老化や病気などで寝たきりになった犬と暮らす飼い主様にとっては、犬が辛い思いをしていないか、少しでも快適に過ごせているかが一番気になりますね。
床ずれのケアに悩む飼い主様や、床ずれの予防法を知りたい飼い主様も多いでしょう。床ずれは、重症化する前に動物病院を受診することが一番大切です。
今回は、自宅でできる床ずれのケアや、床ずれの予防方法、犬の体を清潔に保つ方法などをご紹介します。是非参考にしてみてください。
目次
犬の床ずれとは
床ずれとは、寝たきりの状態が続くことで、体重がかかる部分の皮膚が寝床に圧迫されて、血行が悪くなり皮膚の表面の組織が壊死することを指します。
初期段階では、皮膚が赤くなったり、薄くなったりすることで痛みやかゆみの症状が発生します。そこから徐々に水ぶくれができ、潰れてジュクジュクの状態となります。
炎症した状態で放置してしまうと患部にウジがわき、感染症を起こす可能性も考えられるため、早めの処置を行いましょう。
特に骨に出っ張りがある頬や肩、腰、前足首、後ろ足首は寝床と接しているため、床ずれしやすくなります。
犬が床ずれになったらすぐに病院で診てもらおう
犬の床ずれについての一番大切な認識は「皮膚に赤みが出た程度」の初期段階で気づいて動物病院を受診することです。
動物病院での床ずれの治療方法は、重症度によって色々です。軽症の場合、軟膏などの塗り薬や被覆材のみで治せることが多いです。一方、重症化して壊死した部分があると、壊死部を切除する手術が必要なこともあります。
このような場合、治療にも長い時間がかかるうえ、再発する可能性も高いといえます。
床ずれで病院にすぐに行けないときはケアしてあげよう
すぐに動物病院へ連れて行ってあげられない場合、床ずれが悪化しないようにケアをしてあげましょう。
基本的には、患部に圧力や体重を加わり続けることを避けなければいけません。そのため、患部周辺にガーゼを重ねて包帯で巻き、体圧を分散させます。
また、患部を清潔に保つことが大切です。しかし、消毒は傷の治りを遅くさせる場合もあるため、膿がでていない限りは使用しなくても問題ありません。
自宅での犬の床ずれケアについて
床ずれに気づいた場合はすぐに動物病院に行くべきだとお伝えしましたが、動物病院での治療を受けても、床ずれの治療には自宅でのケアが必須です。
ここでは自宅でできる床ずれのケア方法をお伝えします。
患部の清潔を保つ
床ずれの治療は患部を清潔に保つことが大切です。とくにお尻周りは排泄物で汚れやすいため、周囲の毛を刈り、水道水で患部を1日1~2回洗います。
洗ったあとは、清潔なタオルなどで優しくしっかり水分を拭き取り、低温のドライヤーを遠くから当ててしっかり乾かします。 患部の周辺は熱風が当たると強い痛みを感じることがあるため、犬の様子をみながら苦痛のない方法で乾かしましょう。
傷口を乾燥させない
床ずれになった部分は乾燥させないように、保湿された状態を保ちましょう。傷口が乾燥してしまうと痛みが出てしまい、皮膚の組織が剥がれやすくなります。また、組織が剥がれてしまうと元の状態に戻るまでに時間がかかります。
乾燥から防ぐためにも、病院で処方されたクリームや軟膏を傷口に塗り、乾燥させないようにしましょう。
獣医師の指示通りの処置を
患部を清潔にしたら、獣医師から指示された軟膏などを塗ります。患部が乾燥すると治癒が遅くなるため、ラップやパッドなどで覆いましょう。
患部にはワセリンやオロナイン軟膏など自宅にある薬を使用できることがありますが、必ず事前に獣医師に相談し、指示通りの処置を行いましょう。
床ずれを予防する5つの方法
床ずれは予防することが一番重要です。床ずれ予防に効果的な方法を詳しくご紹介します。
床ずれ防止マットを使う
ペット用品を扱うショップでは、市販の床ずれ防止グッズとして、高反発マットや体圧分散マットなどが販売されています。
できるだけ体の沈み込みが少なく、体圧を分散してくれるようなものを選びましょう。 小柄な犬の場合、人用のハニカム素材のクッションなども比較的低価格で入手できて便利です。
犬の場合、腰の骨や、肩、肘、かかとなど、出っ張っている骨の部分に床ずれができやすいです。これらの骨の下に、床ずれ防止マットを敷くと効果が得られるでしょう。 注意点としては、マットによって風通しが悪くなり、犬が暑さを感じることが多いことです。夏場は特に、部屋の換気に気をつけたり、マットの下にすのこを敷いたりの工夫で暑さ対策も行いましょう。
2~3時間ごとに寝返りを打たせる
2~3時間おきに寝返りを打たせて、体の同じ部分が圧迫されないようにしましょう。寝返りを打たせる時、犬を仰向けの体勢にすると、肺や心臓などに負担がかかるため、絶対に避けましょう。
寝返りを打たせる時は、小型犬の場合、犬がうつ伏せの姿勢になる方向で行います。中型犬や大型犬などは一度に行わず、まず上半身、次に下半身という段階を踏んで行いましょう。 犬の肩のあたりに手を入れて、上半身をうつ伏せの状態に起こします。次に犬のお尻のあたりを持って、同じようにうつ伏せの状態にします。その後、上半身を反対に向け、続いて下半身も反対に向けます。
毎日皮膚の状態をチェックする
上でもお伝えしましたが、犬の場合毛が密集しているため、皮膚のわずかな異変には気づきにくいものです。飼い主様が気づいた時には、床ずれがかなり悪化しているケースも多いと言えます。毎日きちんと毛をかきわけて、その下の皮膚の状態をチェックしましょう。
皮膚に少しでも赤みがあったり、皮膚が薄くなってたりしている場合は要注意です。皮膚のチェックを忘れないためにも、寝返りやマッサージのタイミングに一緒に行うように習慣づけることが大切です。
マッサージをして血行を促す
床ずれの原因は、血行が悪くなることです。全身のマッサージを行い、血行を促すことで、床ずれの予防効果が期待できます。
マッサージは、肩や太ももなど、大きな筋肉のある部分を中心に行うと良いでしょう。手足を曲げ伸ばしさせるだけでも動きが出て効果があります。
マッサージは犬の状態によっては痛みを感じることもあります。特に、患部の周辺は避けましょう。犬の様子をよく観察しながら行うことが重要です。
サポーターなどで部分的に保護する
骨が出ている頬や肩、足首などの箇所をサポーターで保護してあげましょう。部分的に保護してあげることで、床ずれしやすい部位の予防が行なえます。
床ずれしやすい部位を中心に、サポーターやタオルなどで巻いてあげましょう。
寝たきりになっている犬の体の清潔を保つために必要なこと
床ずれの予防にはもちろん、犬の体を常に清潔に保つことは犬が少しでも快適に暮らすために非常に重要です。ここでは、寝たきりの犬の体を清潔に保つために必要なことをお伝えします。
お尻周りの毛をカットする
お尻周りの毛は排泄物で汚れやすいため、肛門周りの毛を短くしておくとケアがしやすいです。毛の短い犬の場合は、バリカンで肛門が見えるくらいまで刈っておきます。毛の長い犬の場合、まずはハサミで短くカットし、その後バリカンを使ってさらに短く整えると良いでしょう。
尻尾の毛がふさふさと長い犬の場合、尻尾自体に包帯をごくゆるめにまきつけ、毛に排泄物が直接付着しないように保護するのがおすすめです。包帯が汚れたらすぐに変えましょう。
包帯を巻きっぱなしにすると皮膚の異変に気づきにくいため、汚れていなくても1日1度は必ず包帯を巻きなおし、皮膚の状態を確認しましょう。
全身をウェットティッシュや蒸しタオルで優しく拭く
寝たきりの犬の体は、自分自身の皮脂や、周囲の埃などによって想像以上に汚れています。1日に1度、体全体を温めたウェットティッシュや蒸しタオルなどを利用して拭きましょう。冷たい水が触れると体に負担がかかるため、体を拭くものは必ず温かいものを利用します。
拭いたあとは、水分が付着したままだと体が冷えてしまうため、乾いたタオルでしっかりと水気をとります。毛の長い犬の場合、遠くからドライヤーを当ててしっかりと乾かすように意識すると良いでしょう。
固まった排泄物や広範囲の汚れがある場合は部分浴をする
排泄物が固まって付着していたり、広範囲の汚れがある場合は、部分浴を行いましょう。部分浴は、浴室ですのこなどを敷いた上に犬を寝かせて行うとやりやすいです。小型犬の場合は、洗面台などを利用して行うこともできます。
注意点は、犬を仰向けの姿勢にしないことです。仰向けの姿勢は犬に苦痛を与える可能性が高いので、横向きを基本にして、必要な場合はうつ伏せにしましょう。犬の様子を伺いながら行い、苦しい様子を見せた場合は中断しましょう。
水なしシャンプーを活用する
水のいらないタイプのシャンプー剤も活用できます。水なしシャンプー剤には、泡タイプやスプレータイプ、パウダータイプ、拭くだけのシートタイプなどがあります。用途に応じて使い分けると良いでしょう。
香料などが多量に使用されている場合、犬のストレスになる可能性があります。無香料タイプの方が安心して使える可能性が高いです。初めて使う場合は、犬の皮膚に異常が出ないかどうか使用後の観察をこまめに行いましょう。
しっぽを包帯で保護する
しっぽが毛深い子の場合、毛に汚れがつきにくくするように包帯で尻尾を保護してあげると良いでしょう。しっぽの付け根から先端に向かって包帯を巻き、強く締めすぎないように巻いていきます。
この時に、強く巻きすぎてしまうと、しっぽの血流に障害を起こしてしまうため、注意しましょう。
ケアは犬の顔を見ながら行い、苦痛を感じていたらストップを
今回は寝たきりの犬の床ずれのケア予防方法や、犬の体を清潔に保つ方法についてお伝えしました。犬は、言葉で不快感を伝えることができません。犬が快適に過ごすためには、飼い主様の日々の細やかな観察と気配りが大切です。
体のケアをしている間、注意がその部分のみに向いてしまい、犬の顔を見ていないことが多くなります。犬が苦痛を感じている場合もあるため、ケアの最中は、常に犬の顔を見たり声をかけたりして、犬の状態を確認しながら行うのも大切なポイントです。