「愛犬にもそろそろ介護が必要かもしれない」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
愛犬が年齢を重ねてくると、介護について気になりはじめますね。愛犬に合った介護ができるように、具体的な介護方法を知りたい飼い主様も多いでしょう。自力で排泄できるかどうか、食事を食べられるかどうかなど、犬の状態によって必要な介護は異なります。
今回の記事では、老犬介護に必要な介護の中でも、特に重要なトイレや食事の介護、床ずれの予防方法、認知症への対処法、散歩時の歩行サポートなどについて解説します。
目次
老犬のトイレ(排尿・排便)の介護
介護の中でもトイレのサポートは特に気になりますよね。以下では、愛犬が快適に排泄できるように、排尿・排便の介護についてお伝えします。
自分で排泄できる場合
自分で排泄できる子は、体を支えてサポートしてあげましょう。支える方法は、男の子の排尿の場合、飼い主様がお尻側に座り、お尻側から股の間に手を入れて、太ももの付け根付近を内側から支えます。排便や女の子の排尿の場合は、足の付け根に近い腰のあたりを体の外側から支えます。
老犬がトイレを失敗する原因の多くは、排泄しようとして移動しても合わないケースです。タイミングを見計らって早めにトイレに誘導したり、トイレの場所を増やしたりなどの工夫をすると良いでしょう。
自分で排泄できない場合
排泄自体を自力で行うのが難しい子の場合、飼い主様が排泄そのもののサポートをしてあげる必要があります。排尿のサポートには「圧迫排尿」という方法を用います。これは下腹部を両手、又は片手で押し、膀胱をお尻側に圧迫して排尿させる方法です。
排便の場合は、肛門付近をぬるま湯で湿らせたガーゼなどで刺激し、排便を促します。肛門を刺激すると便が下りて来て肛門が盛り上がるので、そのタイミングでそっと押し出してあげましょう。便が固い場合など、出しづらい場合は、ビニール手袋をした指にワセリンや潤滑剤などを塗って優しく掻き出す方法もあります。
排尿、排便共に、初めて行う場合は難しいと感じるかもしれません。無理に行うと、犬の体を傷つける可能性もあるため、必ず動物病院で指導を受けてから行いましょう。
おむつやペットシーツの利用も有効
飼い主が外出するときや、介護が難しいときは、おむつを活用するのも良いでしょう。初めておむつを使用するときは、犬が違和感を抱き嫌がる可能性があります。短時間から慣らしていきましょう。
おむつかぶれを防ぐため、予めお尻まわりの毛を短くカットしたり、通気性のいいおむつを選んだり、適切なサイズのものを使用するなどにも注意が必要です。寝たきりの子の場合、お尻や陰部あたりにペットシーツを敷いておくのも良いでしょう。排泄のあとは、赤ちゃん用のお尻ふきや濡らしたガーゼなどで拭き取り、清潔を保つことも重要です。
老犬への食事の介護
食事の介護も老犬を1日でも長生きさせるためにはとても重要です。愛犬に健康的で食べやすい食事を与えるためにも、ぜひ参考にしてください。
食べやすいごはんを用意する
老犬は、筋力や歯が抜けるなどで噛む力が衰えています。同時に、消化器官の働きも低下しているため、食べやすく、消化のしやすいフードが必要です。例えば、食べ慣れているフードをぬるま湯でふやかしたり、ウェットフードや犬用のスープなどを少し混ぜてあげたりすると食べやすくなります。また、フードを少し温めると香りが強くなり、犬の食欲をそそります。
寝たきりの子など、自分で食べられない場合は、流動食などを飼い主様が口の中に入れてあげましょう。流動食をシリンジやドレッシング、はちみつなどの容器に入れ準備します。寝ている犬の体の下にクッションなどを置き、頭を少し高めにして、少しずつ口の中に入れましょう。
食器の位置を高くする
自分でご飯を食べられる子でも、食器の位置が低いと首や肩回りが疲れ、食べる体勢が足腰に負担を与える場合があります。食器の位置を少し高めにし、足元が滑らないように滑り止めのマットなどを敷くと良いでしょう。
老犬がなりやすい床ずれの予防法
床ずれは、体の同じ場所が圧迫され続け、血行が悪くなって皮膚や筋肉が壊死してしまう状態です。重症化すると命に関わる場合もあるため、寝たきりの犬や、寝ている時間が多い老犬は特に予防が大切です。
こまめに寝返りさせる
床ずれの予防のためには、2~3時間おきに寝返りをさせて、圧迫箇所が集中しないようにしましょう。寝返りを打たせる場合、仰向けにしてお腹が上になると肺や心臓などに負担がかかることがあります。下の手順で、一度うつぶせにして、背中が上になるように行います。
- 愛犬の背中側に回り、片手を肩下に入れ、もう片方の手で腰を支えます
- 肩と腰を支えながら体をうつぶせの状態に抱き起こします
- 愛犬のお尻を飼い主の膝へ一旦乗せます
- 愛犬の体が反対向きになるようずらし、床にお尻を置きましょう
- そのまま反対向きに寝かせます
大型犬や中型犬などは、一度に寝返りを打たせるのが難しいため、まずは上半身のみを反対に向け、次に下半身も同じように反対に向けると良いでしょう。
マットやクッションで体圧を分散させる
体圧分散マットやクッションを用いるのも効果的です。ドーナツ型クッションは、穴の部分に床ずれの患部や床ずれのできやすい骨の部分をあてることができます。ペットショップでは犬の床ずれ防止グッズが販売されていますが、小型犬の場合、人用のハニカム素材のクッションを使うこともできます。
ただし、マットによって風通しが悪くなるため、通気性のいいものを選び、マットの下にすのこを敷くなどの工夫も必要です。
介護が必要になる老犬の病気
老犬は体力や筋力が徐々に衰えていき、元気がなくなりやすいです。しかし、中には病気により元気がない可能性もあるため、病気の場合はすぐに治療する必要があります。
老犬がかかりやすい病気は主に4種類です。病気のサインを見逃さないように、常に愛犬の様子を観察しておきましょう。
糖尿病
老犬も人間と同じように、糖尿病になることがあります。糖尿病とは、インスリンが不足することで慢性的に血糖値が高くなる病気です。病気が進行すると体内に有害物質が蓄積し、食欲の低下や嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。
初期症状としては以下の3つが挙げられます。
- 水を飲む量や食べる量の増加
- 尿量の増加
- 体重の増加
糖尿病の予防として、食事の栄養バランスや運動が重要です。ライフステージに合わせたバランスの良い食事を与え、無理のない範囲で運動を続けられるようにサポートしましょう。
腎臓の病気
犬は腎臓の病気になりやすく、中でも「慢性腎不全」には注意が必要です。慢性腎不全とは徐々に腎臓の機能が失われ、老廃物や有害物質を体外に排出できなくなる病気を指します。初期症状がほとんどないため、気づいた時には手遅れとなる場合がほとんどです。
病気のサインとしては「水を飲む量が増える」「尿の量が増える」が挙げられます。腎臓の病気は1度進行すると元には戻りません。早期発見と進行を抑える治療が重要です。
悪性腫瘍(がん)
がんは人間だけでなく、犬にも多く見られる病気です。がんとは細胞の異常増殖により起こる病気で、犬の死因で最も多い病気と言われています。
がんは皮膚やリンパ、内臓などあらゆる場所に起こります。体表や皮膚にできた場合は気付きやすいですが、ほとんどのがんは外からわかりづらいです。発見した時にはがんが進行していることも珍しくありません。
愛犬は定期的に健康診断に連れていきましょう。最低でも年に1度、老犬は半年に1度の健康診断が推奨されています。
心臓の病気
老犬は心臓に異常が生じやすいです。中でも「僧帽弁閉鎖不全症」という、心臓の弁が機能しなくなり、血流が逆流する病気が頻発しています。
運動時や興奮時に咳が出て、症状が悪化すると安静時にも咳が出るようになります。放っておくと心不全による呼吸困難に陥り、命にかかわるため危険です。咳をし始めたら早めに病院に行きましょう。
認知症
認知症とは、認知機能が低下して日常生活に支障をきたしている病態を指します。一般的な症状は以下の通りです。
- 室内を徘徊したり、明らかに通れない場所を通ろうとしたりする
- 名前を呼んでも、飼い主様の声かけに反応しなくなる
- 昼夜逆転し、夜泣きをする
- 食事後もさらにごはんを欲しがる
- トイレの失敗が増える
認知症は1度発症すると元に戻らず、進行を抑える治療しかできません。認知症の症状は老化の特徴と似ているため、見逃しやすいです。愛犬からの些細なサインも見逃さないように、少しでも気になることがあれば早めに獣医師に相談しましょう。
老犬の歩行や運動の介護
老犬になっても、散歩はとても大切です。歩行や運動をすることで筋力の衰えを抑制し、ストレス解消や認知症予防にもなります。
しかし、激しい運動や長距離の散歩は愛犬の負担になるため注意が必要です。以下の注意点を把握して愛犬のサポートをしましょう。
ハーネスで補助しながら愛犬のペースで散歩する
足腰が弱くなってきたら、歩行補助ハーネスで犬の体を支え、犬のペースに合わせた散歩を行いましょう。運動の習慣を無くすと、筋肉があっという間に落ちて寝たきりになるリスクがあります。
足腰が弱くなってきても、方法や時間を工夫しながらできる限り散歩を続けましょう。
散歩前にウォーミングアップをする
散歩の前は、家の中を歩かせたり、ストレッチをしたりなどのウォーミングアップも大切です。特に冬の寒い日は、温かい室内から急に寒い屋外に出ると大きな負担になります。
まずは部屋の窓を開けて少し部屋の室温を下げた状態で準備運動をしてから出かけると良いでしょう。関節のストレッチやマッサージをすることで、筋肉がほぐれて散歩しやすくなります。ウォーミングアップ中に不調を感じたら、無理に外に出さないようにしましょう。
散歩のコースを変える
散歩のコースを変えると、愛犬にとって程よい刺激になるため認知症予防に効果的です。近くの公園や景色の良い場所など、毎日違うルートを散歩して脳へ刺激を与えましょう。
コースを変えると散歩の距離が伸びてしまう場合は、犬用のカートなどを途中まで利用して負担を減らすと効果的です。愛犬の様子を見ながら、楽しく散歩してください。
寝たきりになっても定期的に外へ連れ出そう
寝たきりや自力で歩けない子でも、犬用のカートなどを利用して散歩を続けると、気分転換になったり、認知症の予防になったりします。歩行補助ハーネスを使って支えることでリハビリとなり、多少歩けるようになるなどの良い効果も得られる可能性があります。
介護に疲れたときは無理せず老犬ホームや介護サービスを頼ろう
老犬介護は、飼い主様の精神的・身体的・経済的負担が大きいものです。愛する我が子だとしても、時には「もう疲れた。」「介護が辛い。」と感じることもあるでしょう。
そんなときは1人で抱え込まず、老犬ホームや介護サービスなどを頼りましょう。飼い主様や家族の心身の健康を保つためにも、プロの手を借りるのは大切なことです。
残された日々を大切に、介護生活を送りましょう
今回は老犬の介護について解説いたしました。愛犬はいずれ年を取り、体力や筋力が低下して思うように動けなくなります。そのため老犬の「食事」「排泄」「運動」などをサポートすることが重要です。
また老犬にはかかりやすい病気があります。どの病気も早期発見と早期治療が必要であるため、飼い主様の毎日の観察が重要です。初期症状がどれもわかりづらいですが、わずかなサインも見逃さないようにしましょう。定期的な健康診断も効果的です。
大好きなペットにはいつまでも元気でいてほしいですが、いつか必ずお別れの時がやってくるため、残された日々を大切に過ごしましょう。しかし、残された日々を大切に過ごしていても、いざその時が来ると、急な悲しみで冷静な判断ができなくなることもあります。
ペットが元気なうちから、ペットの看取りや葬儀などをどうするのかを考えておくことで、後悔のない最期の時を過ごすことができるでしょう。また、悔いなくきちんとペットとお別れをすることは、その後のペットロスの緩和にも繋がります。
COCOペットでは、生前の終活についてのご相談も承っております。些細なご質問でも、お気軽にご相談ください。