高齢犬と暮らしていると、犬の排泄の失敗に気づくことがありますよね。粗相が増えた老犬のために、おむつを検討している飼い主様もいるでしょう。
今回の記事では、老犬におむつを履かせるタイミングについてお伝えします。また、おむつの選び方もご紹介します。
おむつは便利ですが、誤った使用法により、犬が不快感を覚えたり皮膚病の原因になったりすることもあるため、おむつを履かせる時の注意点についても解説します。
目次
老犬におむつをはかせるタイミングは?
どんな犬でも、おむつが必要になる可能性があります。はじめに、老犬におむつをはかせることを検討するのは、どのような時なのかをお伝えします。
排泄を失敗する頻度が多くなったとき
老犬は体中の筋肉が衰えます。衰える筋肉は、足腰の筋肉だけでなく、排泄に関わる筋肉の筋力も含まれます。
肛門周囲や膀胱などの筋力が低下することで、意図せず排泄してしまうことが増えるのです。避妊手術を受けている高齢の雌犬では、ホルモン反応性尿失禁と呼ばれるホルモンによる尿漏れのリスクが高まるでしょう。
上記のように、犬が自分で排泄のコントロールができなくなる場合、家中が犬の排泄物で汚されてしまうため、おむつの着用を検討しはじめるタイミングだといえます。
また、犬の高齢化社会に伴い、認知症の高齢犬も増加していることが現実です。認知症になると、トイレの場所が分からなくなって、トイレ以外で排泄することが増えます。
飼い主様が定期的にトイレに連れて行くなどで対応できることもありますが、おむつが必要になる可能性もあるでしょう。
足腰の衰えや病気になったとき
足腰が弱ったり、痛みを感じたりしている場合は、トイレの場所が認知できていても、トイレまで間に合わずに粗相してしまうことがあります。
老化や病気で寝たきりになった場合も、自分でトイレまで行けないため、おむつが必要です。老犬は病気の種類や度合いにより、おむつの検討が必要になるでしょう。
たとえば、膀胱炎、膀胱や尿路の結石、腎不全など、尿路系の病気の場合は尿漏れがおこることがあります。
糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、副腎皮質機能低下症(アジソン病)など内分泌系の病気の場合も、尿漏れがおきるリスクが高いといえるでしょう。
高齢犬の場合、手術を受ける機会も増えるため、手術後など動けない場合もおむつの使用の検討が必要になるでしょう。
老犬におむつを履かせるメリット
老犬におむつを履かせるメリットは主に3つあります。愛犬におむつを履かせるべきかお悩みの飼い主様は、ぜひ以下のメリットを参考にしてみてください。
自宅や外出先でも汚れない
老犬におむつを履かせると、生活環境や外出先を汚すことはありません。シニア犬で足腰が弱くなり、さらに持病がある場合、自力でトイレに行くことが難しくなるでしょう。
しかし、おむつをしていれば、部屋や外出先も汚すことなく、衛生的にも清潔に保てます。とくに、食事の際に粗相してしまうと、食事を中断して後片付けをしないといけないため、飼い主様にとっても負担となります。
一方、おむつを履かせていれば、食後にすぐ取り替えてあげられるため、老犬にとっても飼い主様にとってもメリットになるでしょう。
お出かけしやすくなる
おむつを付けていると、ドッグカフェや犬も同行できるレストランなどもお出かけしやすくなります。
多くの場合、ドッグカフェではおむつやマナーベルトの着用が求められるため、普段おむつを履いていない犬でもおむつを着用しなければいけません。
いきなり慣れていないおむつを履かせると、犬は不快に感じてストレスになる可能性があるため注意が必要です。そのため、あらゆる場所に出かけるためにも、早いうちからおむつに慣れさせておくといいでしょう。
トイレを失敗しない
おむつをつけていれば、トイレに失敗することはありません。トイレに失敗してしまうと、飼い主様に怒られるかもしれないという不安、また自信がなくなり落ち込んでしまうことがあります。
しかし、おむつをつけていれば粗相してしまっても、部屋を汚すこともなく失敗して怒られるという心配もないため、犬にとってもストレス軽減となるでしょう。
老犬におむつを履かせるデメリット
老犬におむつを履かせることはメリットもありますが、デメリットも存在します。おむつを利用する際は、デメリットについても事前に理解することが重要です。
以下では、老犬におむつを履かせるデメリットについて解説します。
おむつを誤飲する可能性がある
おむつに慣れていない間は、不快を感じて履いているおむつを噛んでしまう可能性があります。おむつを噛んでちぎれてしまった場合、おむつの中身を飲み込んでしまい、命に危険が及ぶかもしれません。
おむつの中身は水分を吸収する素材でできており、大量に飲み込んでしまうと素材が膨らんで胃腸に詰まる危険性があります。
万が一、おむつを噛んで誤飲してしまった場合は、必要に応じて手術が必要になることもあるため、すぐに動物病院へ連れていきましょう。
皮膚炎になりやすい
おむつを長時間付けていると、犬の皮膚に排泄物の汚れが接触する時間が増え、風通しが悪くなるため、皮膚炎になりやすいです、
そのため、皮膚炎を防ぐためにも、汚れがついていればすぐに取り替えてあげてください。汚れたおむつを履いている時間を短くするためにも、おむつを着用したら1日に数回交換する時間やタイミングを決めて定期的に交換しましょう。
トイレトレーニングができない
おむつを履くことが習慣化している場合、トイレトレーニングができません。老犬からでもトイレトレーニングはできますが、すでにトイレトレーニングをしており、粗相が増えたという場合はそこまでデメリットに感じる方はいないかもしれません。
しかし、老犬からトイレトレーニングを検討している方は、おむつの使用頻度を考えておきましょう。
費用がかかる
犬用のおむつは、人間用のおむつに比べると費用が高いため、負担に感じる飼い主様もいらっしゃるでしょう。
外出先で使用する程度であれば、経済的な負担を感じることも少ないですが、毎日使用する場合はおむつ代が高額になりやすいです。
老犬のおむつの選び方
市販の犬用のおむつには色々な種類がありますね。犬におむつをはかせることを検討する際、どのように選べば良いのでしょうか。以下では、おむつの選び方をお伝えします。
素材で選ぶ
市販の犬用のおむつには、紙製と布製の2種類があります。吸収力を重視したい場合、紙製のおむつがおすすめです。
紙製のおむつのなかには、ジェル化して固まる商品もあり、複数回分の尿を吸収できます。
濡れたら色が変わるような機能のあるものもありますし、使用後にそのまま捨てられるため、手間がかからない点も魅力です。紙製のおむつは便利な一方で、比較的高価な点がデメリットだといえます。
一方、布製のおむつは洗えば何度も使用できるため、経済的なメリットが高いでしょう。
洋服のようにかわいいデザインのものもあり、おむつを使用することへの飼い主様の抵抗感を下げる効果もあります。
布製のおむつは、紙製のおむつと比較すると吸収力が低く、長時間の使用には不向きです。ただし、最近ではパッドを貼って使うことで吸収力を高め、洗う手間が省けるという商品も出ています。
使用シーンや目的に合った形を選ぶ
犬用のおむつの形状には、パンツタイプのホールド型、巻くだけのバンド型などの種類があります。
バンド型は、雌犬には体のつくりとして使えないため、雌犬の場合はホールド型を選択することになるでしょう。また、寝たきりの犬の場合、下半身全体をすっぽり包んで排泄物をカバーするホールド型のおむつがおすすめです。
ホールド型のおむつは便もしっかりキャッチできるため、排便、排尿ともに粗相が多くなった時もホールド型が良いでしょう。バンド型のおむつは、雄犬専用です。
お腹から腰部分に巻くだけで簡単に装着できるうえに、コンパクトなので携帯するのにも便利です。
雄の老犬のちょっとした尿漏れなどに使えるだけでなく、お散歩など出かける時にも良いでしょう。
愛犬のサイズに合ったおむつを選ぶ
おむつ選びで最も重要なのが、愛犬の体型に合うサイズのおむつを選ぶことです。サイズは犬種、体重、ウエストを基準に選びます。
使用するおむつに表記してあるサイズを目安に選びましょう。サイズが小さすぎる場合、内股や尻尾周りが擦れて愛犬が不快に感じてしまいます。食い込みがきつくて犬が嫌がることもあるため、ワンサイズ上げましょう。
ウエストまわりに飼い主様が指を入れてみて、2本くらい通るすきまがあるのが理想的です。サイズ選びは難しく、犬用オムツは高価なので、はじめはお試しパックや少量の商品を購入するのがおすすめです。
性別でおむつを選ぶ
性別で選ぶ場合、雄雌兼用のパンツタイプのものを使うか、雄の場合は雄専用のバンド型のものを選ぶ方法があります。
少量の尿漏れには、雌の生理出血のためのサニタリーパンツを利用しても問題ありません。雄も雌も複数回の尿をしっかり吸収させたり、便までカバーしたりしたい場合は、パンツ型のホールド型を選びましょう。
雄犬の少量の尿漏れであれば、陰茎の周囲だけをカバーするバンドタイプが手軽に使えます。バンド型であれば蒸れなどの心配が少なく衛生的に使えるでしょう。
雌用のサニタリーパンツは、吸収力がさほど高くありません。少量の尿漏れであれば使用できますが、便には対応していないため気をつけましょう。
老犬におむつを履かせる方法
犬用のおむつを装着すること自体は簡単ですが、お尻を触られることが苦手な犬はおむつを履かせるのが難しいかもしれません。
老犬に負担をかけないためにも、素早くおむつを履かせることが重要です。以下では、老犬におむつを履かせる方法を解説します。
履かせるタイプの装着方法
履かせるタイプの装着方法は、人間用のおむつとほとんど手順は代わりません。紙おむつの場合は、床でおむつを広げて、両側のギャザーを立てましょう。
尻尾の穴が小さければ、指で広げて尻尾に合う大きさに調節してください。おむつの端を犬の背中に持ち、穴に尻尾を通します。おむつをお腹に回したら、お腹から背中にかけておむつを締めてテープをしましょう。
装着が完了すれば、協力してくれた愛犬を褒めてあげてください。
マナーベルトの装着方法
マネーベルトは、まずおむつを広げてお腹の下に置き、性器を覆うようにおむつを巻き付けてください。背中まで巻き付けてテープをし、内側に入り込んだギャザーを外側に取り出しましょう。
おむつがずれないようにするためにも、できるだけきつめに締めておくようにしてください。
老犬におむつをはかせるときの注意点
おむつは便利な一方で、注意しないと犬の衛生状態を悪化させてしまうことがあります。以下では、おむつをはかせる時に注意すべき点についてお伝えします。
汚れたおむつはこまめに交換する
おむつはこまめに交換することが大切です。おむつで覆われた部分は、通気性が悪く蒸れやすくなっています。
蒸れた状態で皮膚と排泄物が触れると細菌が増殖しやすいため、おむつかぶれなど皮膚病の原因となります。理想は、排泄するたびにおむつを交換することです。
濡れると色が変わって知らせてくれる機能のついているものを選べば交換の目安がすぐにわかって便利です。
また、朝昼用と、毎日決まった時間帯におむつ交換のタイミングを作っておくと、忘れにくいでしょう。おむつはできるだけ履かせっぱなしにしないことも大切です。
飼い主様が見ていられる時間は、なるべくおむつを履かせずにいましょう。おむつ交換のたびに、おむつを履かせない時間を取り、お尻周りの通気性をよくしましょう。
皮膚を清潔にする
おむつのこまめな交換だけでは、どうしても排泄物で汚れた皮膚や毛のケアができません。おむつ交換のたびに、濡れタオルなどを使って、皮膚や毛を清潔な状態に保ちましょう。
冷たい水分は老犬の体に負担をかけるため、拭く時はかならずタオルなどをお湯で濡らして使用することが大切です。
お尻周りの毛をカットしておくと、清潔を保ちやすです。老犬の場合、体に負担がかかるシャンプーはできないことが多いでしょう。
シャンプーが困難な場合でも、お尻周りのみをぬるま湯で洗うと効果的です。洗ったあとは、お尻周りが湿っている間におむつを着用させると、皮膚病の原因になります。ドライヤーを遠くからあてて、しっかり乾かしたあとにおむつを履かせましょう。
早めにおむつに慣らしておく
老犬期にいざおむつを履かせる場合、慣れていなければおむつを嫌がることがあります。慣れていないおむつを履かせる際は、おむつを付けた際におやつをあげ、おむつは危険なものではないと覚えさせましょう。
最初は短時間の使用からはじめ、徐々に使用時間を伸ばしておむつに慣らしていくと、愛犬への負担も軽減できます。
おむつに慣れるまでの期間は犬により異なるため、愛犬が高齢になる前から早めにおむつに慣らしておくといいでしょう。
脱げやすい場合がある
おむつに違和感がある場合、おむつを脱いでしまったり、しっかりおむつを履かせなければ脱げやすくなったりする可能性があります。
おむつが脱げやすい場合、おむつが脱げないサスペンダーのタイプやサロペットのタイプを使用するようにしてください。
排泄物が漏れる可能性がある
おむつから排泄物が漏れる可能性があります。ウエストや足回りに隙間があったり、おむつがフィットしていなかったりする場合は排泄物が漏れやすいです。
排泄物が漏れ出さないようにするためには、サイズを変えてみる、またはおむつの中に尿とりパッドを入れて隙間を防ぐなどの対策を行いましょう。
老犬におむつを使用して快適に過ごせるようにしてあげよう
犬の平均寿命は年々伸びています。犬の高齢化が進み、介護が必要な老犬が増えてきました。老犬の介護は、飼い主様の心身のストレスも大きいものです。
とくに排泄の粗相は、掃除の負担や臭いの問題などで飼い主様を悩ませるでしょう。犬用のおむつを適切に使用することで、犬や飼い主様の不快感を緩和させることが可能です。
ただし、適切な使用方法でないと、皮膚病などのトラブルの原因にもなります。今回の記事も参考に、是非上手におむつを利用しましょう。