一緒に暮らす老犬の息が荒いことに気づいて、原因が気になったり、そもそもその呼吸が正常なのか異常なのかがわからなくて心配になる飼い主様は多いでしょう。もしも異常があるなら、できるだけ早く適切な対応をしてあげたいですね。

老犬の息の荒さには老化、暑さ、ストレス、病気など色々な原因が潜んでいます。今回の記事では、息の荒さの原因や、正常な呼吸と異常な呼吸の見分け方、息が荒くなる具体的な病気などを詳しくお伝えします。

老犬の息が荒い原因

はじめに、老犬の息が荒くなる代表的な原因についてお伝えします。

老化

年齢を重ねると、犬も筋力や心肺機能が衰えます。若い時は平気だった散歩や運動などでもハァハァと息が荒くなることがあります。加齢による身体機能の低下はどのような犬にも訪れるため、特別心配する必要はありません。

ただし、息の荒さがだんだんと激しくなったり、犬が倒れてしまう、呼吸が不規則になる、激しく咳き込むなどの場合は、老犬の最期が近い可能性も考えられます。

暑さ

犬は肉球や鼻先などごく一部にしか汗腺を持ちません。そのため人のように汗で体温の調節を行うことができません。犬は「パンティング」と呼ばれる、口を開けてハァハァと浅く早い呼吸で体温の調節を行います。パンティングは、運動時や暑い時などにごく一般的にみられる生理現象です。

しかし、中にはパンティングを伴う病気もあるため、安静時や涼しい時などでも常に犬がパンティングを行っている場合は注意が必要です。

不安やストレス

犬は不安やストレスを感じた際も息が荒くなります。「ハァハァと息をしながら落ち着きなくウロウロしている」「全身を震わせている」などの場合は、不安やストレスを感じている可能性が高いと言えます。

犬の不安やストレスの原因は様々です。騒音、見知らぬ場所や人など愛犬が不安やストレスを感じている原因を突き止め、できるだけ取り除くようにしましょう。ストレスの原因を解消できない場合は、できるだけ安心させてあげることが必要です。

病気やけが

強い痛みや不快感などで息が荒くなることもあります。犬は人とは異なり、言葉で伝えることができないため、犬に起きている変化を飼い主様が見つけてあげる必要があります。体の不調で息が荒くなる場合は、ほとんどのケースで食欲もなく、飼い主様の呼びかけへの反応も薄くなります。

息が荒くなる病気に関しては、後から詳しくお伝えするため、そちらも参考にしてみてください。

老犬の正常な呼吸と異常な呼吸の見分け方

老犬の正常な呼吸と異常な呼吸の見分け方

愛犬の呼吸が気になる時、正常なのか異常なのかはどのように見分ければ良いのでしょうか。

普段の呼吸数と同程度なら正常

犬の呼吸が異常かどうかを知るためには、正常な呼吸数を知り、比較してみることが大切です。一般的に、成犬の安静時の正常な呼吸数は10回~35回程度です。子犬や小型犬は比較的多く、大型犬は少ない傾向があるため、愛犬の正常な呼吸数を把握しておきましょう。

呼吸数のカウントは、吸って吐くという動作が1カウントです。犬がリラックスしている時に、お腹の動きを見たり、愛犬の体にそっと手を添えたり、鼻の前に鏡をかざし、鼻息で鏡が曇る回数を数えたりする方法でカウントしましょう。犬の呼吸を1分間数え続けるのは難しいため、10秒間でのカウントを6倍するなどの方法が一般的です。

明らかに呼吸数が多いもしくは様子がおかしいなら異常といえる

犬の呼吸が荒い時、できるだけ早く動物病院を受診すべき状況もあります。下記のようなケースは、すぐに動物病院に連絡をして一刻も早い受診をしましょう。

  • 涼しい環境で1分間の呼吸数が40回を超える
  • 苦しそうな様子をしている
  • のけぞるように上を向いて呼吸している
  • 呼吸音が大きい、ヒューヒュー、ガーガーなどの異常な音がする
  • 舌の色が白くなっていたり紫になっている

老犬の息が荒いときに飼い主がしてあげられることは?

老犬の息が荒いときに飼い主がしてあげられることは?

老犬の息が荒い時、暑い場合は速やかに涼しい場所に移動させます。低湿度な環境であれば犬にとってはより快適です。首輪や服は脱がせ、楽な体勢が取れるスペースを確保しましょう。犬に苦しそうな様子がみられる時は、このような対応と同時に動物病院へ連絡をして、一刻も早く受診しましょう。

犬に呼吸の異常がみられる場合は、治療の遅れが生死を分ける場合もあります。様子を見ることはせずに、できるだけすぐに受診することが大切です。

老犬の息の荒さから考えられる病気

老犬の息の荒さから考えられる病気

ここでは、息の荒さを伴う老犬の病気について、代表的なものをお伝えします。

のどの疾患

のどに起こる問題としては「短頭種気道症候群」という状態があります。パグやブルドッグといった短頭種によくみられる病気の総称で、具体的な疾患には「軟口蓋過長症」という口腔の上側の奥の方の部分が長く垂れ下がり気道を塞ぐ病気や、気管がつぶれる「気管虚脱」などがあります。

適切な処置により苦しさが軽減することも多いですが、放置すると慢性的な低酸素から命に関わる場合もあります。

心臓の疾患

老犬に多い心臓の疾患としては、「僧帽弁閉鎖不全症」が挙げられます。特に高齢の小型犬に一般的な病気で、なんらかの原因で心臓内の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」が正常に働かず、心臓内で血液が逆流してしまう病気です。

心臓に問題があると、心臓が正常に働かないことで、肺に水が溜まる「肺水腫」を引き起こします。肺水腫は溺れている状態に近いため、この状態になると犬の息は荒くなります。

肺の疾患

肺水腫は心臓の問題で二次的に肺が悪くなる病態ですが「肺炎」など肺そのものに問題がある場合も犬の息は荒くなります。肺炎は、細菌などの病原体の感染や、誤嚥などが原因となり、肺に炎症がおこる病気です。初期では症状が現れにくく、息が荒くなるのは重症化してしまったあとだと言えます。

鼻・気管の疾患

鼻や気管に「鼻炎」や「気管支炎」などの問題がおこると、息が荒くなる可能性があります。鼻炎や気管支炎は細菌やアレルギーなどが原因となり、鼻の内部や気管支に炎症がおきる病気です。免疫の弱い子犬や老犬におこることが多く、放置すると肺炎などにつながる恐れもあるため、早期の対応が大切です。

その他

上でお伝えした以外にも、息が荒くなる病気には「熱中症」や「フィラリア症」などの可能性が考えられます。熱中症では、呼吸が荒くなったり、大量のよだれを垂らすなどの症状がみられます。フィラリア症は、フィラリアという寄生虫が心臓や肺動脈(心臓と肺の間の血管)に寄生する病気で、最悪の場合は死亡することもあります。

その他、ホルモン異常や腹水や胸水の貯留など、呼吸が荒くなる病気にはさまざまなものが挙げられます。

老犬の状態が気になるなら早めに動物病院を受診しよう

上でお伝えした通り、呼吸の異常が出る場合は様々な病気が考えられます。中には一刻も早く適切な治療を受けないと、救命できなくなる場合もあります。愛犬の呼吸が荒いと感じた場合、様子をみるのではなくできるだけ早い受診を行いましょう。

受診の際に、愛犬の呼吸の様子を動画撮影しておくと、言葉で表現しきれない状態を獣医師と共有できるため、大変有益です。ふだん飲んでいる薬がある場合は忘れずに受診しましょう。

適切な対応で愛犬をできるだけ早く楽にしましょう

今回の記事では、老犬の息が荒い場合に着目し、原因や対処法などをお伝えしました。犬の呼吸がいつもと違うと感じたら、まずはしっかりと様子を確認しましょう。お伝えした通り、愛犬の普段の呼吸数を知っておくことも大切です。

犬の息が荒い場合、犬が大変苦しい思いをしていることも少なくありません。飼い主様ができるだけ早く気づき、速やかに適切な対応をすることで、愛犬を苦しさから解放してあげましょう。