猫を飼育していると、様々な病気が心配と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その中のひとつとして、肝臓病が挙げられるかもしれません。飼い主様の中には、猫の肝臓病について知り、できる限りの予防をしたいという方も多いでしょう。
今回の記事では、猫の肝臓病やその原因などをお伝えします。
猫がかかりやすい肝臓病について解説し、早期に気づくために気を付けたい兆候や、猫を肝臓病から守るために飼い主様にできることについても解説します。
目次
肝臓病とは?猫がかかる原因は?
そもそも、肝臓病とは何でしょうか。万が一、肝臓病になった際のためにも、事前に病気の詳細について知ることは大切です。
以下で猫の肝臓病の原因について解説します。
肝臓病とは?
肝臓は、消化のための胆汁を分泌したり、栄養素やホルモンの代謝・合成、有害物質の解毒をしたりなどと排泄、免疫、タンパク質合成などの多様な役割を果たす臓器です。
肝臓病とは、肝臓の炎症や脂肪蓄積などを原因として、肝臓そのものが病気にかかることです。肝臓病によって、肝臓が本来の働きをできない状態のことを「肝不全」と呼びます。
肝臓病による肝不全は、対症療法によってある程度までコントロールが可能です。
一般的に、人において「肝不全」と呼ばれる状態は、肝臓の機能が大幅に低下して黄疸などの重篤な症状を呈した場合です。
一方、猫の場合は肝臓の機能がやや低下した状態でも肝不全と呼ぶ獣医師もいます。
猫が肝臓病にかかる原因
猫が肝臓病になる主な原因としては、下記のようなものが挙げられます。
- 高齢化:年齢と共に腫瘍などのリスクが上がります。
- 遺伝的要因:シャム猫は遺伝により「肝アミロイド症」という肝臓の病気にかかりやすいことがわかっています。
- 肥満:肥満の猫は、なんらかの原因で食欲不振や食欲廃絶をおこすと「肝リピドーシス」という肝臓の病気にかかりやすいことがわかっています。
肝臓病にかかる原因は、猫の状態や年齢、サイズにより異なります。そのため、肝臓病の疑いがある場合は、医療機関で診断を受けましょう。
かかりやすい肝臓病のおもな種類
肝臓病にも種類があり、種類により対処法や治療法は異なります。適切に対応するためにも、事前に肝臓病の種類について知ることが大切です。
以下では、猫がかかりやすい肝臓病についてそれぞれ詳しく解説します。
急性肝炎
「肝炎」とは、なんらかの原因で肝臓に炎症がおこる状態です。その原因には、ウイルス、細菌、寄生虫、中毒などが挙げられます。
急性肝炎は、これらが原因となり、肝臓に急性の炎症が起こる状態です。原因が取り除かれない場合、慢性肝炎に進行することもあります。急性肝炎を引き起こす原因としては、感染や中毒が挙げられます。
特にワクチン接種をしていない猫では「猫伝染性腹膜炎」の原因ウイルスによる「肉芽腫性肝炎」のリスクが高まります。
また、細菌感染による「化膿性肝炎」が発生することもあるでしょう。急性肝炎では、下痢、嘔吐、黄疸、腹水貯留、神経症状、昏睡などの症状が現れます。
急性肝炎はすぐに命に関わる状況が多いため、速やかな治療が必要です。
点滴による解毒などの対症療法を行うと共に、原因を突き止め適切な抗生剤などを投与します。状態が落ち着いた後に、食事療法などを取り入れてコントロールすることも多いです。
慢性肝炎
慢性肝炎は、肝臓の炎症や肝細胞の壊死が慢性的に起こる状態です。原因には、上でご紹介した急性肝炎の原因となるウイルスや細菌などの感染症に加え、薬剤などによる慢性中毒や免疫障害などが挙げられます。
慢性肝炎が続くと肝臓が線維化し、最終的には肝硬変に進行します。
慢性肝炎の症状は初期では明確でなく、特徴的な症状が認められないことが一般的です。進行して肝硬変などになると黄疸や腹水貯留、神経症状などが現れますが、この段階まで悪化すると救命が難しいことも多いです。
初期で気づいて治療をはじめるために、定期的な健康診断が必要となります。
慢性肝炎の治療はその原因によって様々です。なんらかの薬剤などが原因となっている場合は減薬や休薬を行い、細菌などの感染症が原因の場合は抗生剤などを使用します。
免疫障害の際にはステロイド剤による免疫抑制が必要な場合もあります。すでに腹水などがみられる場合は利尿剤などでの対症療法を行いましょう。
胆管炎・胆管肝炎
胆管は、肝臓と腸を結ぶ管です。肝臓で生成された胆汁がこの管を通って腸に流れます。胆管炎は、胆管で炎症が起きた状態です。
胆管が腫瘍や結石などで閉塞し、貯留した胆汁に細菌が感染する「化膿性」胆管炎と、免疫疾患などが原因となる「非化膿性」胆管炎があります。
胆管炎が肝臓まで波及し、肝細胞が障害を受けると「胆管肝炎」と呼ばれます。胆管炎の場合、初期症状はあまりなく、進行とともに食欲の低下や黄疸などの症状が見られることがほとんどです。
胆管炎の治療は、感染が原因の場合は抗生剤を使用し、免疫疾患に対してはステロイドを使用します。
その他の肝臓病
上記で挙げた病気以外にも、猫では肝外胆管閉塞(総胆管閉塞)という病気や、肝リピドーシスという病気になりやすいといえます。
肝外胆管閉塞は、胆管が何らかの原因で詰まることで胆汁が腸に流れなくなる病気です。溜まった胆汁によって黄疸などを引き起こします。
肝リピドーシスは、肥満の猫がなんらかの原因で食欲不振になった際に起こりやすい病気です。激しい胆汁うっ滞が起こり、肝不全となるため死亡率も高くなる傾向にあります。
猫が肝臓病かも?気を付けたい兆候
肝臓の病気は多くの場合、初期症状がないため、特徴的ではありません。時々下痢をしたり、吐くことがあったり、なんとなく食欲のない日があるという程度のため、飼い主様から見てもわかりづらいことが多いでしょう。
少しの異変に気づいた段階で動物病院を受診することをお勧めします。
肝臓の病気が進行すると、明らかに元気食欲がなくなり、体重が減少しはじめます。顕著な肝不全に進行すると、黄疸が出るなど明確な症状が出始めますが、この段階に陥る前に気づいてあげることが大切です。
猫の肝臓病は食事のせい?猫の肝臓病と食事の関係
肝臓病の場合、食事により病気が引き起こされることがあります。肝臓は消化器官でもあるため、食事との関わりが深いです。
食事を見直す場合は、以下のポイントを確認しましょう。
ペットフードが体に合っていない
大半の猫に問題がないフードでも、特定の猫の体に合わないことがあります。
しかし、ペットフードや食品が肝臓に悪いというわけでなく、体質により肝臓病を引き起こしている可能性が考えられるでしょう。
市販のキャットフードは肝臓を悪くするものは含まれていませんが、値段や体質に合うかどうかは猫により異なります。
そのため、現在使用しているキャットフードが体に合わない場合は、フードを変えてみて検査結果が良くなっているか確かめましょう。
また、フードを何度変えても検査結果が良くならない場合は、原因は他にあることが考えられます。
手作り食により栄養バランスが崩れている
手作り食を与えている場合は、栄養バランスが崩れていることも考えられます。手作り食は、ペットフードよりも安全な食事で栄養バランスを考えやすいです。
しかし、手作りフードは自由度が高いため、栄養素のバランスを考えなければ悪影響が出ます。
中でも、手作りフードでは、脂質・脂肪を制限しすぎたり、塩分を抜きすぎたりするケースが多々見られます。
適度の制限であれば、健康にも良い影響がありますが、制限しすぎるとかえって体調を崩してしまうでしょう。
脂質を摂りすぎると脂肪肝になることもありますが、脂質は細胞の材料であり、肝臓細胞を作るためにも必要不可欠です。そのため、あまり脂質制限をしすぎても体に悪影響です。
油の中にも種類はありますが、サラダオイルや肉の脂は制限して、魚の脂やオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を加えるといいでしょう。
また、猫を含むすべての哺乳類は塩分なしで生きていくことは不可能です。塩分を極端に抜くのではなく、何事もバランスが大切であることを理解しておきましょう。
タンパク質を制限しすぎている
肝臓病の場合、タンパク質を制限したほうがいいと耳にすることもあるでしょう。しかし、タンパク質を極端に制限してはいけません。タンパク質を減らすべき症状は、肝炎が進行して肝硬変などの重症な肝臓病になった場合です。
重症な肝臓病の場合、血中のアンモニアが増加しすぎている状態です。タンパク質を食べすぎるとさらにアンモニアが増えやすく、肝機能が衰えている場合は、アンモニアを適切に処理できません。
そのため、タンパク質制限が必要です。しかし、タンパク質を減らしすぎると、肝臓に栄養が足りなくなり、健康状態を悪化させます。
タンパク質制限をする際は、血液検査をしてアンモニア値を確認しておきましょう。
脂質を与えすぎている
脂質を与えすぎている場合、肝臓病になりやすいといわれています。
脂質は、エネルギー源や栄養素として必要な要素ですが、摂取しすぎていると肝臓に脂肪が溜まり、脂肪肝を悪化させる恐れがあります。
脂肪肝であるのに、幹細胞に脂肪を溜め込むと細胞が崩れてしまい、体に悪影響を及ぼすでしょう。放置していると、肝臓に炎症が広がり、肝硬変になる恐れもあります。
食事で脂質を与えすぎることはないと思いますが、ペットフードの中には脂質が多く含まれています。そのため、事前に脂質がどれくらい含まれているか確認して、少なめのものを選ぶようにしてください。
急激なダイエットをしている
急激にダイエットすると、肝機能値が悪化する恐れがあります。
肥満も肝臓病につながるため、ダイエットをすることは大切です。しかし、無理なダイエットは肝臓に負担がかかりやすくなります。
食事量を減らすと、体に溜まっている脂肪を燃焼させてエネルギー源として利用しますが、脂質を制限しすぎると肝臓には脂質が溜まりやすくなります。
そのため、急激にダイエットするのではなく、ゆっくり進めて適度な運動も行いましょう。
猫を肝臓病から守るためにできること
飼い主様としては、長い期間猫と一緒に過ごすためにも、大切な猫を肝臓病から守りたいですよね。肝臓病は、症状が分かりづらい病気のため、気づいた頃には手遅れだったということも考えられます。
悲しい結果を招かないためにも、肝臓病を予防しておくことが重要です。以下では猫を肝臓病から守るために飼い主様にできることをお伝えします。
適切な体重に管理する
猫の肥満は、肝臓病のほか、糖尿病など様々な病気の原因となります。肥満気味の猫には食事量や種類の見直しを行い、おやつの与えすぎに気を付けましょう。
適切な体重管理をすると、肝臓病だけでなく他の病気や精神面にも良い影響があります。猫が肥満かどうかわからない場合、獣医師に相談すると良いでしょう。
すでに猫が肥満になっている場合、飼い主様独自のダイエットは食欲の低下を招き、上でお伝えした肝リピドーシスを発症させる危険性があります。減量は獣医師の指導の下で行うことがおすすめです。
人間の食べ物を与えない
人間の食べ物は猫に与えないことが大切です。
人の食べ物には、香辛料や調味料、加工食品に利用されている添加物が含まれており、猫が口にすると体に悪影響を与えるものがあります。猫の体調が悪くなるだけでなく、ものにより死に至る可能性もあるため注意が必要です。
また、一度人間の食べ物を与えてしまうと、猫は人間の食べ物を欲しがる習慣が付きます。
テーブルの上や調理中の場所に飛び乗ってしまうなどの行動も生じやすくなり、しつけがしづらくなるため要注意です。
万が一、猫が人間の食べ物に興味を示しても与えないようにしてください。どうしても猫が人間の食べ物を食べようとしてしまう場合は、猫のフードを与えて気を紛らわせるといいでしょう。
定期的に健康診断を受けさせる
猫が肝臓病にならないためにも、定期的に健康診断を受けることが重要です。肝臓病は、病気が進行するまで症状が現れにくく、事前に確認しづらいことが特徴です。
日々の健康状態を確認していても、気づけないこともあり、気づいた頃には病気がかなり進行していたということも考えられます。
病気が進行しすぎると回復に時間がかかり、猫にとっての負担も大きくなります。そのため、定期的に健康診断を受けると早期発見に繋がり、適切な治療を始めやすいです。
若い猫の場合は年に1回、興寧の猫は半年に1回以上の健康診断がおすすめです。肝臓が正常に働いているかを確かめるためには、血液検査を受けてみましょう。
日々の健康観察を怠らない
肝臓の病気は、初期段階で治療をはじめると長期的にコントロールできることが多いですが、明確な症状が出てしまうと治療が困難になることが考えられます。
猫のヘルプサインに気づくためにも、日々の観察で早期発見することが重要です。猫の健康管理において、体重測定は大変有用です。定期的な体重測定を行うと良いでしょう。
食欲の変化にも気をつけることが必要です。また、血液検査によって、初期の肝臓病を見つけることが可能なため、定期的な健康診断を受けることをお勧めします。
健康診断は、成猫では年1回、高齢猫や持病のある猫は半年に1回程度を目安に獣医師と相談しましょう。
肝臓病から猫を守り、長生きを目指しましょう
肝臓は「肝心要」の語源ともなっているように、体の中でもとりわけ重要な臓器だと言えます。愛猫の長生きのためには、肝臓を守ることが大切です。
もしも肝臓病になってしまっても、初期の段階で治療を始めれば、生活の質を保ったまま長期的にコントロールをすることが可能なため、健康診断が重要です。
また、記事の中でもお伝えした通り、肥満にさせない注意も必要です。ワクチン接種も忘れずに行うことで、猫を肝臓病から守りましょう。