングしたり、ドライフードとウェットフードを交代であげたりすると効果的です。

痩せた原因を把握して適切なケアを

今回の記事では、猫が痩せる時に考えられる原因や、具体的な病気についてお伝えしました。猫が痩せる理由には色々なことが考えられます。原因を見極め、適切なケアを行いましょう。

また、なんとなく痩せてきたな、と感じた場合、日常の観察をよりきめ細かく行い、体調に異変が出た場合はすぐに動物病院を受診することも大切です。

そして、大好きなペットにはいつまでも元気でいてほしいですが、いつか必ずお別れの時がやってきます。いざその時が来ると、急な悲しみで冷静な判断ができなくなることもあるでしょう。

そのため、ペットが元気なうちから、ペットの看取りや葬儀などをどうするのかを考えておくことで、後悔のない最期の時を過ごすことができます。また、悔いなくきちんとペットとお別れをすることは、その後のペットロスの緩和にもつながるはずです。