愛犬には少しでも健康に長生きしてもらいたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。犬がかかりやすい病気をあらかじめ知っておいて、できることなら予防したいという飼い主様も多いでしょう。
犬の死因の中で最も多いもののひとつがガンです。今回は犬の死因として多いガンや心臓病について原因や症状などをお伝えし、犬が長生きするために飼い主様にできることをお伝えしていきます。
目次
犬の死因で多いのはガン(腫瘍)
犬の死因として多いのは以下の3つです。
- ガン(腫瘍)
- 循環器疾患
- 泌尿器疾患
中でもガンは最も多い死因のひとつだと言えるでしょう。
ところで、腫瘍とは何でしょうか?腫瘍とは、体を構成する細胞が体のルールを無視して無秩序に増殖し、塊状になったものを指します。
腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、悪性腫瘍を一般的にガンと呼びます。犬の死因を調べたデータでは、死因として挙げられているのは「腫瘍」とされ、ガンであるかどうか(悪性腫瘍であるかどうか)までは明記されていません。
しかし、本文ではガンという言葉を使います。
犬がガンになる原因
犬がガンになる明確な原因はわかっておりませんが、生活環境や遺伝などいくつかの要因が関与しているかもしれません。以下では、一般的にガンに関わるとされている要因についてお伝えします。
運動不足による肥満
人の場合、食道ガンや大腸ガンなど一部のガンにおいて、運動不足や肥満が発症リスクに関わることがわかっています。
犬の場合は人間と違い、明確に肥満がガンのリスク要因であることが判明しているわけではありませんが、犬のさまざまな病気の背景には、肥満が存在しています。
犬が一度肥満になると、散歩が億劫になったり、日常の動きも少なくなったりするため悪循環になりがちです。中高齢以降の犬は特に肥満になりやすい傾向があるため、注意が必要です。
ストレス
人は、ストレスもガンのリスク要因としてさかんに議論されています。人の体内では、ガン細胞は比較的日常的に発生しているにも関わらず、多くの人がガンを発症しないのは免疫力により、ガン細胞が抹消されるからです。
ストレスを受けることにより免疫が低下すると、発生したがん細胞を駆除できない状況が続き、ガンが発症するという説があります。犬も人と同様に、ストレスとガンの間には因果関係があると考えられています。
食事
高カロリーな食事やおやつの与えすぎは肥満の原因につながります。また、あまりに安価すぎるペットフードには添加物が多く含まれているかもしれません。添加物の中にはガンの原因とされるものが含まれる場合もあるため、多量に摂取するとガンのリスクが上がります。
遺伝
ガンには遺伝も関わります。人でも遺伝が明確になっているガンがありますが、犬でも「腎嚢胞腺癌」、「乳腺腫瘍」など遺伝が関わることが判明しているガンもあります。
また、特定のガンが特定の犬種によく発生することもわかっていて、遺伝がガンに関係していることを示唆しています。
老化
一般的に、若い犬より歳をとった犬の方がガンになりやすいと言われています。他の生き物にも言えることですが、歳をとると免疫機能が低下してしまうため、自分の体の中でガンを発見し、退治することが難しくなってしまいます。
「最近、飼い犬の体力が落ちてきたな……」と飼い主様が感じたら、定期健診の頻度を増やしてみても良いでしょう。
紫外線
犬も、人間と同じく紫外線により皮膚がダメージを受けてしまいます。体毛により、ある程度は紫外線を防げますが、長時間外に出ていると日焼けをしてしまうかもしれません。
紫外線を大量に浴びると皮膚ガンになる可能性が高くなるため、人間同様日焼け対策をした上で散歩に連れて行ってあげましょう。
犬がガンになったときの症状
すべてのガンで、初期では症状がほとんどないことが特徴です。皮膚のガンでは、皮膚に赤みが出たり、しこりができたりすることがあります。
腎臓や膀胱など尿路系の腫瘍の場合は、尿が赤くなる、頻尿になるといったケースもあります。消化器系のガンでは、下痢や軟便、便に血が混じることがあります。
ガンが少し進行すると、元気や食欲が低下して痩せることが多いと言えます。ガンの種類によっては、歩く時にふらついたり、運動ができなくなったりすることもあります。また、お腹が膨らんでみえ、ふらつきや痙攣などの発作をおこすかもしれません。
飼い犬がガンになってしまったら
これまで、犬がガンになる原因や症状を解説してきました。では、実際に飼い犬がガンになってしまったらどうすれば良いのでしょうか。以下で治療方法を解説していきます。
外科療法
外科療法は、犬の体にあるガンを、手術をして取り除くという方法です。手術の良い点は、腫瘍が他の内臓や組織に転移していなければ、すべて取り出すことが可能であるという点です。体にあるガンをすべて取り除けば、外科療法のみで完治が期待できます。
しかし、腫瘍があまりにも大きかったり、大事な組織に絡みついてしまったりしている場合は、手術による治療が難しいと考えられます。
ガンによる手術は基本的に全身麻酔で行うため、体への負担が大きいこともデメリットになるでしょう。そのため、手術は犬の年齢やガンの状態を考えて行われます。
放射線療法
放射線治療とは、ガン細胞に放射線をあててダメージを与え、DNAを破壊する治療方法です。
外科治療と違って体にメスを入れないため、痛みが少なく臓器も温存しやすいのがメリットとなります。また、手術が難しいと言われている脳の腫瘍に対しても放射線治療は有効です。
しかし、放射線治療はガン細胞だけでなく正常に動いている細胞にまでダメージを与えてしまう恐れがあります。
また、全身麻酔が必要であるため、外科療法ほどではないにしても犬の体に負担がかかってしまいます。費用も高額になるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
化学療法
化学療法は、犬に抗ガン剤を投与し、ガン細胞を破壊するという方法です。外科治療、放射線治療と違い転移したガンにも治療が可能であるため、手術が難しいと言われた犬にも有効です。また、血液のガンであっても治療が可能であるというメリットがあります。
しかし、放射線治療は正常な細胞にもダメージを与えてしまうというデメリットがあります。また、副作用が大きく、以下の症状が現れるかもしれません。
- 倦怠感
- 吐き気
- 嘔吐
- 脱毛
- 食欲不振
- 下痢
一回の抗ガン剤投与でガン細胞を破壊するのは難しいため、何回も辛い副作用に耐えながら治療していかなければなりません。
長い間、犬の体に大きな負担がかかるため獣医さんと相談しながら治療していくことが大切です。
細胞免疫療法
細胞免疫療法とは、犬の体に元々ある免疫を利用して治療する方法です。犬自身から免疫細胞を採取して、ガン細胞に打ち勝つために免疫を増やしたり強めたりします。
細胞免疫療法の良いところは、他の治療方法と違って副作用がほとんどないところです。飼い犬が副作用に耐えながら治療しているのをそばで見続けることは飼い主様にとっても辛いでしょう。
ガンの進行が遅くなったり、ガンによる痛みが改善され自覚症状がなく過ごせたりといったケースも少なくありません。
しかし、細胞免疫療法のみでの完治は難しいケースが多く、放射線治療や抗ガン剤治療などと併用していく必要があります。
他の治療方法で治すことが不可能な状態の犬に、終末医療として利用されることも多くあります。最期を苦しまずに迎えて欲しいという気持ちの飼い主様におすすめの延命治療です。
犬のガン以外で多い死因
犬はガンで亡くなってしまうことが最も多いと言われていますが、他の病気で亡くなってしまうことも考えられます。
以下では、ガンの次に多い死因である心臓病、腎臓病について解説していきます。
心臓病(循環器疾患)
犬の心臓病で最も多いのは僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)というもので、心臓の4つある部屋のうち、ひとつが正常に働かなくなり血液が逆流してしまう病気です。
初期であれば内科治療のみで完治が可能ですが、症状が進行すると、急性心不全により突然死してしまう可能性のある怖い病気です。
近年、犬の心臓病は増えつつあります。心臓病は初期症状があまりないため、飼い主様が気づかないうちに進行しているケースも珍しくありません。
早期発見が可能な病気であるため、必ず定期健診に連れて行ってあげましょう。
腎臓病(泌尿器疾患)
腎臓病は、ウイルス感染や外傷などが原因で腎臓がダメージを受け、十分に機能しなくなる病気です。
初期症状はあまり見られませんが水分をたくさん摂り排泄量も多くなることがあります。この時点で腎臓の機能は健康な犬の4分の1にまで低下していると言われています。
残念ながら、一度機能を失った腎臓が治療により元の状態に戻ることはありません。そのため、進行を遅らせることが重要となります。
決して珍しい病気ではないため、日ごろから犬の水分量や尿量に注意し、異常を感じたらすぐに動物病院へ連れて行くことが早期発見に繋がります。
犬に長生きしてもらうためにやっておきたいこと
ガンだけでなく、色々な病気にできるだけかからず長生きしてもらいたいというのがすべての飼い主様の願いだと思います。ここでは、犬の長生きのために、飼い主様にできることをお伝えします。
日々健康状態を観察する
病気は、早期発見、早期治療が後々の回復に関わります。病気にいち早く気づくためには、普段から健康状態を観察し、少しでも異変に気づいたらできるだけ早く動物病院を受診することが必要です。
観察ポイントは、元気や食欲、排便排尿の回数や様子、排泄物の色や量や形、また、呼吸の様子や歩き方などです。
毎日のブラッシングやマッサージなどで体を触ると、皮膚のしこりやイボなどの異常に気づきやすいでしょう。頭や背中だけでなく、体中すべてを触ることも重要です。
定期的に健診を受ける
病気は、初期では症状がわからないことも少なくありません。動物病院での定期健診を受け、血液の数値の変化や、レントゲンやエコー検査などの画像診断で臓器の異常に気づくことも大切です。定期健診は、1年に1回は必ず受けましょう。
7歳以上のシニア犬の場合、獣医師とも相談して半年に1回程度を目安にすると安心です。健康診断のメニューも年齢に応じて少しずつ追加していくのも良いでしょう。
避妊手術や去勢手術を受ける
避妊手術や去勢手術などの不妊手術を実施すると、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍、精巣腫瘍など生殖器の病気を予防できます。また、発情に関するストレスを軽減させるメリットもあります。
犬を長生きさせたい場合、不妊手術はひとつの有効な手段として検討すると良いでしょう。
適度な運動を行う
運動は肥満の防止になるだけでなく、ストレス解消にもつながります。日々の運動には散歩が効果的です。小型犬である場合、ペットショップではお外での散歩は必要ないと説明されることもありますが、犬にとって外を歩くことは大切です。
外に出て散歩をすることが難しい場合は、室内で運動できるおもちゃや自宅の階段などを利用して、できるだけ運動量を増やす工夫も必要です。
健康的な食事を心がける
日々の食事は健康の要です。良質な犬用のフードを年齢に合わせて選択しましょう。適量を守ることも肥満防止のために重要です。市販の犬用フードには様々な種類があります。
おすすめのフードのひとつには、ペットフードの栄養基準や原材料などを公表している、アメリカの団体【AAFCO】の基準をクリアしているものがあります。
また、賞味期限が6か月以内のペットフードが良いでしょう。添加物もできるだけ少ないものが好ましいと言えます。フード選びに迷ったら動物病院おすすめのフードを選択するのもひとつの手です。
危険な場所から遠ざける
人の生活の中には、犬が食べると中毒の原因になる、喉に詰まってしまう等、危険なものがたくさんあります。お部屋の整理整頓を心がけ、犬が誤食しそうなものを犬の手が届かないところに片付けましょう。
体温調節が苦手な老犬の場合、室内で過ごしてもらう方が安全です。外飼いの犬も年齢を重ねたら室内飼いを検討しましょう。
タバコの副流煙は犬や猫などのペットにも害があることがわかっています。喫煙は犬が入らない場所で行いましょう。アロマオイルも犬にとっては有害であるため注意が必要です。
愛犬の長生きのためにはこまやかな観察が大切
今回は犬の死因として多いガンに着目して原因や症状などを解説しました。また、犬の長生きのために飼い主様にできることをお伝えしました。犬は言葉で自分の体調の変化を伝えることが不可能であるため、飼い主様のこまやかな観察が大切です。
特に年齢を重ねてくると、単なる老化現象のひとつなのか、なんらかの病気なのかが不明なことも多くなります。気になることが出てきたら迷わず動物病院で相談しましょう。
大好きなペットにはいつまでも元気でいてほしいのは全飼い主様の願いですが、いつか必ずお別れの時がやってきます。いざという時が来ると、急な悲しみで冷静な判断ができなくなることもあります。
そのため、ペットが元気なうちから、ペットの看取りや葬儀などをどうするのかを考えておくことで、後悔のない最期の時を過ごすことが可能です。
また、悔いなくきちんとペットとお別れをすることは、後々のペットロスの緩和にも繋がります。COCOペットでは、生前の終活についてのご相談も承っております。些細なご質問でも、お気軽にご相談ください。