老犬と暮らす飼い主様の中には、犬が夜泣きをするようになり困っている方も多いでしょう。原因が分からず悩んでいる方もいるかもしれません。老犬の夜泣きにはさまざまな原因があり、原因によって対処法も異なります。 まずは夜泣きの原因を突き止めることが大切です。今回の記事では、老犬の夜泣きに着目し、考えられる原因や原因ごとの対処法、対処する際に気を付けるべき注意点についてお伝えします。夜泣きで悩む飼い主様は是非参考にしてみてください。

老犬の夜泣きとは

老犬になるにつれて、夜泣きが増えてきた、気になるようになってきたとお悩みの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

犬は7歳を過ぎるとシニア期に突入し、老化に伴い身体に痛みや症状が現れ始めます。夜泣きも体の不調や病気、空腹などから飼い主様に助けを求めるために吠えている場合があります。

まずは、愛犬の夜泣きの原因を突き止めて、適切に対処しましょう。

老犬が夜泣きするときに考えられる5つの原因

老犬が夜泣きするときに考えられる4つの原因

はじめに、老犬が夜泣きする主な可能性4つをご紹介します。

認知症

老犬の場合、犬の認知症である「認知機能不全症候群」の症状が出ることがあります。犬も高齢化社会となり、アメリカでは15~16歳以上の犬の70%になんらかの認知症の症状がみられると言われているほど、認知症の老犬が多くみられるようになりました。

認知症の老犬は、自分でなぜ吠えているのかわからずに吠えたり、すでに食事をしたのにも関わらずそのことを忘れて要求のために1日中吠え続けることがあります。 吠える以外の症状として、徘徊、自分の居場所や飼い主様を認識できない、昼夜逆転になり夜泣きするという行動が見られることも多いです。

病気や姿勢による痛み

体のどこかに痛みや違和感があると苦痛を訴えるために吠えることがあります。特に関節痛などがあると、夜間に同じ姿勢を取ることがつらかったり、寝る姿勢に苦痛を感じて寝ることができず、夜泣きすることがあります。寝たきりの老犬の場合は、床ずれによる痛みで夜泣きする可能性もあります。

日常生活への不安や恐怖心

老化によって、飼い主様と離れることに不安を感じる「分離不安」の症状がでることもあります。分離不安の老犬は、飼い主様の姿が見えないだけで吠えたり、常に甘えたい気持ちになるため、夜間に離れて寝ると夜泣きすることがあります。 分離不安の背景のひとつには、日常生活への不安や恐怖心が強くなって、飼い主様への依存心が強まることが挙げられます。老化で視力や聴力などの五感が衰えたり、筋力の低下で思うように動けない老犬に特にこの傾向が強くみられます。

要求によるもの

なんらかの不快感などを飼い主様に解決してもらうため、要求のために夜泣きをすることもあります。体の衰えや何らかの病気で、自分で自由に動くことができない老犬に多い傾向があります。 犬の不快感は、空腹や喉の渇き、暑い・寒い、トイレに行きたい、粗相によるお尻周りの不快感など様々です。

生活リズムが崩れている

老犬になると体力と身体機能の低下に伴い、日中寝ることが増えることから生活リズムが崩れてしまうことがあります。

昼間に愛犬がよく寝ている場合は、夜になると眠れなくなることが原因で夜泣きをしてしまうかもしれません。 生活リズムが崩れていると日々の夜泣きにつながるため、日中に愛犬が眠っているかどうかを確認しておきましょう。

【原因別】老犬が夜泣きするときの対処法

原因別・老犬が夜泣きするときの対処法

上では夜泣きの主な原因をお伝えしました。ここではそれぞれのケースについて、飼い主様にできる対処法をお伝えします。

かかりつけの獣医師に相談する

夜泣きに困って、原因が思い当たらない場合や、対処が難しい場合などは、かかりつけの獣医師に相談しましょう。認知症の診断がついた場合、現代の獣医療では病気を完治させることはできませんが、症状の緩和が期待できることもあります。 その他の原因による夜泣きでも、痛み止めなどの適切な使用や、食事、生活環境の見直しなどで、夜泣きを緩和させられる可能性があります。

認知症が原因のケース

現代の獣医療では認知症を完治させることはできませんが、症状の緩和や進行を緩やかにすることは可能です。

認知症の治療薬自体は、日本で認可されているものはありません。代替として、不安感を抑える薬や、鎮静効果、催眠効果のある薬剤を用いることがあります。サプリメントでは、必須脂肪酸であるDHAやEPAは、人の脳の老化に有益であるということがわかっており、犬への使用が勧められる場合もあります。

認知症の犬は昼夜逆転生活になることが多いため、日中は可能な範囲で運動させたり、脳への刺激を与えることで、できるだけ夜間に寝てもらう生活リズムを整えることが大切です。 認知症の犬の場合は、健康な犬のように外出することが難しいですが、犬用のカートに乗って外の空気に触れたり、知育玩具などを用いて室内で遊ぶだけでも効果があります。犬の体調などを鑑みて、獣医師と何ができるかをよく相談すると良いでしょう。

不安や恐怖心が原因のケース

可能な限り、家族の誰かが犬の近くにいてあげると良いでしょう。寝室を一緒にするというのも効果的です。犬が、いつも誰かがそばにいてくれるから吠えなくても大丈夫だと感じることで、夜泣きが緩和される可能性もあります。

要求吠えが原因のケース

犬をよく観察し、要求の内容を突き止めることが大切です。もしも、最近食べ残しが多いにも関わらず空腹を訴えているのなら、犬は満腹で食べ残しているわけではなく、歯などの問題で硬いものが食べられずやむなく残しているのかもしれません。フードをふやかすなどの工夫をしてみましょう。 その他、水の位置の調整や、ペットシーツや犬用のおむつを利用するなどで不快感を和らげることも必要かもしれません。犬の不快感をできるだけ取り除けるように生活環境の見直しを行いましょう。

病気や姿勢による体の痛みが原因のケース

体の痛みが夜泣きの原因の場合、飼い主様だけでの対処は難しいため、すぐに獣医師に相談しましょう。痛みの緩和は、適切な処置と投薬によって可能です。サプリメントや食事療法もなどのアドバイスももらえるでしょう。 寝たきりの犬の場合、床ずれを悪化させてしまうと治療が難しく犬の苦痛が続きます。こまめな観察で軽度の床ずれの段階で治療を開始することが大切です。

老犬の夜泣きに対処する際の注意点

老犬の夜泣きに対処する際の注意点

ここでは、老犬の夜泣きや、夜泣きに対処する際に気を付けるべき注意点についてお伝えします。

夜泣きを叱らないこと

夜泣きする犬へはストレスが大敵です。犬の夜泣きでは、飼い主様にも負担がかかるため、つい叱ってしまうこともあるでしょう。

しかし、老犬の場合、ストレスによって他の病気にかかってしまう可能性がありますし、夜泣きが悪化することも考えられます。飼い主様との信頼関係も崩れることもあるため、叱るのは絶対に避けましょう。

防音対策

夜泣きはご近所への迷惑が気になりますね。対処をはじめても、すぐになくせるものではないため、夜泣きが外にできるだけ聞こえないような工夫が必要です。防音パネルを取り付けたり、吸音材を使用したり、防音カーテンを設置するなど。可能な範囲で住居を防音仕様に整えましょう。

また、ご近所に状況を説明して、お詫びや挨拶をこまめに行うことで、ご近所トラブルを防ぐことができ、飼い主様の負担も減らすことができます。

薬剤を使用する際は獣医師に相談すること

夜泣き対策で薬剤を使用し、不安感を取り除いたり睡眠を促すことは可能です。ただし、薬やサプリメントの使用を検討する際は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。インターネットなどでは、自分の犬に処方された薬を他の飼い主様に譲るなどの行為がみられることがありますが、犬の健康にとって大変危険な行為です。

飼い主様自身の介護疲れや体調不良に注意すること

犬の夜泣きは、飼い主様の心身にも強いストレスを与えます。苦しい時には家族や友人を頼りましょう。周囲に頼るのが心苦しい時は、犬用のシッターさんを雇ったり、犬用のデイケアや老犬ホームなどを活用するのも良いでしょう。

飼い主様のストレスは、犬にも伝わり犬のストレスになります。犬のためにも、飼い主様自身の心身の負担を減らし、ゆったりと長期的に介護できることが大切です。

老犬の夜泣きの予防方法

老犬の夜泣きの予防方法

老犬の夜泣きを少しでも軽減してあげたい、夜に吠えることを少しでも予防させてあげたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。

夜泣きは愛犬にとってもつらい状態である可能性があるため、老犬を予防したい方はぜひ参考にしてください。

生活リズムを整える

老犬の夜泣きを予防するには、愛犬の生活リズムを整えてあげましょう。

愛犬が日中寝ていると、夜は眠れなくなり、昼夜逆転の生活となってしまいます。そのため、愛犬が日中眠っていることが多い場合は、なるべく起こすようにしましょう。

寝させない方法として、日中は散歩や運動などで日光を浴びることが大切です。日光を浴びると、セロトニンが生成されて体内時計が整います。また、家にいない日がある場合は、テレビやラジオをつけてあげると良いでしょう。

状態に合わせてサプリメントを与える

愛犬の夜泣きを予防する方法として、サプリメントを与えることも方法の一つです。

例えば、DHAやEPAは認知症予防に効果的です。しかし、サプリメントはあくまでも夜にゆっくり寝てもらうための手段であり、病気や認知症を治す目的ではありません。

犬にとって夜に眠れないことはストレスになり、落ち着かないことから夜泣きしてしまう場合があります。そのため、犬に少しでも落ち着いて夜を過ごしてもらうためにも、サプリメントは効果的です。 サプリメントに抵抗がある方やサプリメントを与えても問題ないか分からない方は、事前に獣医師に相談した上で愛犬に与えるようにしましょう。

老犬の夜泣きは一人で抱え込まないで

今回は、老犬の夜泣きの原因や、原因別の対処法などをお伝えしました。また、夜泣きに対処する際の注意点なども解説しました。一番大切なのは、飼い主様自身が体調を整え、できるだけストレスのない精神状態を保つことです。

犬にとって、飼い主様が笑顔で楽しそうに暮らしていることが一番嬉しいことなのです。獣医師やペットシッター、家族や友人など、必要な時は周りの人を頼りましょう。一人で抱え込まずに、穏やかな気持ちで老犬との最後の日々を過ごしましょう。